2010年12月13日

マクドナルドでビッグマックセットを注文したとき、心理戦で敗北感を味わいました〜「一面呈示」と「両面呈示」とは?

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※この前、マクドナルドでビッグマックを食べた際、iPhone4で撮影したもの


●ビッグマック期間限定値下げ 今月17〜26日まで200円 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/101206/biz1012061622017-n1.htm

日本マクドナルドは6日、定番商品「ビッグマック」を今月17〜26日までの期間限定で、200円で販売すると発表した。ビッグマックの値下げは2007年から毎年行っており、今年は8月に続いて2回目。単品で200円(通常価格290〜320円)、セットメニューは540円(同610〜650円)。同社は今年、チキンを使ったハンバーガーなど「アイコンチキン」を展開しているが、「創業の原点であるビーフハンバーガーのおいしさを改めてアピールする」(担当者)ために企画したという。

この前、とあるデパートの中にあるマクドナルドへ寄りました。
そこのマクドナルドで買うのははじめてでした。

レジの前へ行った際、注文に戸惑いました。
私が行った事のあるマクドナルドと違い、カウンター後ろの上部に、各メニューの値段が記載されたパネルがありませんでした。
幾つかのハンバーガーの名前と写真があるだけのパネルでした。

その為、カウンターに置いてある小さなメニュー表で商品を選ぶ事になったのですが、値段の高いセットものや、単価の高いハンバーガーばかりが大きく目立つように表示されていました。
内心、「100円マックでいいや」と思っていたのに、その100円マックが、そのメニュー表のどこに記載されているのか一瞬で判断が出来ませんでした(実際、私には最後まで分かりませんでした)。
「あれ? 100円マックって廃止されたんだっけ?」そんな風に思っている最中も、店員はオーダーを待っています。
どれを注文したら良いのか判断ができなくなり、ついつい、大きく表示されているビッグマックのセットを頼んでしまいました。
無駄に量が多くて薄いコーヒーと、別に必要も無かったポテトを摂取するハメになりました。
しかもビッグマックは、席に座って随分待たされてから、後で店員が持ってきました。

パネルに細かいメニューや単価を表示しない事で、注文前にじっくりと考えさせる時間を与えない。
そして、カウンターにある小さなメニューの中から、店側が売りたい高価なセットメニューや単価の高いハンバーガーを注文させる為の心理的作戦なのでしょうか?

単価の安い物を広告で宣伝しておきながら、実際のお店ではそれらを注文しにくくさせる。
ましてや、後ろに注文待ちの行列が出来てしまうと、日本人ならば、値段よりも注文指定の早さを優先してしまいますよね。

ファーストフードを食べなくても死ぬわけじゃないし、そこまで美味しさで勝負するものじゃない。
この不景気ですから、一人の客が支払う金額も少なくなっていることでしょう。
いかに一人あたりの客単価をあげるかを考えますと、こういう心理戦も有効なのでしょう。
どうやら私は、マクドナルドとの心理戦に負けてしまったようです。

こういう販売方法を思いついた人は、どや顔(したり顔、得意顔)をしている事でしょう。
己の頭の良さに誇りを持っているはず。
けれどね、こうもインターネット網が発達した今、じょじょにクチコミで悪評が広まってしまいますよ。

クーポンも改悪したし、iPhoneのクーポンアプリも廃止。
そういや最近、マクドナルドの良い評判を聞かなくなりました。

さて、雑誌「にいがたの現在(いま)・未来(あした)」にて、「一面呈示と両面呈示」という言葉についての解説がありました。
ファーストアドバンテージ有限会社・代表取締役の酒井とし夫さんの解説です。
この会社はマーケティングとトレーディングの会社です。


●値上げで売れた会社

今回の解説の冒頭にて、「お客さまは"人"である」と書かれていました。
お客さまに自社商品に関心を持ってもらい、気に入ってもらい、好きになってもらい、購入するという行動に至って頂きたい。
それにはまず、「人」に焦点をあてたセールス、広告、販促、マーケティング活動が必要になります。
酒井さんはこれを「心理マーケティング」と呼んでいます。

新潟のとある会社がチラシを作りました。
「重要なお知らせがあります」というキャッチコピーではじまるチラシは、原材料の高騰によって、10%以上の値上げをせざるを得ないことを正直に告白したものでした。

普通、10%も値上げをしますと、売り上げのマイナス要因になりますよね。
しかし実際には、過去最高の売り上げを示したのです。
結果論かもしれませんが、素直で正直な会社側の想いが、お客様へストレートに伝わったのでしょう。


●一面呈示と両面呈示

心理学の世界には「一面呈示」と「両面呈示」という概念があるそうです。
相手を説得しようと試みるとき、自分にとって都合の良い面だけを強調するのが一面呈示。
良い面だけではなく、自分にとって都合の悪い面までを正直に述べるのは両面呈示になります。

セールス、広告活動で商品の長所、利点だけを呈示するのは一面呈示。
その商品の長所だけではなく、欠点、短所などネガティブな部分も呈示する場合は両面呈示になります。

さて、一面呈示と両面呈示、どちらがお客さまへ良い影響を与えるのでしょうか?

一般的には、相手の元々の態度が説得する方向と同じ場合や、相手の教育水準、商品知識が低い場合は一面呈示の方が効果が高いと言われています。

一方、相手の元々の態度が説得する方向と逆の場合や、教育水準が高く、商品知識への関心が高い場合は、両面呈示の方が効果的と言われています。

日本は教育水準が高いため、良い点だけを述べる一面呈示よりも、長所も短所も正直に両面呈示した方が、お客さまは売り手に対し「この人(会社)は知的で公平で信頼できる」という印象を持つ場合が多くなります。


●正直さが信頼を生む

先ほどの値上げを素直に告白したチラシですが、これは既に自社製品を購入しているお客さまに宛てて作成されたものです。
つまり、その会社の商品に高い関心がある方向けのチラシです。

お客さまの商品の関心の高さと立場で考えてみましょう。
商品の良い点ばかり並べ、値上げしたことには触れずに価格表示だけを掲載する一面呈示は、逆効果で反感を買います。
試行錯誤の末に値上げせざるを得なくなったことを正直に述べる両面呈示の方が、「この会社は誠実で、公平で、私たちの判断や自主性を尊重している」と受け入れられる可能性が高いのです。

同じ両面呈示でも、「長所→短所」の順番、「短所→長所」の順番で相手に示すかでも、受けての印象は変わります。

社会学博士・榊博文さんによると、「プラス→マイナス→プラス」という順序で長所と短所を呈示した場合には、より大きな効果が期待できる可能性があると示唆されています。

先ほどのチラシを例にとると、

・プラス要因である「質の高さやロングセラー商品であること」を説明

・マイナス要因である「値上げ」に言及

・再度「商品の長所を述べる」

この構成が効果的と言えます。
実際、このチラシは、そのような構成になっていました。
作成したのは、この会社のマーケティング本部の方です。

今回のチラシは、お客さまの心理を意図的に操作しようと作成したものではありません。
素直に正直に商品の質の高さと値上げせざるを得なかった経緯を説明したものです。
しかし、一面呈示と両面呈示の概念から見ますと、お客さまに受け入れられ、支持されるのも頷けます。

お客さまの選択の自由を奪い、焦らせて高価なものを買わせようなんていう手段をマクドナルドが意図的にやっているのでしたら、いずれ反感を買うことになると思いますよ。

Posted by kanzaki at 2010年12月13日 23:43