2011年03月23日

何故、フリージャーナリスト・池上 彰(いけがみ あきら)さんの解説は分かりやすいのか?〜記者として学んだこと、ニュースキャスターとして学んだこと【1】

NTTコミュニケーションズが発行する小冊子に、池上彰さんのインタビューが掲載されていました。

●池上彰 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%A0%E4%B8%8A%E5%BD%B0

●プロフィール
池上 彰(いけがみ あきら)
1950年8月9日、長野県生まれ。
慶應義塾大学卒業後、1973年にNHK入局。
報道記者として松江放送局などを経て、東京の社会部で警視庁などを担当。
1994年から11年間「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。
2005年NHK退職後は、フリージャーナリストに。
「誰よりも分かりやすくニュースを解説する名手」として民放でも人気を得る。
今年3月までで全テレビ番組を降板、取材・執筆に専念すると宣言し、話題を呼んだ。

「難しいことを分かりやすく説明する」・・・これが出来る人を私はとても尊敬します。
自分が理解した上で、更に同じぐらい他の人にも理解してもらうには、相当な技術が必要だからです。

私は仕事柄、多くの人に大切な情報を伝えなければいけません。
相手にその情報を理解してもらった上で、行動してもらわなければいけません。
一度も会ったことのない、遠方の方にもです。
時には、海を挟んで異国の地の方にも。

今回の震災で、「分かりやすく伝える事の難しさ」を痛感しました。
時間があれば、それなりに余裕を持って文章を組み立てられるのですが、なにせ今回は全く時間がありませんでした。
刻々と時間は過ぎていきます。
相手に分かりやすく伝えようと考えるのですが、焦るばかりです。
中途半端なものを送ってしまう事で、受け取る側はかえって混乱してしまいました。

「分かりやすく伝える事」を学ぶには、どうしたら良いのだろうと考えました。
真っ先に頭に浮かんだのが池上 彰さんでした。
彼のインタビューをまとめながら、その技術を学びたいと思います。

(NHK入社の理由)

NHKへ入社した理由は、「これからはテレビの時代かな」と考えたからです。
当時、「記者」というのは新聞記者をさした時代です。
池上さんが大学生だった頃には、テレビでもニュースに力を入れるようになってきました。
大学3年の時、NHKが連日のように生中継をした「あさま山荘事件」は、世の中に大きな衝撃を与えました。
テレビが伝える力を感じたのです。

(最初の仕事は"サツ回り")

最初の赴任地は、島根県の松江放送局でした。
最初に与えられた仕事は「サツ回り」でした。
サツ回りとは、警察署を回って情報を集めることです。

新聞記者、テレビの記者、誰もが新人の時にやらされる仕事です。
理由は、記者に欠かせない基本的な取材力が身につくからです。
警察は基本的に口が堅いので、彼らから情報を得る作業を繰り返す事で力になります。
今と違い、各警察署には広報担当はいません。
交通事故のような些細な情報であっても、警察署の中をぐるぐると回らないと分からない時代でした。
最初は、警察官と顔を合わせても、何を聞いたらよいか分からないので、情報をもらう事が出来ません。
あの池上さんですら、新人時代は毎朝、警察署に入る時には緊張したそうです。

(新人時代に学んだ事)

「情報をどういう順番で伝えれば、分かりやすいものになるか」を最初に意識したのは、この新人記者時代でした。

池上さんの情報を得る姿勢は、この時に殆ど学んだそうです。
特に情報収集に関しては、「必ず複数の情報をチェックして、事の真偽を確かめろ」と何度も言われたそうです。
それも立場の違う人達からそれぞれ確認するのが大事なのです。

ニュースの原稿の書き方も、この時代に体で覚えたそうです。
まだ、ワープロもパソコンも無い時代。
手書きの原稿をデスクに見せると、毎回、赤ペンで真っ赤に埋め尽くされるほど訂正を入れられたそうです。

あまりにも怒られてばかりいたので、深夜に放送局へ戻り、デスクが自分の原稿をどう手直しして、どう放送したかを確認していました。
夜10時のラジオニュースをテープに録音して、それを改めて原稿に起こす等の勉強もしていました。

(キャスターへの転身と"伝える力")

1989年から、「ニュースセンター845」という首都圏の番組でキャスターを務めました。
「情報の伝達力」について、より深く考えるようになったそうです。
理由は、アナウンス技術が無い記者が、キャスターとして「どのように原稿を読めば、視聴者に伝わるのか」という厚い壁に四苦八苦していたからです。
それに加えて、そもそも用意されている原稿が分かりにくかったのです。

(どのように工夫したのか?)

池上さんは、記者の書いた原稿を自分の呼吸の長さに合わせ、文章を短く積み重ねるように書き直しました。
「ひとつの文章に、伝えるべきことはひとつだけ」という原則で原稿を作ったのです。
まだアナウンス技術の無かった池上さんが喋っても、聞いている人が意味を理解しやすくする為です。

極力、接続詞を使わないようにすると、原稿全体が論理的な文章構造になり、聞き手の頭の中にすんなり入りやすくなるそうです。

・接続詞 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%A5%E7%B6%9A%E8%A9%9E

池上さんはニュースキャスター時代、文章の分かりやすさのブラッシュアップを行なったのでした。


(続く)

●次回の記事: 何故、フリージャーナリスト・池上 彰(いけがみ あきら)さんの解説は分かりやすいのか?〜メディア・リテラシーが欠如した時代【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002315.html

Posted by kanzaki at 2011年03月23日 22:20