前回の続きです。
●前回の記事: 「池上彰の新聞活用術」を読んだ感想・レビュー【4】〜読者の心を引きつける書き出し。洋数字と和数字の違い
http://kanzaki.sub.jp/archives/002322.html
※
(第五章・想像・推理力を磨こう)
●後期高齢者と自分が名指しされたら
新聞記者の資質として必要なものは何か?
その大切な要素のひとつは、想像力だと池上さんは語っています。
世の中の人は、どんな思いで暮らしているのか。
何に怒っているのか。
そんな気持ちへの想像力です。
例えば、「後期高齢者医療制度」の「後期高齢者」という名称です。
自分がまるで「人生末期」だと宣言されたような気分になった人が多かったようです。
今はこの名称の批判を受けて「長寿医療制度」と呼び名を変えたものの、定着していません。
この制度がスタートするに際して、新聞で詳しく解説されました。
しかしどの新聞を見ても、記事の中で「後期高齢者」という名称に対する問題意識や嫌悪感が見られませんでした。
自分が名指しされたらどう思うか。
担当記者には、そんな想像力が欲しかったと池上さんは語ります。
そういえば、ちょっと似たようなものに「高齢運転者標識」があります。
・高齢運転者標識 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E9%BD%A2%E9%81%8B%E8%BB%A2%E8%80%85%E6%A8%99%E8%AD%98
70歳以上のドライバーが自動車に付けるマークです。
以前は、橙色と黄色の2色に塗り分けられた葉っぱのデザインでしたが、「枯れ葉マーク」なんて言われて批判を受けていましたよね。
今年の2月から、四葉のクローバーをモチーフにしたものに変更されました。
それにしても、葉っぱに拘る理由は何なのでしょうかねえ・・・。
初期のマークをデザインした人も、それを採用した人も、自分が「枯れ葉マーク」なんて言われちゃうようなものをクルマに貼って運転する気持ちを考えたりしなかったのでしょうか。
そして、それが実施された際、何故メディアは突っ込みを入れなかったのでしょうかね。
物事のルールを作る時は、相手の気持ちを考える必要があるのではないかと思いました。
一人ひとりの庶民の声は小さいけれど、それを汲みとって拡声してくれるのがメディアなんだとも思います。
※
●読者に対する想像力を
神崎が思うに、新聞記事を書いている人は「情報のプロ」です。
プロですから、専門知識を沢山持っている。
書く文章というものも、ついつい専門用語を多用した難しい表現になってしまいがちです。
以前に書きましたとおり、専門用語をあえて使う事もあります。
しかし、それは例外。
その記事を誰が読むのか?
読者は専門家ではありません。
難しい用語が出てきたら、それを分かりやすく書く必要がありますよね。
池上さんが例として、海外ニュースをあげていました。
海外のニュースでは、馴染みのないような言葉や制度が登場します。
連日のように同じニュースを取り上げている場合、つい説明を省いてしまいがちです。
読者が毎日、同じ新聞を読んでいるとは限りません。
そんな時、一言説明を添えるだけで、相手にとっての「分かりやすさ」は格段にアップします。
我々一般の仕事にも言えることです。
他社へ自分の会社の商品やサービスをプレゼンする時。
社内で他部署と行う会議用資料を作成する時。
自分は専門家だから知っていて当然でも、相手にとっては当然ではない事が多いものです。
どんなレベルの人に向けて説明するのか。
対象が誰かをきちんと設定しないと、解説は意味を成さないと、池上さんも語っています。
相手に分かりやすく説明しようと努力することが表現力を磨き、ひいては自分自身の成長につながるのです。
※
●わずか数行で大違い
新聞に書かれている記事で、ドキッとすることはありませんか?
例えば、海外で販売されている商品の中に、健康に害のあるものが発見されたとか。
読者の立場になった場合、読者が知りたいのは、「その商品は、日本に輸入されていないのか?」という事です。
案外、そういった事が書かれていなかったりする事が多いのです。
(まだその時点で、日本に輸入されているかどうかの裏づけ取材が出来ていない場合もあります)
たった数行でも、「日本国内への輸入の事実はない事を確認している」と書かれているか、そうでないかで、読者の気持ちは大違いです。
新聞社の皆さんは、「読者が心配するだろう」という想像力を持って欲しいと、池上さんは語っています。
読み手にとって知りたい事は何か。
不安な点は? 問題だと感じている点は?
自問自答しながら自分の書いたものを読み返すと、分かりやすい文章が書けるそうです。
自分で書いた文章や資料、講演、プレゼン、営業トーク、全てに言えることですね。
※
この章は、新聞を通して、文章の書き方を教えてもらった内容でした。
文章を書いている時って、ついつい、読んでいただく人は誰なのか忘れがちです。
事実は一つですが、それを表現する方法は、対象となる読者が誰かで変わってきます。
池上さんの解説を読みながら、自分にあてはめて考えていました。
そうやって意識することも、文章力向上につながりますよね。
(続く)
●次回の記事: 「池上彰の新聞活用術」を読んだ感想・レビュー【6】〜誰もがカメラマンの時代
http://kanzaki.sub.jp/archives/002324.html
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