2011年05月09日

日本のNPOにファンドレイジングを取り入れる活動をしている佐藤大吾(さとう・だいご)さん〜NPO法人チャリティ・プラットフォーム代表理事/一般財団法人ジャスト・ギビング・ジャパン業務執行理事

kajyuen01.JPG
※The evening of the orchard
(三条市から新潟市へ戻る途中で見つけた果樹園です)

投資&IRマガジン「ジャパニーズインベスター」に、「寄付」というものについてのインタビューが掲載されていました。
お話しをされたのは、佐藤大吾(さとう・だいご)さん。
NPO法人チャリティ・プラットフォーム代表理事/一般財団法人ジャスト・ギビング・ジャパン業務執行理事です。

・NPO法人 チャリティ・プラットフォーム
http://www.charity-platform.com/

・一般財団法人 JustGiving Japan (ジャスト・ギビング・ジャパン)
http://justgiving.jp/

彼のお話しをまとめてみます。

●いいことするのがNPO? じゃあ株式会社は悪いことをする団体なの?

佐藤氏---
以前は「NPO」なんだから無償でやるべきだと言われることもありました。
NPOはいいことする団体だろう、みたいな。
じゃあ株式会社は悪いことする団体なのか、って。
そんなの変ですよね。
「社会全体が解決することを目的にしているのがNPO」で、「株主利益の最大化を目的にしているのが株式会社」。
存続のためにファンを増やしたり、売り上げが無いとつぶれる点は同じ。
NPOが単独で問題解決をするのではなく、NPOが核となって世の中の人の意識と行動を変えることが重要なんです。
NPOである以上、多くの市民を巻き込むことが義務と言ってもいい。
だから、寄付をしてくださいというのは、問題解決に参加してください、というメッセージでもあります。

●NPOの世界にもディスクロージャーが必要

多くのNPOは現場活動に忙殺され、支援者の開拓やケアをする余力がない。
一方、寄付をしたいが信頼できる団体がわからない、という人がいる。
支援が必要とするNPOと、支援したい企業や個人を取り持つ仕組みを作れないだろうか・・・。

佐藤さんは株式市場における「四季報」のような信頼性の高いNPOのデータベースが必要だと考え、国内約4万のNPOの中から6000の団体と面談をしました。
財務や活動報告の公開などの基準を満たす約180団体をサイト上で紹介する「チャリナビ」の運営を始めました。

NPOが寄付者に活動を報告することは、株式会社が株主に対してIR活動(企業が投資家などに対して必要な情報を自発的に開示すること)をするのと同じです。
上場企業が資金調達をする際、経営計画を発表し、ディスクロージャー(会社の経営状況を外部へ公開すること)します。
寄付者の信頼を獲得するため、NPOにもこうした考えや取り組みが必要だと、佐藤さんは考えました。

●「寄付してください」から「寄付を集めてください」へ

アメリカやイギリスは寄付大国と言われています。
アメリカの寄付市場は約20兆円で、94%が個人寄付。
イギリスの寄付市場は1.5兆円で、94%が個人寄付。
日本の寄付市場は7千億円で、30%が個人寄付。
英米と日本の大きな違いは、個人寄付なのです。

佐藤さんに言わせると、宗教的背景とか、文化の違いではないとの事。
困っている人がいたら「助けたい」と思う気持ちは万国共通だからです。
日本には寄付文化がないんじゃなくて、寄付のインフラが足りないだけと思うそうです。
寄付のインフラとは、募金箱の数や寄付税制、クレジットカードによる簡易決済など、寄付行動を支える全てを指します。

イギリスには「ジャスト・ギビング」というファンドレイジング・サイトがあります。
2001年のサービス開始以来、1200万人が利用し、980億円の寄付を集めています。

ファンドレイジングとは、NPOの活動を積極的に支援し、自分だけではなく家族や友人に支援を呼びかけ、NPOの資金調達に協力すること。

●ファンドレイジング - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%82%B0

佐藤さんはこの仕組みを日本にも広めようと、2010年3月に「ジャスト・ギビング・ジャパン」をスタートさせました。

個人に対して「寄付をしてください」ではなく、「寄付を集めてください」というこのサービス。
日本の人口とGDPはイギリスの2倍。
つまり、イギリスの寄付市場が1.5兆円なら、日本も3兆円くらいあってもおかしくない。
寄付文化は日本にも根付いています。
あとはやり方なのです。

以上

※※※

日本は「個人寄付」という概念が、正直あまりないですよね。
今回の震災のような有事の時以外、寄付をするという事を日常の中で持ち合わせていません。
気持ちはあっても、そういう習慣がまだ無いのかも。

その一方で、ボランティア活動・社会貢献をしている人達がいます。
その日々の地道な活動により、様々な人達が助かっているのです。
しかし、そういった活動をされている方々は、その運営資金の調達手段に関して、一般企業のような敏腕をふるう事はありません。

それは「ボランティアの世界に、お金の事は禁句」と言う考えがあるからではないでしょうか。
しかし、運営資金が無ければ、その活動の目的を達成することは出来ません。

佐藤さんはインタビューの中で、「NPOは受益負担の原則が通用しない分野」と言っています。
例えば、ホームレスの炊き出しを支援する場合、炊き出しの受け手であるホームレスの方からお金を取れませんよね?
そうなると、サービスの受け手でない人からもお金をいただくことになります。

株式会社は資金調達の為、様々なところと交渉します。
そして、その後の成果を報告しています。

多くのボランティア団体、NPOには、株式会社のような資金調達のノウハウはありません。
そして、その後の成果の報告も曖昧です。

寄付したい人達は沢山います。
今回の大震災で、そういう心が誰にでもあることが分かりました。
でもね、正直な話し、寄付をしたのは良いけれど、本当に自分が願ったとおりに使われているのかを知ることが出来ません。
それならば、もっとピンポイントで、明確な目的のところへ寄付をしたいと思うもの。
でも、なかなかそういうところを見つけることが出来ません。

株式市場があるように、寄付にも市場みたいなものがあっていい。
寄付を必要とする人、寄付をしたい人をマッチングさせる市場。
そうすれば、自分が寄付(株式市場でいうところの投資)する意義が明確になります。

更にステップアップして、単に自分だけが寄付をするだけではなく、他の人にも呼びかける。
NPOの活動そのものは、自分の手では出来なくても、資金面からバックアップすることで手を貸すことだって出来るのです。

これが浸透していけば、日本の個人寄付率は飛躍的に高くなるし、社会貢献というものが確固たる地位を築くのではないでしょうか。

Posted by kanzaki at 2011年05月09日 22:26