2011年05月15日

分かりやすい説明をするための構成方法【1】〜池上彰さん著書「わかりやすく<伝える>技術

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※midnight factory(神崎は工場萌えです)

相手に分かりやすい説明をするのは、とても難しいものです。
ましてや1時間〜2時間の講演・講義ならば、尚更のことです。

池上彰さんが書かれた著書「わかりやすく<伝える>技術」に、そのヒントとなる事が書かれていましたのでご紹介したいと思います。

今回と次回の二部構成。
・今回は「話しの頭にリードをつけよう」
・次回は「記事は逆三角形に書け」

●話しには「リード」をつけよう

「リード」とは、「これはこういうニュースですよ」という短い前文のこと。放送業界用語。

・放送局のニュースは、それぞれの項目の冒頭に、短い文章の紹介(リード)があります。
「今からこういう話しをしますよ」と最初にリードを言っておくと、聞く側も心の準備が出来ます。

例)「きょう未明、東京千代田区で火事があり、住宅が全焼して二人が遺体で発見されました」。その後、細かく説明。

・あらかじめ「今からこういう話しをしますよ」と聞き手にリードを伝えることを、池上彰さんは「話しの地図を渡す」と呼んでいます。
「今日はここから出発して、ここまで行く」という地図を渡し、「そのルートを今から説明します」という形をとることで、分かりやすい説明になります。

・これは色々なケースに応用できます。
例えば講演の際に冒頭で、「これから○○分間、何々についてお話しします。私が言いたいのはこういう事です」と言っておく。
それから「そもそも・・・・・・」と続けてみてはどうでしょうか。
聞き手は皆、「結論はそこに行くんだな」と目的地が分かっていますから、途中のルートについても一生懸命聞く気になります。
それが無いまま話しが始まってしまうと、迷路に連れ込まれるような気がします。

・「地図」を聞き手に渡すということは、「話しの先」が見えることです。とても大事なことなのです。

●リードに5W1Hは必要ない

・話しをする時、「5W1H」を網羅しなさいと教わりませんでしたか?
「5W1H」とは、話しの要素を示す言葉です。
When(いつ)、Who(誰が)、Where(どこで)、What(何を)、Why(どうして)、How(どのように)。

リードにて、5W1Hを全てを伝える必要はありません。大雑把な表現で良いのです。

例)
5W1Hで表現:
「きょう午後2時ごろ、東京都千代田区神田神保町の古書店街で、本を選んでいた男性が、何者かに刃物で刺され、死亡しました。警視庁は、殺人事件と見て、捜査本部を設置し、本格的な捜査を始めました」

リードで表現:
「きょう午後、東京都内で殺人事件がありました」

発生時間や場所、具体的な内容は、その後の本文に入ってからでよいのです。

・ニュースに限った話しではありません。
例えば、プレゼンテーションでも同じこと。
「今日は、これについて報告・提案します」と言うのがリードです。
これは参加者に対して、「ねえねえ、今から大事な話しをするから聞いて」と呼びかけることなのです。

●「予定所要時間」を伝えることにはこんな効果が

・「何分間お話しします」と予定時間を告げる事は、聞き手に対して心理的効果があります。
事前に予定表が配られていない場合、最初に「この話しは何分までです」と触れるだけで、落ち着いて聞けるようになるのです。

・質疑応答の時間を設けていることは、最初に言ったほうが良いです。
「これから1時間半講義をします。1時間10分話しをした後、20分間、質疑応答の時間を取ります」とあらかじめ時間配分を説明しておく。
すると、聞く方は心の準備が出来ます。
ここは分かりにくいとか、こんなことを聞きたいとか考えながら聞くことが出来るので、質問が出やすくなります。
これも、話しの聞き手に「地図を渡す」ことにあたります。

●リードを書こうとすることで、内容がまとまる

・相手に渡す「地図」を描くには、全体像が頭に入っていなければなりせん。内容がまとまってこそ、地図が渡せるのです。

・実際に現地へ取材をしても、リードが書けないことがあります。
「ねえねえ、今日こんな事件があったんだ」と、一言で言えるように全体像が把握できていないからです。
現場で取材をする時、「この事件は、要するにどういうことなんだろう。どんなリードになるのかな」と、内容を一言にまとめようと考えながら取材すれば、全体像が見えます。
そういう意識を持たないで現場へ行っても、散漫な取材になってしまい、記事をまとめるときに、どうしたら良いか分からなくなります。

・仕事で上司に報告する時、あるいは、企画のプレゼンテーションをする時も同じことです。
報告内容を一言でまとめるリードを書こうとするこで、報告内容もポイントが絞られてきます。


【今日はここまで。次回へ続く】


※※※


私の会社では朝礼があります。
朝礼当番は交代制。
ローテーションで、必ず全員が行います。
みんなの前へ出て、3分〜5分程度のフリートークをします。

フリートークをしている間、聞いている方も立っています。
朝一番に、立って人の話しを聞くのは辛いものです。

人によって、フリートークの仕方は様々です。
中には延々とだらだら喋るだけ喋って、結局、何が言いたかったのか分からない人もいます。
年配の人に多く見られる傾向です。

冒頭に「今回のお話しはこういう事だよ。テーマや結論はこんな感じだよ」と、リードを付け加えるだけで、聞く方の印象も変わるものです。
フリートークをする方も、リードを考える事で、話しの構成を意識します。
それによって、散漫な印象にならないトークが出来るはずです。

役員等へ提出する起案書・報告書も、書き方はまちまちです。
だらだらと言葉を並べて、何が言いたいのか分からないものがあります。

「現在使用している複写機が古くて故障頻度が高い。新しい複写機を買って欲しい。メーカー・型式はこれで、金額はこれ。購入先はここ」と端的に書けば良いのです。

短く要点を絞って書けないのは、そういう書き方を教わってこなかったから。
入社したら、本来はそういう事を研修で学ぶべきなのですが、そういう事を教えない会社が多いのも事実。

幸い、世の中にノウハウを教えてくれる本が沢山あるのですから、自分で学ぶことが出来ます。
そういう事を知ることで必ず、社内で評価されますよ。

●次回の記事: 分かりやすい説明をするための構成方法【2】〜池上彰さん著書「わかりやすく<伝える>技術
http://kanzaki.sub.jp/archives/002355.html

Posted by kanzaki at 2011年05月15日 20:17