アップル創業者 スティーブ・ジョブズ。
彼が残した言葉には、仏教の教えが色濃く漂います(雑誌「PRESIDENT」より)。
Stay hungry,Stay foolish(ハングリーであれ、愚か者であれ)
彼がこの言葉を発したのは、スタンフォード大学での講演でのことでした。
これは曹洞宗の祖・洞山良价(とうざん・りょうかい)が説いた
「愚の如く、魯の如く、よく相続するを主中の主と名づく」
を訳したものだといわれています。
「よく相続するを主中の主と名づく」は、コツコツと一つのことを続ける人が最も強いという意味です。
●スティーブ・ジョブス 伝説のスピーチ 1/2 - YouTube
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【禅との出会い】
ジョブズが禅と出会ったのは1970年代。
彼は生まれてすぐに養子に出されましたが、裕福な家でなかったので、大学を中退しました。
1973年に友人とインドを旅して、聖者・ニーム・カロリ・ババに出会い、人生が一変しました。
カリフォルニアへ戻った後、彼は頭を丸め、インドの伝統装束に身を包んで仏教徒へ変身し、禅センターに通っていました。
そこで彼は、禅僧、乙川(本名・知野)弘文老師と出会いました。
知野老師とジョブズとの関係は、師と信者でありながら、友人同士でもありました。
1985年、ジョブズはアップルを追われ、失意に陥ります。
その時、精神的支えとなったのが、知野老師でした。
1986年、ジョブズが前年に設立したネクスト・コンピュータの宗教顧問に任命されています。
また、1991年には、知野老師の下で、ローレンさんと結婚式を挙げています。
ジョブズが知野老師に深い信頼を寄せていたのは、改革者としての魂を共有していたからかもしれません。
「スティーブ・ジョブズの再臨」を書いたアラン・デウッチマン曰く、「知野老師は、禅のスティーブ・ジョブズ」との事。
僧侶としての厳格な修行や重い責任に反旗を翻した背教者なのです。
コロンビア大学のロバート・サーマン仏教学教授曰く、
「彼が生み出した製品には、仏教の精神が漂っている。その天才的な能力のおかげで、世界中にコンピュータが普及し、何十億人という人々の頭脳が、ニューロン単位でつながった。
"宝石をちりばめたインドラ綱"の創造といえる」。
「インドラ」とは、インド最古の聖典「ベーダ」の主神。
「宝石をちりばめたインドラ綱」とは、一つ一つの宝石の輝きは他の宝玉に映し出され、また全体の輝きは各宝玉に反映されるという意味。
つまり、世の中のものは全て繋がり、成り立っているという、仏教の根幹概念です。
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【iPhoneと禅】
ジョブズ曰く、アップルの基本理念は「フォーカスとシンプルさ」。
また、「シンプルであることは、複雑であることより難しい」と語っています。
これも禅の教えそのものです。
ジョブズはミニマリストです。
ミニマリストとは、装飾を取り払い、形や色を最小限度までに突き詰めた自己表現者・芸術家の事です。
世界を変えたといわれるiPhone、iPadの機能やデザインも、禅の理念を髣髴させます。
ジョブズが癌宣告されてから、数々のヒット作を飛ばした理由はこうです(前出サーマン教授)。
「仏教では、死を背負って生きていくことが最強とされている。
短い人生、生あるうちに精進し、人の利益になるよう働けば、それが自分にも返ってくる。
道元禅師が説いた"利行は一法なり"だ」
「利行(りぎょう)」とは、誰かのためになる行いの事。
他の人を利する行い(他の人のためになる行い)は、自らの心も清らかにしてくれます。
人の為にしてあげるのは、自分の為でもあるということなのです。
知野老師は「禅の修業の真の目的は、自分の中にある知恵を見出すこと」と説きました。
亡き師匠の教えどおり、ジョブズは死と直面したことで、真実は日常の中にあるという善道にのっとり、誰もが生活の一部として簡単に仕える製品の開発に全力を注いだのかもしれません。
それが、iPhoneなどへ繋がったのかも。
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シリコンバレーなど西海岸を中心としたIT業界には、「ZEN(禅)」の文化が浸透しています。
社員のメンタルヘルスに、禅室を設けている会社も多いのです。
インストラクターを呼び、禅を基にした瞑想法を指導する会社もあります。
禅室を設けたホテルやマンションも多く、禅文化はアメリカに広がっています。
ジョブズだけではなく、今後も禅に心を見出した人達が、世界中の人に愛される商品・サービスを生み出すかもしれませんね。
そうしますと、日本だってその土壌があるのですから、再び世界に通用するものを生み出せると期待しています。
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