2014年05月10日

鳴かぬなら鳥屋へやれよホトトギス〜「うがったことをいう人」とは「物事の要所をずばり言い当てる人」という意味


ここ最近、買い物などでレジ待ちをしている際、割り込みをされることが多いです。
お店の人も、そのままその人の会計作業をして、知らぬ存ぜぬです。


そういう時、カチンときて、しばらく不愉快になってしまいます。
どっちかというと、そのお客より、きちんと対応できないお店の方に悲しい思いをします。
2対1で劣勢になった感じもしますし。


そして、こんな事で怒りの感情が湧き出る自分に、一番腹が立ちます。


どこの県でも見られる光景なのでしょうかね。


※※※


【川柳は、うがちとユーモア】


嫌な思いをしたり、仕事が忙しいと、ユーモアが自分の中から生まれません。
その為、笑顔が消えていきます。


川柳研究科・荒木 清さんによりますと、川柳の根底は「うがちとユーモア」だそうです。


辞書では、「川柳とは、機知によって人情の機微(きび)をうがち、風刺、滑稽(こっけい)を主とする文芸」とあります。


よく、「うがったことをいう人」といいます。
なんとなく、疑ってかかるような見方という、悪いイメージに感じてしまいます。
けれど、それは誤った用法です。


「うがち」は「穿ち」と漢字で書きます。
「うがったことをいう人」とは、「物事の要所をずばり言い当てる人」という意味です。


辞書によると、「穿ち」の意味は、「穴を開けること」とあります。
他には、
・表に現れない事実・世態・人情の機微を巧みにとらえること。
・黄表紙・洒落本などにみられる、江戸文学の理念を示す語。人情の機微や特殊な事実を指摘し、特に遊里生活の手引き・案内とするもの。
とあります。


この「うがち」は、「おかしさ」や「言葉あそび」を伴います。
川柳が滑稽の文学といわれるゆえんです。



【うがった例】

hototogisu01.jpg


「うがった」答えの例を書きますね。


●織田信長
「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」

(才能のないやつは用なし)


●豊臣秀吉
「鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス」

(不可能でも可能にしてみせる)


●徳川家康
「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」

(我慢強く機会をうかがって待つ)


これに対して江戸庶民は、こう言ったそうです。


●江戸庶民
「鳴かぬなら鳥屋へやれよホトトギス」

(鳴かないなら鳥屋へ売ってしまえ)

その後に続けて、

「鳴かぬなら貰っておけよホトトギス」
(どうせ売るなら俺にくれ)


冷静な判断で、ついでに拝金主義って感じです。
けれど、シニカルなお笑いのセンスもあります。


俳句は、自然、時候、天文、行事などを対象にした季語を大切にしますが、川柳はあくまでも「人間」に関わるのが違いです。
川柳は、人情、風俗、歴史上の人物、言葉を対象にします。
その本意の裏側をうがち、風刺の対象として詠みます。
今なら、新聞の一コマ風刺マンガでしょうかね。


風刺や滑稽のユーモア精神が無ければ、川柳とはいえないのです。



とっさの頭の回転で、要所をつくだけではなく、そこにユーモアを乗せるのは、頭の早い回転と、広い教養が必要なのですね。


レジで割り込みをされた時、うがちとユーモアを込めて言えるぐらいの余裕がないといけないのかなあ・・・そんな大人になりたい今日このごろです。


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(テンションが低い時に見ると、何故か涙が出てくる昭和生まれ)

Posted by kanzaki at 2014年05月10日 19:54