【デジタル修復とは?】
この前、カンヌ映画祭をやっていましたよね。
日本からは、「海街diary」などの作品が上映されました。
それらに出演した俳優も映画祭にあらわれ、華やかでした。
この映画祭は、新作だけのイベントではありません。
「カンヌ・クラシック」部門があります。
この部門には日本から、3作品が招待されています。
・「残菊物語(1939年)」溝口健二監督
・「仁義なき戦い(1973年)深作欣二監督
・「乱(1985年)」黒澤明監督
これらは、昔のフィルムで上映されたのではなく、劣化したフィルム作品をデジタル修復し、鮮明にしたものです。
最近では、昔の作品をデジタル修復するのが世界なトレンドになっています。
●映像のデジタル修復|三浦 和己|テクニカルノート|IMAGICA
https://www.imagica.com/column/cat10/post-11.php
20世紀に作られた映画作品は、ほぼフィルムで撮影、上映されました。
フィルムは低温低湿で大事に保管しないと、劣化してしまいます。
仮にフィルムの状態が良くても、再生する業務用機器が減っています。
過去の映像メディアを次世代へ引き継ぐには、映像を修復し、デジタル化することが急務です。
映画作品のフィルムは劣化すると、退色・傷つき・揺れ・ゆがみが発生します。
フィルムに詰まった情報を最大限引き出すため、それらのエラーを取り除く必要があります。
写真1枚ならば、それも造作無いことですが、これが1秒間に何コマも再生される動画となると、膨大な作業になるのです。
松竹は昨年まで3年間、小津安二郎、木下恵介、大島渚といった監督たちの作品をデジタル修復し、「カンヌ・クラシック」部門での上映につなげてきました。
●日本映画界が世界に誇る小津作品を未来に残す。(松竹株式会社) - READYFOR (レディーフォー)
https://readyfor.jp/projects/ozu_remastering
「残菊物語」の上映の際、松竹の迫本社長は、採算はひとまず考えず、名作映画の修復、保存に力を入れたいと語っています。
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【名作は未来でも名作か?】
昔の名作が、鮮明になって蘇ることはすばらしいことだと思います。
名作が名作と呼ばれたのは、その当時のお客さま、評論家などから「名作だ!」と評価されたからです。
それを現代の私たちが観て、「名作だ!」と感じることができるかは、正直難しいときもあります。
もちろん、人の感情、心の機微などは普遍な部分がありますから、そういうところは理解できます。
しかし、登場人物の考えや行動を全て理解できるかといえばそうでもない。
それは、作品が作られた時代背景を観る側が理解しているかどうかで変わってきてしまうからです。
林修先生がテレビ番組にて、こんな解説をしていました。
「文学を読むとき、その時代や国の経済を知らないと深く理解できないし、下手すると間違った解釈をしてしまうこともある」
「読んで、わかんないからつまんないよじゃなくて、名を残した文豪が無意味なことを書くわけがないと思って、状況を理解しようとする。
漱石の残した文学がわからないなんてもったいない。
その時代にこちらから近づいていこうと思えばいい」
例えば小説「坊ちゃん」に、「三円」「二十五円」とかいう金額が出てくるけれど、それが現代でいえば、どれぐらいの価値なのか分かりますか?
作中の時代(明治39年)は、1円=約5千円です。
当時の銀行員の初任給が、35円の時代です。
これを知らないで読むと、書かれている事の受け止め方が、だいぶ違ってしまいます。
21世紀も、たくさんの作品が生まれています。
それらのうちどの作品が、22世紀の「カンヌ・クラシック」部門で上映され、どう評価されるのか興味があります。
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