2021年09月18日

心が腐らないようにする防腐剤があったらいいのにね

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●『特殊清掃 死体と向き合った男の20年の記録』(特掃隊長 著)より


「狎犬ているうちから腐る瓩……」


男性が言ったその一言に、私は衝撃を覚えた。
そして、男性の言った意味とは違うことが頭を巡った。


人間もある種の生モノ。
身体はもちろん、精神も腐りやすい。
思い通りにならなかったり、ちょっとイヤなことがあったりしただけですぐ腐る。


なにか、いい防腐剤があればいいのだけれど、そんなものはなかなか見つからない。
唯一、その類のものがあるとすれば、命の限りを知ることかもしれない。


死に向かって、確実に過ぎていくいまを、腐って生きるのか新鮮に生きるのか……。
普通に考えれば、腐って生きるなんて、そんなもったいないことはできるはずもない。
……しかし、実際は腐って生きてしまう。


腐りそうになったら、「今日一日で自分の人生は終わり」と仮定してみるといいかもしれない。
犧F一日瓩短かすぎるなら、一週間、一ヶ月、一年だっていい。


個人差はあるだろうが、この猖鰭綺洵瓩老觜集く。
これが単なる牴渉雖瓩能わるものではないことは、誰もが承知させられていることであり、誰もが定められていることだから。


私の場合、ツラい朝は決まってこう考える。
「余計なことは考えない……」
「とりあえず、今日一日を生きよう」
「とりあえず、今日一日に集中しよう」
「とりあえず、今日一日、できることだけをがんばろう」
腐りやすい肉体と精神を抱えながら、どこまで腐らずに生きていけるか。
その格闘の成果は、人間味となって表れる。


その美味を味わうべく……、
さぁ! 今日も一日、心に防腐剤を注入して生くぞ!


※※※


特殊清掃とは、孤独死や事件・事故の現場、ゴミ屋敷など特殊な事情を抱えた部屋を掃除することです。
常に「死」というものを身近なところで接している人の文章は、文筆家では到底追いつけない深さがありますね。


職場でのパワハラやいじめが普通にある環境なので、心が腐りそうになります。
こういうのは、法整備をいくらしたところで根絶は無理でしょう。


幸い、腐りきらないでいられるのは、イタリア人の格言である「どん底に落ちたら、掘れ」の精神だからです。

Posted by kanzaki at 2021年09月18日 07:16