どうして、紙とペンで考えると思考が増強されるのか
●『思考の教室』(戸田山 和久 著)より
私たちは、生きるためにどういう問題を考えているのか。すごく大雑把に分けると、次のどちらかだ。
(1)これをやるとどうなるか
(2)これを実現するにはどうすればよいか
(1)が順問題、(2)が逆問題と呼ばれる。
順問題は、原因がわかっていて、結果がどうなるかを求めている。
逆問題はまさしく逆で、目的(制約)が与えられていて、それを実現する手段を求めている。
新型コロナウイルスをやっつけるという目的が与えられて、実現手段(ワクチンや治療薬の開発方法)を探すのも逆問題だ。
そして、制約を解決するためのプランという意味で、私の「買い物リスト」づくりもまた逆問題だ。
概して、順問題より逆問題のほうが難しい。
工学は、逆問題を解くためのいろんなアルゴリズム(手順・方法)、人工知能を開発しようとしている。
でも、紙とペンの助けを借りれば、この難しい逆問題を私たちもなんとか解くことができる。
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紙とペンで考えるとどうして思考が増強されるのだろう。
それはね、紙が上下左右に広がっているから。
つまり、紙が2次元だからだ。
前章で、言葉が思考の担い手であることを強調した。
でも、残念ながら私たちの言葉は一列に並んでいる。
もともとは話し言葉だったからだ。
私たちは、いっぺんに一つの音しか出せない。
だから音を一列に連ねて語をつくり、語を一列に連ねて文をつくるしかない。
本は紙に印刷されている。
だから、横にも縦にも字が並んでいるように思うけど、読む方向は縦横のどっちかに決まっている。
だからこそ、「縦書き」とか「横書き」という言葉があるんだ。
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ここで、さっき示した私の買い物リストを見てみよう。
ここにも言葉が並んでいるんだが、横にも縦にも並んでいる。
そして、私が考えるにつれて、言葉が横に並んでいったり、縦に並んでいったりしている。
つまり、紙が横と縦の2次元をもっていることをうまく使って、一つのことを最後まで考えてから、次のことを考えるのではなく、一つのことを途中まで考えたところで、別の考えるべきことに気づき、それを途中まで考えておいて、前の考えに戻ってそれを修正して、また途中まで考えて……といったことをやっているんだ。
つまり、もともと直列処理に向いている言葉を使って、並列的にものごとを考えている。 そして最後に、買わないといけないものを売り場ごとにぐるっと囲ってまとめ直している。
考えの結果を別の視点から分類し直しているんだね。
これも言葉が2次元的に並んでいるからこそやりやすい。
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言葉の直列性から逃れるために使うのだから、無地か方眼がいいね。
そして、ケチケチしない。
たっぷり余白をとって使う。
そこはこれから考えて埋めていくべきことがある、ってキミに教えてくれるんだから。
ときどきノートを読み返してみよう。
そうすると、余白を埋める考えを思いつくかもしれない。
その間に勉強して新しく知ったことがらが、余白を埋めるのに役立つかもしれない。
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「手書きの効用」というものが認知されていますよね。
デジタルタブレットの代表格「iPad」は最初、その一枚板に指で触れて操作するだけでした。
やがてキーボードが取り付けられるようになり、今ではペンシルで手書き入力がトレンドです。
デジタルになって、いろんな手間が不要な方向に進むはずだったのに、なぜかアナログな方法に戻っているのが面白いです。
手書きのノートとペンならばコスパがいいです。
iPadのようなタブレットに手書き入力するメリットは、ノートのサイズの制限が無いことでしょうか。
アプリによっては、上下左右が無限に広がる1ページの中で、なんでも書き込むことができます。
ページという概念が無いですね。
アナログ・デジタル、どちらでもいい。
頭の中だけでグルグル考えるより、どんどんアウトプットしてみましょう。
Posted by kanzaki at 2021年12月09日 07:04