2022年05月08日

映画『死刑にいたる病』の感想〜ミステリーというより和製ホラーの王道

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●映画『死刑にいたる病』オフィシャルサイト
https://siy-movie.com/


主演:阿部サダヲ/岡田健史
監督:白石和彌

【あらすじ】

「凶悪」「孤狼の血」の白石和彌監督が、櫛木理宇の小説「死刑にいたる病」を映画化したサイコサスペンス。
鬱屈した日々を送る大学生・雅也のもとに、世間を震撼させた連続殺人事件の犯人・榛村から1通の手紙が届く。
24件の殺人容疑で逮捕され死刑判決を受けた榛村は、犯行当時、雅也の地元でパン屋を営んでおり、中学生だった雅也もよく店を訪れていた。
手紙の中で、榛村は自身の罪を認めたものの、最後の事件は冤罪だと訴え、犯人が他にいることを証明してほしいと雅也に依頼する。
独自に事件を調べ始めた雅也は、想像を超えるほどに残酷な真相にたどり着く。



※※※


【コメント】


真犯人を見つけるミステリーというより、犯人が仕掛けた「死刑にいたる病」に感染していくホラー映画でした。
ラストなんて特に、和製ホラーの王道です。


無実の殺人犯から依頼された平凡な大学生が、真犯人を見つけるみたいな王道ミステリーを期待しているなら、そのフィルターは外した方が良いです。
痛快なトリック暴きとか、予想外の犯人とかありませんから。
誰一人共感できる人物はいませんし、誰一人救われていません。


阿部サダヲさんが演じるサイコパスな犯人が、相手を洗脳し支配していきます。
劇中の殆どの人が、この犯人の手のひらで動かされていきます。
タイトル中の「病」とは、この犯人の支配下に置かれて行動してしまう事です。


たとえ拘置所にいて身動きできなくとも、相手を支配していく様は凄いです。
優しさと、たまにスパイスで恐怖心で洗脳していくのです。


阿部サダヲさんと岡田健史さんは、拘置所の接見室のみでやりとりがされます。
2人の間にはアクリル板があり、直接触れることは出来ません。


岡田健史さんが話す最中、阿部サダヲさんの顔がアクリル板越しに映りこみます。
並んで映っている姿がやがて、ひとつに重なり合う・・・。
まるで、阿部サダヲさんが岡田健史さんの精神を支配していくかのような演出。


他にも、現実世界と精神世界が混ざったこの空間の映像演出がいいですねえ。
限られた場所だけで展開していくのって好きなので、一層の事、この拘置所の接見室だけで物語が進むお話しでも良いぐらいに凝っていました。


支配下に置かれた岡田健史さんの目や表情、行動が、阿部サダヲさん演じる犯人と重なっていくのがうまかったですよ。
(その行動に一切の共感はありませんが・・・)


登場人物全員、「どうしてこういう考え・行動をしたのか」という部分が見えにくいです。
観終わったあとも、その辺がぼやけていて思い出せません。
共感できる登場人物が誰一人いないのは、そういう部分のせいかもしれません。


せめて岡田健史さん演じるもう一人の主人公ぐらいは、観客と同じ目線・考えを持っていてくれれば良かったのですがね。
そうすれば、阿部サダヲさん演じる犯人の中に潜む闇の真実にたどり着いたと思うのですが。


和製ホラー的な視点で観ると、よくできた作品だと思います。


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Posted by kanzaki at 2022年05月08日 13:37