●映画『ベイビー・ブローカー』公式サイト - GAGA
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監督・脚本/是枝裕和
出演/ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、IU(イ・ジウン)
【あらすじ】
『万引き家族』などの是枝裕和が監督などを務め、韓国の製作陣や俳優らと長年構想を練ってきたオリジナル企画を映画化したヒューマンドラマ。
「赤ちゃんポスト」に預けられた赤ん坊と周囲の人々のエピソードが描かれる。
古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョンと、赤ちゃんポストのある施設で働く児童養護施設出身のドンスには、「ベイビー・ブローカー」という裏稼業があった。
ある土砂降りの雨の晩、2人は若い女ソヨンが赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。
しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づいて警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく赤ちゃんを連れ出したことを白状する。
「赤ちゃんを育ててくれる家族を見つけようとしていた」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。
一方、サンヒョンとドンスを検挙するため尾行を続けていた刑事のスジンとイは、決定的な証拠をつかもうと彼らの後を追う。
2022年製作/130分/韓国
※※※
【感想】
韓国映画で字幕なのに、何故だか邦画を観ているのと同じ感覚でした。
自動車の走る方向は違えど、街並みは似たような感じ。
日本より、貧富の格差が激しい競争社会なのかなあと思いました。
犯罪者である主人公たち下層も、それを追いかける警官たちや、違法と分かりつつも子供を買う上層も、心はどこか満たされていない。
・・・日本、否世界皆そうなのかも。
日本人の是枝裕和さんが監督をすると、不思議とフィルム(今はデジタルだけれど)を通して描かれる世界観は、どこかやはり邦画になる。
そして、出てくる人達が優しいから、自然とその世界観に癒されます。
是枝監督作品は、「そして父になる」という作品だけ観ています。
新生児取り違え問題を通し、家族の在り方を描いています。
ある意味、疑似家族もの。
未見ですが「万引き家族」も疑似家族もの。
今回の「ベイビー・ブローカー」も、おんぼろのワゴン車に乗って、どことなく疑似家族な雰囲気の人達によるロードムービーです。
やっていることは犯罪なのですが、それに関わる人達から悪意や憎しみを感じません。
基本、この作品に登場する人達に、根っからの悪者はいません。
主人公たち犯罪者を追いかける女性刑事・・・特に先輩格の刑事は、旦那との仲は良いものの、子供がいないことによるどこか空虚感みたいなものを感じさせます。
そして、疑似家族然とした主人公たちを追いかけ、その姿を見つめるまなざしは、不思議と優しさに溢れています。
うん、男性ではなく、女性・・・あの女優さんの持つ雰囲気だから良いのでしょうね。
あのまなざしは多分、是枝裕和監督の眼差しを代弁しているように思います。
大人たちの演技も良いのですが、児童養護施設の子供達の演技がいいですねえ。
本当、自然。
そして好感を持てます。
主人公たちの旅に途中から紛れ込んできた児童養護施設の少年。
まるで、クレヨンしんちゃんが大きくなったかのような子。
あの子が旅に加わってからの、画面の明るい雰囲気が良いです。
作品冒頭は土砂降りの雨から始まり、赤ん坊を捨てるというシーン。
その後も、社会の下層を感じさせる街並みが続くものですから、このまま暗い感じなのかなあと心配していたのですが、そんなことはありませんでした。
むしろ、明るく優しい(過剰な装飾の明るさではない)。
赤ん坊を産んで捨てたのに、何故だか一緒に旅する若い女性は、この少年に対しては素直な心を伝えられます。
電車での移動中にトンネルに入って車内が真っ暗になった時や、ホテルで灯を消した時に、その本心を口にします。
主人公男性2人も、犯罪者なのに、何故だか悪そうに感じません。
年配の主人公は、クリーニング屋をしているから、服装そのものは高価じゃないけれど清潔感があります(汚れていない、シワシワじゃない)。
若い男性も、犯罪者というより心優しい穏やかな好男子。
私は映画で、人間の悪い心を観るのが好きじゃないのですが、この2人は好き。
社会的弱者の立場をあの冒頭の土砂降りのシーンが表しているのかな。
だから最後のシーンは静かだけれど、登場人物達の幸せを監督が祈っているように感じました。
良い映画ですよ。
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