2022年07月10日

映画『ゆるキャン△』の感想〜主人公たちが社会人に成長してからの物語である意味合いがちゃんと描かれていました

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●映画『ゆるキャン△』公式サイト
https://yurucamp.jp/cinema/

監督:京極義昭
原作:あfろ
声優:花守ゆみり.東山奈央.原紗友里他


【あらすじ】
あfろの人気コミックを原作に、女子高校生たちがアウトドアを楽しむ姿をゆるやかに描いたアニメ「ゆるキャン△」の劇場版。
主人公の各務原なでしこらが大人になった姿を描く。
東京のアウトドア用品店に勤務するなでしこ、名古屋の出版社で編集者として働く志摩リン、東京のイベント会社から山梨の観光推進機構に転職した大垣千明、山梨の小学校教員となった犬山あおい、横浜のペットサロンでトリマーとして働く斉藤恵那の5人が再び集い、キャンプ場づくりに奔走する。

2022年製作/120分


映画『ゆるキャン△』本予告│ 2022.7.1 ROADSHOW


※※※


【感想】


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私は原作コミックの既刊全て持っています。
しかし、アニメとドラマは観ていません。
いろいろあって見逃してきました。


今回、興味を持ったのは、原作より先の社会人になってからのお話しだからです。


通常だったら設定は高校生のまま、普段は行かない所でのキャンプ・・・例えば、海外(フィンランド等)での冬キャンプを映画作品として作るのではないでしょうか。
そうやれば、延々とシリーズを長期化できますから。


それを敢えてやらず、下手したらファンを裏切る行為にもなりかねない手法で映画化しました。
しかし、これが素晴らしい。
ものすごく丁寧な「邦画」だったのです。


原作やアニメを知らなくても、これ単体で成立している内容ですので、いきなり観ても大丈夫ですよ。


お話しの主軸は、キャンプ好きな主人公たちが、自分たちでキャンプ場を作るというお話し。
その過程はまるで、「ダッシュ村」「ダッシュ島」みたいで面白いです。
重機まで自分で操作しちゃいますからね。


原作で初期に大切にしていたのは、「伝える」ということではないでしょうか。
キャンプの楽しさを伝える。
別に、最初から高価な道具をフル装備で用意せずとも、火を焚いて沸かしたお湯でカップラーメンを食べるだけでいい。
そうやって、ほんの少しずつ楽しさを伝える。
自分が好きなこと、知っていることを伝えることの大切さ・楽しさを感じられました。


映画でも、その部分を強く感じました。
アウトドア用品店に勤める主人公が、なんにも知識の無い女子高生相手に楽しさを伝えるシーン。
草刈りのやり方を主人公たちに教える老人、土偶の知識を教える職員等。
そういう、伝えるというシーンをたくさん用意しています。


「伝える」という原作同様のメッセージに加え、「挫折」という感情を本作に加えたのが重要だったと思います。
途中、キャンプ場作成が中止になってしまいます。
その時の、各メンバーの表情は、原作エピソードには無いものだと思います。


主人公たちが、学生時代は「大人になったら何でも出来る」と思っていたのに、実際に大人になったらなったで出来ないことがあることを話します。


アイドル声優によるファン向け日常系アニメとして製作しても、誰も文句言わないでしょう。
ファンがそれを望むのだから。
けれど、「伝える」「挫折」等をきちんと盛り込んでおり、主人公たちが社会人に成長してからの物語である意味合いがちゃんと描かれていました。


この作品を作ったスタッフならば、今後も「邦画」としてのオリジナル作品を作ってくれるように思います。
次回作が楽しみですよ。

Posted by kanzaki at 2022年07月10日 11:11