●『別冊NHK100分de名著 読書の学校 西研 特別授業『ソクラテスの弁明』』(西 研 著)より
哲学は港町のミレトスで始まりました。
その最初のテーマは、「世界は何からできているのか」というものでした。
最初の哲学者と言われるミレトスのタレスは「万物は水からできている」と言いました。
残っているのはこの言葉だけで詳しくはわからないのですが、水はあらゆる生命体を養うから、と考えたのだろうという説があります。
タレスに続くアナクシマンドロスもミレトスの人ですが、水や土のような具体的で限定的なものとは異なる「無限定なもの」(ト・アペイロン)があって、それが形を変えて具体的なものになっている、と考えました。
さらに、アナクシマンドロスに続くアナクシメネスはおそらく、「世界は無限定なものからできているとアナクシマンドロスさんは言ったが、これでは何のことだかわからない。
何か具体的な候補はないかなあ」と考えたのでしょう。
そして万物は「空気」からできている、と主張しました。
空気が濃縮すると液体になり、さらに濃縮すると固体になると考えたのですが、なかなか面白いですね。
このように、師匠や先輩の説に対しても「本当にそうなのか」と問うて納得できる答えを求めるのが、哲学の伝統と言えるでしょう。
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ソクラテスも若いころは、先に見た自然の根本原因について考えていたようですが、その後方向を転換して、物事の「よさ」を問題とするようになりました。
「何がいいのか」「なぜそれがいいのか」など、よさ(価値)の根拠を問う営みを始めます。
具体的には、正義、勇気、知恵、節度などの「徳」──魂に備わっているべき美徳──を取り上げて議論しています。
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【コメント】
哲学って、本当に抽象的ですね。
頭や心の中で展開するもの。
そういや、「頭」と「心」の違いはなんだ?
そんなこともふと思いますが、説明を受けたところで所詮はその人の考えなので、他の人からは違う答えが出てきます。
モノが進化した時代でも、「世界は何からできているのか」と問われて、たった一つの真の答えは出てきません。
答えが出ていないから、古典である『ソクラテスの弁明』がまだ現役であり参考になるのでしょう。
私には答えを出せる能力はありませんが、哲学をもっと実生活、仕事に役立てられる方法の一つや二つなら考え出せるかもしれません。
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