2022年11月10日

映画『天間荘の三姉妹』の感想〜辛い思いをした人が前へ進む為の元気が出る作品

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●映画「天間荘の三姉妹」公式サイト
https://tenmasou.com/


監督:北村龍平
原作:高橋ツトム
出演:のん、門脇麦、大島優子、寺島しのぶ、柴咲コウ


【あらすじ】

漫画家・高橋ツトムの代表作「スカイハイ」のスピンオフ作品「天間荘の三姉妹」を実写映画化。

天界と地上の間にある街・三ツ瀬で、老舗旅館「天間荘」を切り盛りする若女将の天間のぞみ。
妹のかなえはイルカのトレーナーで、母親で大女将の恵子は逃げた夫をいまだに恨んでいる。

ある日、謎の女性イズコが小川たまえという少女を連れて天間荘を訪れる。
たまえはのぞみとかなえの腹違いの妹で、現世では天涯孤独の身だったが、交通事故で臨死状態に陥ったのだという。

イズコはたまえに、現世へ戻って生きるか天界へ旅立つか魂の決断ができるまで天間荘で過ごすよう話す。


2022年製作/150分(!)



映画『天間荘の三姉妹』ファイナルトレーラー解禁!《2022年10月28日(金)ロードショー》



映画『天間荘の三姉妹』―「ようこそ、天間荘へ!」冒頭映像5分解禁!―<本編映像>


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【感想】


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いや〜、今年観た邦画でも上位に入る内容。
ベタでもいい。
こういう、ラストでカタルシスを開放する作品が好きです。


能年玲奈さんの今年の主演映画3作目・締めに相応しい作品でした。


・Ribbon(2022年、イオンエンターテイメント)- 主演・浅川いつか 役

・さかなのこ(2022年9月1日、東京テアトル) - 主演・ミー坊(さかなクン)役

・天間荘の三姉妹(2022年10月28日、東映) - 主演・小川たまえ 役


ラストの水族館イルカショー。
能年さん自身によるスピーチ、そして笑顔のパフォーマンス最高でした。
もう、あのラストエピソードで、今年の邦画1位に決めました。


「Ribbon」では芸術制作、「さかなのこ」では魚をさばくシーンがありましたが、本作ではどちらも苦手なキャラになっていたのが、ちょっと面白い。


この前に観た映画『線は、僕を描く』は、ラストのパフォーマンスをきちんとやり遂げてくれたら最高と思っていたので(パフォーマンス冒頭でぶつ切り)、本作のイルカショーは本当に嬉しかったです。


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寺島しのぶさんのBIGBOSS感!!
ある意味、主人公です。
貫禄がラスボス。
最初のクズさ加減から、終盤に能年さんを娘として受け止めるまでの過程が本当に素晴らしい。
現在の邦画界でこういう演技ができる人、他に思いつきません。


この原作は、漫画「スカイハイ」のスピンオフ漫画です。
オリジナルのスカイハイにある「恨み要素」はなく、善人ばかり出てきて嬉しい。


イズコはやはり、TV版「スカイハイ」の釈由美子さんに演じて欲しかったなあ。
柴咲コウさんのイズコも、優しさのある感じでよいのですが。


主人公の腹違いのお姉ちゃんである「長女・のぞみ(門脇麦さん)」・「次女・かなえ(大島優子さん)」役のおふたりは、姉妹感がちゃんとありました。
最初から、主人公に理解を示してくれるまともな人間で良かったです。
(昨今の邦画だと大抵、最初は敵対関係にしてしまうから)


次女のエピソードはふんだんに盛り込んでいたのですが、長女は殆どありません。
もしTVドラマで実写化したら、長女のエピソードも盛り込めたかもしれませんね。
長女が女優をやっていた時の知り合いが、ここへ泊まりにやってくるとか。


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本作品はある意味、NHK「あまちゃん」の続編とも言える内容です。
巨大な震災で多くの人が死んでしまった街が舞台。
生き残った者が前を向いて進む為、そっと背中を押してくれる、元気がでる内容でした。


冒頭15分ほどで、能年さんが旅館で働き始めます。
この僅か15分で初期設定を描く力量は大したものです。


以後、15分〜20分単位で1エピード構成になっており、TVドラマのようなスムーズな展開なので、とても観やすいです。
観る前は、上映時間がとても長いので心配でしたが、最後まで飽きることなく観ることができました。


能年さん、大学生と云われても違和感無い見た目とキラキラ感。
塞ぎ込んだ人々を明るくする説得力ある人柄ですよね。
やはり、怒りの演技より、裏表ない笑顔の演技の方が好きです。


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劇中のCGがちょっとショボいというか、スピリチュアル系というか・・・。
CGを使わないで、それらしく演出すれば良かったのではと思いました。
邦画・・・特にタイムリープ系作品は、低予算作品ほどCGを使わず工夫していますよね。


偶然、映画『線は、僕を描く』と同時期での公開。
天災で残された者を描く良作とも、とても素晴らしい作品でした。


『線は、僕を描く』は、主要人物四人以外が今一つ記号的というか心情が希薄だったのですが、本作はモブキャラまで心情が行き届いているように思いました。


是非、能年玲奈さんと横浜流星さんで、兄弟役で明るいコメディをやって欲しいなあ。
ダメ人間長女としっかりものの弟役で。


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【関連作品】


●映画「Ribbon」(監督・脚本のん)の感想〜芸術作品が完成するまでを描いたとても理系な構成の作品
http://kanzaki.sub.jp/archives/005118.html


●映画『さかなのこ』〜さかなクンを能年玲奈さんが演じる。この情報だけで、面白いに決まっている
http://kanzaki.sub.jp/archives/005223.html


●映画『線は、僕を描く』〜4人の登場人物をよく描けた令和らしい作品
http://kanzaki.sub.jp/archives/005271.html

Posted by kanzaki at 2022年11月10日 06:44