●『世間とズレちゃうのはしょうがない』(養老 孟司, 伊集院 光 著)より
養老:
東大にいたとき、同僚の教授が「東大は我慢会だからなぁ」と言ってました。
我慢して最後まで勤める人もいるし、僕みたいに「もう勘弁してよ」と定年前に降りちゃう人もいる。
日本航空に勤めていたサラリーマン作家の深田祐介が、社長になるのはどういう人か、というエッセーを書いていました。
実は社長候補はどんどん下りていくというんですね。
ボク、やめた、というわけ。
残った最後の人が社長になる。
鈍いのか、他に選択肢がないのか、いろいろあるでしょうけどね。
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養老:
大丈夫です。
どうせ死ぬんだからさ。
伊集院:
そうなんですよね!
元気出る言葉です(笑)。
それが年齢がいくに従って、どんどん度胸が据わっていく理由でしょうね。
まだまだ世間への執着があるけれど、どのみちいつかは世間から離れることになるわけですからね。
養老:
昔から芭蕉にしても西行にしても、世間を離れているじゃないですか。
日本の文化人はだいたいそうですよ。
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伊集院:
落語やラジオをしている者にしてみれば、「いや、シーラカンスも生きていていいんだよ」というのは、すごい希望ですよ。
ソフトクリームみたいな螺旋状に世の中が成り立っていくなら、自分の都合で上っても下りても止まってもいいということですから。
養老:
でも急激に変わるのはショックが大きい。
ちょっとずつ、ゆっくりやっていくことです。
伊集院:
急いで上ろうと思ってカーブで急に舵を切ると、振り落とされる人間がいますからね。
急に「明日会社辞めてやろう」というよりも、まず二軸をつくることを考えるとか。
たとえばそれが都会と田舎の二軸の暮らしなんだと思います。
自分と世間との関係で思いつめてしまったとき、二軸をつくることと、螺旋構造のイメージに当てはめて現状を眺めてみると、別の道が見えてくるかもしれませんね。
※※※
【コメント】
会社にしがみつき、60歳を超えて働き続けないといけない。
健康面が大丈夫なうちは、少なくとも収入面から働く必要があるのが現実です。
殆どの人がそうでしょう。
けれど内心、疲れちゃったなあ、もっと自由になりたいなあと思ったりするものです。
世間の隅で、ひっそり物思いにふけながら過ごしたい。
半面、人生のラストぐらい、自分の考えで思いっきり活躍したいなんて思ったりもします。
誰も正解なんてわからない。
確かに生き方において、「まず二軸をつくることを考える」というのは無難ですね。
片方からもう一方を見つめることができるので、お互いの長所短所が見えてきますから。
100点満点の軸なんてないのだし。
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