2023年06月12日

映画『水は海に向かって流れる』の感想〜もっと「料理」を通したエピソードを観たかったです

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●映画『水は海に向かって流れる』公式サイト
https://happinet-phantom.com/mizuumi-movie/


【あらすじ】

高校に入学した直達は、通学のため叔父・茂道の家に居候することに。
しかし最寄り駅に迎えに来たのは、見知らぬ女性・榊さんだった。
しかも案内されたのはシェアハウスで、会社員の榊さん、親に内緒で会社を辞めマンガ家になっていた叔父の茂道、女装の占い師・颯、海外を放浪する大学教授・成瀬ら、くせ者ぞろいの住人たちとの共同生活が始まる。

いつも不機嫌そうだが気まぐれに美味しいご飯を振る舞ってくれる榊さんにいつしか淡い思いを抱くようになる直達だったが、彼と榊さんの間には思わぬ過去の因縁があった。

2023年製作/123分

監督:前田哲
原作:田島列島
脚本:大島里美
出演:広瀬すず、大西利空


6月9日(金)公開『水は海に向かって流れる』本編映像


※※※※※


【感想】


原作は読んでいません。
映画館で予告を観たとき、『劇場版・きのう何食べた?』みたいな家庭料理を中心にしたお話しかと期待していました(主題歌担当も同じだし)。



劇場版『きのう何食べた?』予告篇


実際に観たら、そこまで主軸が料理じゃなかったので、特徴が薄い量産型邦画になっていました。
各エピソードに必ず何かしら料理(手料理・外食)が映し出されていたので、もうちょっと『きのう何食べた?』のように強調していたら良かったのになあと。


おっさんの私には、シェアハウスに個性ある住人たちが多かったので、「めぞん一刻」を連想しました。
広瀬すずさんが演じたヒロインは、「めぞん一刻」の音無響子さんというより、「きまぐれオレンジロード」の鮎川まどか的なものを感じました。


時間的制約なのか分かりませんが、これだけ良いキャラ設定と良い俳優陣に恵まれていたのに活かし切れていませんでした。
本当にもったいない。
子供を捨てたクズ親のエピソードなんてごっそりカットするか後半にちょっとだけにして、このシェアハウス内の住人同士のコメディ的な交流をもっと観たかったなあ。


主人公が作る「暴力的な料理」をもっと楽しみたかったです。
日々、高校生の男の子の食事を主人公が作ることになって、一緒に食べる日々のシーンを観たかったです。
そういうものが無いものだから、高校生の男の子が、主人公に恋心というか関心を向ける理由が薄い。
互いの親がダブル不倫していたという関係性で歩み寄るより、日々の食事の中で歩み寄ってほしかったです。


あの「暴力的な料理」が、不機嫌な主人公の象徴なんですよね?
それならば、高校生の男の子との生活の中で、主人公の心情が少しずつ変わり、ラストは「優しい料理」を作るのかと期待していました。
しかし実際は、なんだかやっつけ感のあるラストでした。
ぶつ切りエンドだし。
だったら、「きのう何食べた?」のように普通の日常で終わる方がいいじゃん。
変な恋愛関係より。


高校生の男の子から見たら主人公は、姉貴のように感じるのが自然だと思うのですよ。
ラストまで、恋愛展開的なものもありませんでしたし。
男の子に恋する同級生の女の子を主人公が応援するものだと思ってました。
高校生の男の子は、ちょっとは年上の女性に憧れはすれど、ああいうラストにはならんだろう・・・。


それなら、後半まで互いの親が不倫していたことを知らず、恋愛感情を感じ始めたところで事実を知る展開の方が盛り上げられたのではないでしょうか。


坂井真紀が演じた主人公の母親は酷いですねえ。
あの劇中の態度も。
ある意味リアルですが、大嫌いです。
不倫して娘を捨てて逃げて、なんか金持ちの男と再婚し、その男の連れ子をかわいがっている。
主人公に対してのあの態度(私は幸せなんだから会いに来ないでよ)は、映画の中だとは言え不愉快でした。
あのエピソード、全部カットしてほしいぐらいです。


広瀬すずと高校生の男の子の二人が、手料理を一緒に食べる日々をもっと増やしてほしかったです。
それがこの作品の特徴になり得たと思うからです。
大きな事件・出来事なんてなくても、そのシチュエーションだけで癒されますから。


他の登場人物も魅力的だったのに、活かしきれていませんでしたね。
テレビドラマだったら住人をもっと描けたのに本当に惜しい。


原作を観てない私の感想なので、お門違いな事を書いたかもしれませんが、本当に惜しい作品でした。

Posted by kanzaki at 2023年06月12日 06:29