●『河合隼雄の「幸福論」』(河合 隼雄 著)より
先日、建築家の安藤忠雄さんと対談した。
安藤さんはご存知の方も多いと思うが、極めて創造的な建築家で、国際的に高い評価を受けておられる。
何しろ独学で建築学をマスターした人だけあって、建築界の常識を破るような設計をして、人々をあっと驚かせ、さすがだなあ、と思わせるところがある。
日本中の人が一流大学を出て、一流企業に勤めるのが最高などと思っているときに、まさにわが道をゆく生き方をして成功された人だけに、前から一度お会いしたいと思っていた。
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そのなかで印象に残ったことのひとつは、安藤さんが「常識のない人は駄目ですね」と言われたことである。
安藤さんのような創造的な人がなぜ、と不思議にも思えるが、対談を続けていてすぐ安藤さんの真意がわかってきた。
最近は創造性ということが大切にされてきたので、それを間違って、まるで非常識なことが独創的であると思っている人がある。
そんな人はただ周囲が迷惑するだけで何の取りえもない。
それよりも、常識をちゃんと身につけて生きていて、なおかつそれを超えて何かが出てきてこそ、ほんとうに独創的であり得る、というのである。
私はこれを聞いて、なるほどと感心したが、聴衆もそう感じた人が多かったようで、後で安藤さんを囲んで座談会をしたときに、早速そのことが話題になった。
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安藤さんが常識というものは、知識として知っている、というのではなく「身についたもの」になっていなくては駄目で、そのためには幼い子どものときからの教育が大切だと言われた。
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常識はあくまで常識で、「絶対的真理」ではないし、「神の命令」でもない。
常識を身につけて生きているということは、常識に縛られているのとは違う。
常識に固く縛られてしまったら、その常識が変化すると大いに困ることだろうし、創造性はなくなってしまうだろう。
しかし、常識をあくまで常識として身につけている人は、それをひとつの守りとして、自分も他人も不必要に傷つけることなく生きながら、新しい変化に対応してゆけるであろう。
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【コメント】
「常識」は、自分と他人を不必要に傷つけることなく生きるための術。
一人ですべての物事が成立しませんから、他者と交わる中で、常識は大切だと思います。
ここでいう「常識」は、「知識」というよりは「礼儀・作法」なのかな?
私は残念ながら知識も記憶力も低いです。
歳も重ねたので、リカバリは不可能。
せめて仕事をしているときは、礼儀を意識し、節度ある態度で物事に取り組もうと思います。
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