●1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365
(著:デイヴィッド・S・キダー、ノア・D・オッペンハイム、小林朋則)より
哲学_プラトンの洞窟の比喩
「人間は、地下にある洞窟のような場所に住んでいると考えればいい。
その洞窟は、入り口の奥行きが長く、そこから光が、洞窟の幅いっぱいに奥まで差し込んでいる。
そこに住む人々は、子どものころから足と首を縛られて固定されており、縛られているため頭を左右に動かせず、正面しか見ることができない」。
──プラトン『国家』
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冒頭に掲げた『国家』の有名な一節でソクラテスは、人々が洞窟に閉じ込められ、壁に映し出された物の影しか見ることができないという状況を説明している。
人々は前を向くことしかできず、その後ろでは火がたかれて火の前にさまざまな物が掲げられると、その影が壁に映り、彼らは影を見て、それが何かを理解する。
例えば、洞窟の人は本を見ていると思っていても、実際に見ているのは後ろで掲げられた本の影にすぎない。
誰かひとりが真実の姿を知ろうとして洞窟から脱出したとしたら、最初は太陽のまばゆさに苦しみ、形を持った物の姿に戸惑うかもしれない。
やがて世界の真の姿を理解し、影しか知らない人々を哀れむはずだ。
ソクラテスの洞窟に残った人々は、当然ながら真理を知るのを拒み、 脱出した仲間が真実を説明しようとしても、こいつは頭がおかしくなったと思う。
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洞窟に閉じ込められた人々は、この世界に大勢いる無知な人々を表している。
彼らは五感で認識できる色・形や音など事物の仮の姿しか見ていない。
洞窟から脱出して事の真相を知った人というのが、哲学者である。
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知性を使ってイデア──万物の真の基礎である抽象的で永遠不変な真理──を認識することができる。
洞窟から脱出した哲学者は、事物の真の姿を知るのだ。
『国家』が基本的に扱っているのは、正義の問題だ。
正義を実現するためには善とは何かを知らねばならない。
よって、善のイデアを理解している哲学者が王として統治するべきである。
そして社会全体を、そのような統治者の要望を満たすように組織しなくてはならないと、プラトンは考えていた。
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【コメント】
真実の姿を知ろうとして洞窟から脱出。
そして、今まで影しか知らなかったことを知る。
なにもこれは過去だけではありません。
今だってそういうことはあるでしょう。
別段、政治とか科学だけではありません。
進学や就職を機に、そう気づくこともあるでしょう。
今まで、人から与えられたものの中で生きてきた。
その与えられたものには何かしら、与えた者のフィルターが挟まれています。
そのフィルターを外して直接自分の手で得た知識、経験。
それは、洞窟から出た人だけが得られるもの。
そういうものを大切にしてほしいものです。
時としてそれは残酷な事実だったとしても。
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