2023年11月04日

映画『ゴジラ-1.0(ゴジラ マイナスワン)』の感想〜世界を狙える作品がついに日本から生まれました

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●映画『ゴジラ-1.0(ゴジラ マイナスワン)』公式サイト
https://godzilla-movie2023.toho.co.jp/

監督・脚本:山崎貴
出演:神木隆之介、浜辺美波、吉岡秀隆


【あらすじ】

「ゴジラ」生誕70周年記念作品。
日本で製作された実写のゴジラ映画としては通算30作目。

舞台は戦後の日本。
戦争によって焦土と化し、なにもかもを失い文字通り「無(ゼロ)」になったこの国に、追い打ちをかけるように突如ゴジラが出現する。
ゴジラはその圧倒的な力で日本を「負(マイナス)」へと叩き落とす。
戦争を生き延びた名もなき人々は、ゴジラに対して生きて抗う術を探っていく。

2023年製作/125分


※※※※※


【コメント】


新しいゴジラの舞台は、戦後すぐの日本。
敗戦で既になにもない。
そして、「シン・ゴジラ」のような最新科学技術も、最新兵器も無い。
そんな中で、どうやって人々が戦うのかと、公開を楽しみにしていました。


公開当日に鑑賞。
最高の作品でした。
「シン・ゴジラ」を軽く超えました。
邦画として、人々の描き方もとても良かったです。
映像技術も海外に全く引けを取らないです。
ハリウッドがストを起こしているし、今のタイミングで全世界公開は非常にナイス。
海外でもヒットすると思います。


終わったあと、客席から称賛の声。
劇中、泣いている人もいました。
私も泣きました。


キャッチコピー「生きて、抗え。」の「抗え」という言葉が、鑑賞中に頭の中をずっと回っていました。
この映画はこの言葉を中心に展開してきます。


神木隆之介さんが演じた敷島浩一は、元・特攻隊の戦闘機乗り。
しかし、恐怖によって戦いから逃げた為、戦後もその呪縛からうなされています。
そんな彼が、ゴジラを前に戦闘機に乗って戦います。
常に悩まされている主人公が、覚悟を決めてゴジラを倒すために立ち上がるまでの表情、姿勢の変化をうまく表現されていましたよ。
「らんまん」のような常に陽気なキャラも良いのですが、青年独自の苦悩感を抱えたキャラも上手ですね。
浜辺美波さん演じるヒロイン、そしてそのヒロインと血の繋がらない子供と同居する中、他者のために生きることによって、「自分も生きていいんだ」と自覚できるようになる展開は、まさに「古き良き時代の邦画の王道」であります。


特撮ヲタ的には、主人公がゴジラとの戦いの為に搭乗する、局地専用戦闘機_震電(しんでん・実在します)の登場が良かったです。
ゴジラ作品は大抵、人類側にスーパー兵器が登場しますが、そのポジションですよね。
あれ、プラモ出たら買います。
敗戦直後なので超科学的なものではありません。
主人公が戦わなかった為、ゴジラになる前の小型恐竜状態によって部隊を全滅させられて憎んでいる元・整備兵が、対ゴジラ用に動かせるようにしました。
主人公と元・整備兵(青木崇高さんが演じる)の関係性は、映画冒頭からラストまでずっと繋がっています。
その関係性が物語のスパイスであり、そして「切り札」でもあるのです。
燃料タンク部分を取っ払って武器を詰め込んであるこの機体。
主人公を恨む元・整備兵の整備したこの機体は、「戦って死んでこい」みたいな仕様。
しかし実は、「生きて、抗え。」というメッセージが込められた機体であったのです。
多分、そうなんだろうと予想し、実際にそうなった時、単なる特撮作品の小道具に終わらせず、ストーリーに組み込まれていてとても良かったです。


この作品、「シン・ゴジラ」と異なり、人間同士のドラマを深く描いています。
「シン・ゴジラ」の会話は、職務遂行の為の会話だけで、プライベートな部分はありません。
それどころか、感情(セリフの抑揚)も排除しています。
一方、本作は、登場人物をかなり少なくしており、その分、各登場人物の私的な部分を描いています。
ゴジラ討伐にあたっても、個人の感情を表に出しており、鑑賞している我々が感情移入しやすくしています。
主人公以外の登場人物の生きてきた背景をすべて語っている訳ではありませんが、同じ状況下にあっても、それぞれの登場人物をきちんと描き分けていましたよ。


俳優さんたちがNHKの連続テレビ小説で見かけるような方たちが多く、安心感と好感度が高かったです。
人間同士の演技部分は、邦画そのものでした。
そして、吉岡秀隆と神木隆之介さんの相性良かったです。


吉岡秀隆さんは科学者の立場で活躍します。
彼がゴジラとの戦闘前夜、みんなに「今まで日本は命を粗末にしすぎだ」と語っていたシーン良かったです。
そして、今回のゴジラとの戦いは誰も死なせないと語るのです。
頼りない部分もあるキャラなのですが、威厳があるだけの科学者よりも人間臭くて良かったですよ。


戦後時点の科学なんて限界があります。
シン・ゴジラの時のような薬品の開発なんて無理。
そこで、科学現象でゴジラを海中深くへ沈め、その水圧で倒す。
それで駄目なら、海中から一気に海面へ浮上させることで、内蔵にダメージを与える。
それを実現するため、敗戦直後の限られた戦艦と資材、人で、未知の脅威に戦うのは萌えます。
(しかも戦後の各国の関係から、どこも助けてくれない。国が表立ってやることもできないから、民間で戦う)


あの巨体を沈めるアイデア、良いですね。
ゴジラを沈めて、再度浮上した際、いろんなトラブルが巻き起こります。
それを各人の活躍で乗り越えるのが、王道で好きですよ。
「シン・ゴジラ」よりスマートじゃないから良いのです。


今回のゴジラ、今までの100m級の巨大なものから50.1mと小型なものになっています。
その分、物凄く動きが良いです。
「シン・ゴジラ」は突っ立っているだけの感じが多かったのですが、本作では街なかでの暴れ回る姿も動きが良いし、今回の主戦場である海でも水陸両用で高速移動します。
(そういや意外と、陸に上がって動き回るシーンは少なかったなあ)
背が低いから、人間との視線が近くなりますよね。
だから、ゴジラと人間が同じ画の中に収まっていたので、恐怖感が倍増していました。


BGMは初代から使われているあの曲。
それ以外はあまり使っていないです。
あのBGMを効果的に使っていたなあと感心しました。
戦闘シーンでとてもうまいタイミングでかかるので燃えます。


ヒロインは、浜辺美波さん。
神木隆之介さんとの共演作「らんまん」も良かったですし、特撮作品だと「シン・仮面ライダー」での演技も印象深かったです。
「シン・仮面ライダー」以降、世間での注目度にブーストがかかり、今年一番印象的な女性俳優となりましたね。
主人公がヒロインに、戦時中、特攻から逃げたことを告白するシーン。
未だに悪夢から逃げられず怯える主人公を優しくいたわる演技が良かったです。


世界を狙える作品が、ついに日本から生まれました。
是非、観て欲しいですよ。
そして、本作の続編も楽しみにしています(やりますよね?)。
タイトルは『ゴジラ0』でしょうか。
それとも更に過酷な状況下で戦う『ゴジラ-2.0)』でしょうか。


庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」といい、本作といい、監督の作風・考えが表に出ているゴジラ作品は良いですね。
次にバトンタッチする監督は誰なのかも興味があります。
(『ゴジラ-1.0)』の登場人物達が好きなので、彼らのその後の作品がやはり観たいなあ)

Posted by kanzaki at 2023年11月04日 11:47