2004年03月10日

ハルウララ【ブームの後】

私は競馬をやりません。
生まれて初めて競馬をやった時、何故か全てのレースを当ててしまいました。
「これは、ギャンブルの悪魔が私に囁いているに違いない・・・・・」
そう自分に言い聞かせ、それっきり殆どやる事はありませんでした。
せいぜい仲間の付き添いで、100円とか小額だけ賭けるだけ。
そんなもんですから、競馬について知っている単語と云えば、「武豊騎手」「マキバオー」ぐらいでした。

私の勤めている会社は毎日、朝礼があります。
毎日一人ずつ交代で前に立ち、3分程度のフリートークをします。
人によって、政治経済、スポーツ、趣味など、色んな内容が語られるので、なかなか面白いものです。
さて、本日は女の子が当番でして、彼女は競馬について語っていました。
私はというと、最初に申し上げましたとおり競馬には興味が無いし、更には、珍しく二日酔いであり、気持ち悪いわ睡眠不足だわで、朝礼中に立っているだけで精一杯でした。

その朝礼で記憶に残っていたのは、「春うらら」「連敗」という言葉でした。
帰宅してからも、何故かその言葉が頭の隅に残っていまして、早速、ググッてみました。

・「春うらら」と云うのは「ハルウララ」という馬の名前

高知競馬でデビュー以来、目下105連敗中

・その負けっぷりが逆に人気となっている

・3月22日のレースに、武豊騎手がハルウララに乗る

・ハルウララの半生、映画化決定

なんともまあ、凄いキャラクターじゃないですか。
しかも日本競馬界の発展の為、最強の男が、最弱の馬に乗るという話題性。
競馬に興味の無い私でも、気になるというものですよ。

グッズも売れまくりですし、「当たらないから、交通事故のお守り」と云って、勝てないのに馬券も売れまくり、応援歌のCDもリリース予定らしいです。
私の住む地域の地方競馬場は、かなり前に閉鎖されました。
地方競馬は、全国どこも傾きかけているようです。
そんな中、彗星のごとく現れた・・・・・・もとい、負け続けているのだから、亀のような動きで現れたスター、それが、ハルウララ。
名前からして、なんともまあ、のほほんとしているじゃありませんか。

私は、競馬のスターと云うと、どんな大きなレースでも勝って勝って勝ちまくる、絶対的なパワーこそが要因だと思っていました。
それが今回は、全くの逆。
武豊騎手は、ご自身のホームページで、
「生涯で一度も勝っていない馬がGIレースを勝った馬たちより注目を集める対象になるというのは、どうにも理解しがたい」
と漏らしています。

世間で何かがブームになる時というのは、最初はそれについて見識の深い人が評価し、やがてそれが口コミで広がって行き、最後はあまり知識の無い一般層に、「概要」だけが知られて、それが何かしら魅力のある内容だとブームになるのだと思います。
ブームになると、その「概要」の部分だけが更にデフォルメされていき、グッズ等になって販売されたりして金銭的対価となります。
つまり一般人にとってそれは、「消費」の対象であり、しかも「嗜好品」の扱いなので、飽きてしまえば捨てられていくだけなのです。

ホームページもそんな所がありますね。
最初は弱小サイトだったけれど、大手のサイトで紹介されてリンクを貼られ、多くの人がそのサイトを訪れて大賑わいとなる。
その大賑わいを、ネットでは「祭り」と一部では云われていますが、その名の通り、ある一定の期限が過ぎれば、みんなが忘れていく存在。
ネットだと金銭的なモノの動きが無いし、そのサイトに訪れなければいいだけなので、ブームが去るのも容易です。
割と似たジャンルのサイトが無数にあるので、「私の代わりは幾らでもいるわ」「多分、私は3人目だと思う」なんて、どこかの青い髪の女の子のような台詞に似た動向がネット界にはあると思います。

みんなは忘れても、そのブームになった張本人は今後も生き続けるのです。
これは辛いのだろうなあと思います。
持ち上げられるだけ持ち上げられて、下に置いてある脚立を外されるようなものですから。
最近、解散を発表をした「猿岩石」なんて、皆さん覚えています?
電波少年で人気になり、歌手デビューまでした人達ですよ。
しかも、ミリオンセラー歌手。
ブームとは恐ろしい。
彼らだって人間ですから、ブームが去った後も、生活するには稼がないといけない。
今後も大金が入ってくると思いきや、ブームが去れば無一文。
この先、何十年間という人生をどう生きるのでしょうか?

「そういう世界に憧れて入ってきたのはお前自身の希望だったんだろ?」
「人生で、一度でもそういう事があっただけでも、俺達サラリーマンよりマシだろ?」
と云われるかもしれない。
けれどね・・・・・。

スマップの「世界に一つだけの花」という歌が大ヒットしました。
「ナンバーワンではなく、オンリーワンになろう」と云う内容。
歌詞について、
「偽善的だ!」
「花屋で売られている時点で、その花は、既に過当競争の中で勝ち残り組みじゃないか。平和のメッセージと矛盾している」
等と云われる事もあります。
けれど、「概要」が何かしら魅力のあるものだったから人気となったのです。
あまり細かいことを云っても仕方がありませんよ。
それより、この歌を肯定的に考えてみたいと思います。
そうすると、ブームが終わって恐怖が芽生えるのは、勝ち負けを気にしているからだと答えが出るように思います。
ブームは他人が作り出したもの、本人は今も昔も変わりなく生き続ければ、ブームが去ろうがどうしようが関係ない。
そんな風に考えられれば、その人は生涯、幸せに暮らせるのではないかと思うんです。
世間に振り回されない事・・・・・それこそが、オンリーワンの意味ではないかと思います。

ハルウララも、やがて一般の人達から忘れ去られるでしょう。
けれども名前の通り、春のような穏やかな心で、のんびりと余生を過ごして欲しいと思います。

Posted by kanzaki at 2004年03月10日 22:38
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