2004年04月06日

だから、自分を嫌いにならないで

日曜の朝は、子供向けの特撮やアニメを放送しています。
別名「アナザーゴールデンタイム」。
チビッコから大きなお友達、はたまた、イケメン目当ての主婦層までが視聴しています。
この時間の枠で出演していた俳優・・・オダギリ・ジョーなどが、その後、第一線の俳優として活躍していますよね。
今では、俳優の登竜門的な側面もあります。

日曜朝7時30分、テレビ朝日系列で放映しているのが「特捜戦隊 デカレンジャー」
ここ最近の戦隊シリーズは、どうもイマイチな感が否めず、私は見ていませんでした。
しかし今年のデカレンジャーは、少し違っていました。
ネット上でも、凄い評判が良いのです。
「仮面ライダー剣」が、オンドゥル語でウケているのとは違い(お、作品の内容がとても良いのだそうです。

そこで実際に見てみたのですが、私も非常に感銘しました。
ただの子供向け番組ではありませんでした。
月9ドラマ達よりも、とても奥深いものを感じました。

「デカレンジャー」というのは、凶悪な犯罪を繰り返す宇宙人(通称、アリエナイザー)を捕まえる宇宙刑事達です。
先週のエピソードは、エスパー能力を持った少年のお話し。

デカレンジャーは5人のメンバー(赤青緑黄桃)で構成されています。
その中に、デカイエローこと「ジャスミン」という女の子がいます(美形!!!)。
彼女はエスパー能力を持っています。
相手の心を読み取ってしまう特殊な能力。
しかし小さい頃は、その特別な力をコントロールすることが出来ず、周りのみんなから冷たい視線を向けられていました。
そんな人達の誹謗・中傷の心が、嫌がおうにも脳裏に入ってきて、とても苦しんでいたのです。

高校生になっても、その周りの冷たい視線と感情は変わりませんでした。
ある日、親友だと思っていた友達も、実は自分を軽蔑していた事を相手の心から読み取ってしまったのです。
彼女は雨の中、傘も刺さずに歩きました。
もう心はボロボロです。
そんな時です。
偶然、アリエナイザーが人を襲って殺している現場を目撃してしまいました。
それに気づいたアリエナイザーは彼女へ近づき、胸倉を掴みます。
「目を開けっ!」
このアリエナイザーは、目から特殊な光線を放ち、視線を合わせた人間は、たちどころに消滅してしまうのです。
彼女は、目を閉じていました。
(目を開けたら死ぬ・・・。それでも、いいかも・・・。私の事みんな気味悪がるし、友達なんかいないし・・・。死んでもいい・・・)
彼女は目をゆっくり開けようとしました。

そこへ、一発の銃声。

目を開けると、背中に撃たれた拳銃により、アリエナイザーは意識を失い、その場で立ち崩れて消滅しました。
ジャスミンは気が抜けて倒れこみました。
視線を前に向けると、その拳銃を撃った人物が立っていました。
犬の顔を持つ人間でした。
彼は拳銃をしまいながら、「大丈夫か」と問いました。
「あなたも、アリエナイザー?」
「俺は、ドギー。宇宙警察のデカだ」
ドギーは彼女に手を差し伸べました。
しかし彼女は拒絶して立ち上がります。
「助けてくれなくても良かったのに・・・」
「エスパーだからか?」
「えっ?」
「人と違う力を持ち、苦しんでいるからか?」
暗い表情のジャスミン。
「だが、それは違う。それは君の力だ。君はそれを好きになるべきだ」
「でも!」
「君自身が君の力を嫌っていたら、誰も君のことを好きにならない」
「なれないもん! こんな自分なんか!」
ドギーは、ゆっくりとその大きな身体で彼女を抱きました。
「俺が保障する。君は一人ぼっちじゃない。だから自分を嫌いになっちゃいけない」
ドギーに抱かれて、はじめて人の優しさ感じた彼女は、泣きながらがこう云いました。
「どうして? どうして、こんなに温かいの?」

その後、彼女は宇宙刑事になったのでした。
そんな過去を持つ彼女。

今回のお話しでは、エスパー能力によって、手をかざすと何でも瞬間移動できる少年が登場します。
この少年もまた、その不思議な力によって、イジメなどの迫害を受けていました。
孤立する少年。
そんな彼に、アリエナイザーが近づきます。
「手伝ってくれたら、誰も君の事を知らない宇宙へ連れて行ってあげるよ」
そんな誘惑の言葉に、少年はエスパー能力を使い、犯罪に協力をしました。

悲しい心を持つ少年。
同じような境遇だったジャスミンは、少年を救おうと必死になります。
しかし心を閉ざした少年に、その思いがなかなか伝わりません。

デカレンジャーは、アリエナイザーと少年を犯行現場にて見つけます。
アリエナイザーは少年に、「デカレンジャーをエスパー能力でやっつけてしまえ!」と指示します。
誰も信用できない少年は、その手をデカレンジャーへ向けます。
「いいよ。私をテレポートするならしても」
ジャスミンが一歩前へ出ます。
少年はうつむきます。
自分へ心を開く彼女に、そのテレポート能力を出せません。
ジャスミンは少年の前まで来ました。
「でも信じて。君は一人ぼっちなんかじゃない」
彼女は、少年をゆっくりと抱きました。
そう。あの頃、ドギーが自分にやってくれたように。
「だから、自分を嫌いにならないで」
「なんで・・・なんで、こんなに温かいんだよ!」
少年はようやく、彼女に心を開いたのでした。

その後、デカレンジャーはアリエナイザーを少年の力を借りてやっつけたのでした。
(このアクションシーンがまた、凄い熱いんですよ。予算は少なくても、ハリウッドの肥満化したアクションよりも、熱いものを感じさせてくれました)

***

ただのアクション中心の内容ではありません。
こういった、「心の壁」に苦しむ人々の姿を描いた作品です。
ゴールデンタイムのドラマでは最近、イジメ関係を真正面から扱った作品がありません。
タブーになってきたし、世間がうるさいですから。
しかし、スタッフは敢えて挑戦した。
本当は真剣に語らなければいけないもの、臭いモノに蓋をするように背けていた事柄を真剣に考え、自分達なりの答えを映像作品として表現しました。
確かに、ネット上で評判になるのも頷けます。
この作品を作ったスタッフは凄いね。
子供向けの作品だからと云って、内容に少しも妥協がありません。
むしろ、これから大人になる為の人格形成中の子供達にメッセージを送ろうと、真剣に作りこんでいます。
大人の私までが、子供向けなんて云う色眼鏡無しに、その作品にどっぷりと浸かってしまいました。


自分を嫌いになっちゃいけない


この事は、スーツを着た大の大人でさえ、なかなか出来るものではありません。
何かに失敗して落ち込んだり、自分のコンプレックスに悩んだり、そんな事の繰り返しです。
そんな人達にとって、この言葉ほど心強く思える言葉はないのでは。
人が幸せに気づく、キーワードの一つだと思いますよ。

それにしても、日本の特撮って素晴らしい文化だと思います。
以前、「夢(March 16, 2003)」というコラムを書きました。
これもまた、私が特撮作品で感銘を受けた際に書いたものです。
http://kanzaki.sub.jp/archives/000116.html
世界に数あるSFとは違う、日本独特の文化である「特撮」。
子供「も」鑑賞できる、エンターテイメント作品となっています。
一度でいいので観てもらえたら、その良さを堪能できると思いますよ。


ジャスミンという、難しい役を演じているのは、木下あゆ美さん
雑誌のモデルをやっているぐらいなので、当然、美形なのですが、それ以上に演技が上手いです。
声と、その発生の仕方が、またいいんですよ。
来年、数々の番組に登場すると思います。
要チェック。

Posted by kanzaki at 2004年04月06日 07:00 | トラックバック (0)
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