2004年05月24日

庵野秀明 in トップランナー【7】

前回の続き。

「passion」というタイトルの後、コーナーが変わります。

真っ黒な画面の真ん中に「1997年7月19日の朝に、吉井裕美が見た夢」の文字。
裕美のナレーション「何か修行のようでもあるし・・・・」
レールの上をカメラが走り、低い視点から倉庫みたいな場所を撮影した画面が映ります。
その後、主人公たち女子高校生4人の日常が映ります(プリクラを撮影しているシーン)。
この中には、あの仲間由紀恵さんもいますよ。
1998年製作「ラブ&ポップ」というデータが表示。

(トップランナーの)ナレーション「98年、エヴァンゲリオンの後、庵野監督が最初に発表したのは、村上 龍原作"ラブ&ポップ"。アニメではなく、実写の作品でした。女子高生の生態を描いたこの映画は、デジタルビデオカメラで撮影。全編、実験的な映像に溢れています」

次に、2000年の作品「式日」の映像。

ナレーション「庵野監督は実写映像に力を注ぎ、数々の作品を世に送り出しています」

再び、スタジオでのMCとのトークへ戻ります。

本上「エヴァンゲリオンの後に、えっとまあ、主な表現の活動の場を実写映画に移したのはどうしてでしょうか?」

庵野「そうですねぇ、実写をやりたくなったのが一番の大きな理由ですね。アニメでないものがやりたかったんですね。エヴァとは・・・。それが実写だった。今はまだ、実写を創るのが面白いんで、実写を続けています」

武田「実写とアニメの両方を監督してみて、多分、アニメの監督の魅力の再確認もあったと思うんですが、実写との違い? それぞれの目線からの違いを教えていただければと・・・」

庵野「アニメの場合は最初に、確固としたイメージありきなんですよ。自分の頭の中にあるイメージを可能な限り、映像に置き換えるというんだったら、今の日本においてアニメーションをやるのがベストだと思うんですよ。実写はそうじゃないんです。現場に行ったら雨が降っている・・・でも今日、これ撮らなきゃいけないという時に、台本は晴れと書いているので雨じゃどうしようもない・・・けど、雨でなんとかしなきゃいけないという・・・イメージ通りにまったく行かないんですね。最初に、エヴァンゲリオンの映画の中に実写のパートを入れた時、それを思い知ったんですね。イメージ通りに何一つ出来ないんだと。その時は凄く嫌だったんですけれど、後になれば、これはアニメじゃない部分でいいかもと。ラブ&ポップの時は、出来るだけアニメとは違うやり方をしようと。アニメのどこまでも思い通りに描ける映像ではなく、外的要因によって、どういうものになるか、さっばり分からない実写がひどく面白く感じたんですね。アニメには、ミステイクっていうものはないんですけれど・・・テイク1しかないんです。テイク1をリテイクする事はあっても、映像としては1テイクしかないんですよ。実写の場合は、2キャメあれば、2つ素材が存在するんで、その編集の時にいじれるというのも実写の魅力ですね。編集したときに初めて全体像が見えてくる。アニメの場合は、絵コンテを描いた時に全体像が見えちゃうんですよ」

武田「俳優を動かすということは、どうですか?」

庵野「俳優は動かというよりも、俳優が動いてくれるのが嬉しいですね。アニメの場合は、自分で動かさないと動いてくれないんですよ。アニメーターが動かしてくれるんですけれど、それも自分が描いた絵コンテに無いイメージで描いてくれるという人は殆ど限られていて、実写の場合は、絵コンテを描いても無駄っていうことが多いですね。絵コンテ通りにはいかないので、そこがいいですね。自分の思い通りにならなくて"うわー、なんでそんな事をしてくれるんだ。やめてくれー!"というところが面白いところですね」

画面は変わって、映画「キューティーハニー」の1シーン。
敵のセリフ「貴様っ! 何やつ?」
高台に立ち、腰に手を当て高笑いをするシルエット。
「教えてやろうか、パンサークロウ! ある時は疾走するバイクレーサー。またある時は木更津の婦人警官。パンサークロウの手下。そして如月博士の身代わり。しかしその実態は、愛の戦士キューティーハニーさ!」

映画の撮影風景が映し出されます。

ナレーション「庵野監督の最新作"キューティーハニー"。原作は永井豪の人気漫画。テレビアニメでも一世風靡した作品の実写版です。キューティーハニーは、アクションとお色気満載の娯楽作品。実写映画とは云いながら、アニメーションや合成技術を多様。庵野監督ならではの仕上がりとなりました」

再び、スタジオへ。

本上「最新作"キューティーハニー"のお話しを伺いたいと思います・・・」

今日はここまで。

実写とアニメは、絵と音で表現する事では同じでも、創作過程に違いがあるんですね。
自分が予測出来ないことが起きるのが実写。
それすらもプラスの方向へ考えて楽しめてしまう監督は素敵ですね。

それでは、また次回へ。

Posted by kanzaki at 2004年05月24日 12:00