2004年05月25日

庵野秀明 in トップランナー【8】

前回の続き。

ナレーション「庵野監督の最新作"キューティーハニー"。原作は永井豪の人気漫画。テレビアニメでも一世風靡した作品の実写版です。キューティーハニーは、アクションとお色気満載の娯楽作品。実写映画とは云いながら、アニメーションや合成技術を多様。庵野監督ならではの仕上がりとなりました」

再び、スタジオへ。

本上「最新作"キューティーハニー"のお話しを伺いたいと思います。あのう、これまでの庵野さんの作品は、割りとこう・・・内(うち)に向かっていくようなタイプの主人公だったり、また、そういう事を考えさせられるようなお話しが多いなって、私は思っていたんですけれど・・・。今回は娯楽に徹しているというか、凄く解き放たれた、華やかで面白い"バー!"って突っ走る感覚が、とてもスピード感があって面白くて、全然違う人が創った映画に思えちゃったぐらいに楽しめたのですが・・・」

庵野「ありがとうございます。これは全然・・・僕の中ではあまり変わってないんですけれど、とにかく芸風を変えた感じですね。自分の中の明るい部分というものを前面に出してですね・・・」

本上「どうして、キューティーハニーって云うものを映画化しよう、実写にしようと思われたのですか?」

庵野「とにかく単純で面白いものをやりたかったんです。それで、アクションものもやりたかったんですよ。キューティーハニーの話しが出た時に、これは丁度いいって。この話しに乗って、それからですね。・・・現場で一番大事にしていたのは"心意気"みたいなものですね」

本上「心意気?」

庵野「ええ。お客さんに見せたいのは、"現場の心意気"ですね。勢いみたいなもの。そういうものをフィルムに定着させてみたい」

本上「それはスタッフだったり、キャストだったり・・・」

庵野「ええ、そして僕自身だったり。"この心意気を見よ!" って云うのが出ないかなあ・・・フィルムの中に。お客さんにもそれが伝われば、良い気持ちになって映画館を出られると思うんです。そこに拘りました。お客さんが映画館を出る時に、辛気臭い顔をしなくて、ニコニコとか良い顔をして出て欲しかったんですね。それはもう、最初から拘っています。これだけは何とかやりたい・・・そういう映画にしたいですね」

ナレーション「原作にはないキャラクターも登場する庵野版キューティーハニー。キャラクターデザインには、妻でもある漫画家の安野モヨコさんも参加しています」

画面には、安野さんの描いたキャラクター設定集がたくさん映し出されています。
その後、ご自身がインタービューに答えます。
とても綺麗な方ですよ。
私には、宇多田ヒカルさんにお姉さんがいたら、こんな感じなんじゃないかと思いました。
声質も似ているし(でも、冷静で静かな話し方です)。

ここで彼女のプロフィールを。
1971年3月26日東京都生まれ。
1989年「まったくイカしたやつらだぜ!」でデビュー。
94年「超感電少女モナ」発表。
95年「ハッピー・マニア」連載。
97年には一気に6冊の単行本を出版。
98年「ハッピー・マニア」がフジテレビ系でドラマ化。
同年、「花とみつばち」連載開始。
近年ではエッセイ活動も盛んに行い、「美人画報」、「日記書いてる場合じゃねえよ」等を出版。
エッセイマンガ『監督不行届』には、結婚してからの日常が綴られている。

安野「やっぱりもの凄く何回もダメ出しが出て、とっても厳しかったです(笑)。女の子のここ(額)に、チョーカーじゃないんですけれども、細い組ひものイメージで帯締めに使うような紐をここ(額)に使って、ここ(中央)にダイヤがはまったデザインにしているんですけれど・・・」

敵キャラの「スカーレット・クロー」のデザインについて語っています。
そのデザインは、昔の日本の吉原にいた女中っぽい感じに、私には見えます。

安野「その紐を太くしろって凄く云われて、私はこれは太くしたら絶対に可愛くなくて、ちょっとお相撲さんみたいな(髪型は確かに、力士のそれに似ている)、ごっついイメージの感じになってしまう・・・。他のデザインは、割と戦闘的なデザインなので、ここは可愛くしたいなってのがあって、かなりここで、私はモノを投げて(笑)、これじゃなきゃ変だよ! って、結構云い合いしていました」

その後、「クリエイター庵野秀明とは?」と云う質問に答えます。

安野「ギリギリまでは妥協しない人だなと。ただそれを最後まで押し通す訳でもなくて(笑)、その時その時の一番良い選択をしようとすると云う意味では、凄くプロだなあと思いましたけれど。はい」

今日はここまで。

「心意気」・・・良い言葉ですね。
私は庵野監督というのは、「天才」であって、「職人」ではないと思っていたんですよ。今まで。
けれど、ここまで聞いてきて、実は彼こそが「職人」だと云うことに気づかされました。
お客さんに笑顔になってもらう為に、全精力を注ぎ込んで作品を創りあげる。
まさに、職人です。
天才気質のオナニー作家とは違うんですね。
奥さんの「その時その時の一番良い選択をしようとする」云々を聞いて、バランス感覚に優れていて、決して我を押し通すだけの神経質な人でもないことが分かりました。
一つの作品には多くの人の手が加わる訳で、それを指揮統制すると云うのは、非常に大変なことです。
話し口調は、ひょうひょうとした感じにもとれますが、彼の頭の中では「どうやってこの場をまとめていこうか」と云う戦略が、常に練られているようにも思いました。

いよいよ次がラストです。
庵野監督のこれからの展望をお聞きします。

それではまた、次回へ。

Posted by kanzaki at 2004年05月25日 07:00