2004年06月11日

布袋寅泰 in トップランナー【4】

前回の続き

布袋
「逆に、これが俺の運命だと思ったのは、やっぱ、氷室京介さんと・・・。
まあ、田舎が一緒だったんですけれど。
東京に出てもう一度逢ってバンドを組んだ時、
"ああ、俺はギターリストなんだ"
って云うのは、その辺からかなあ、どっちかっていうと。
彼は僕らが群馬にいた時から、とにかく最強のボーカリストで、例えば、どんなコンテストに出ても、総なめですよ。
歌が巧くって。
非常にこう皆さんが思うとおりの、シャープな、ナイフな男で、僕なんかおっかなくて、近寄りがたかったんだけれど、そんな彼からある日、電話が掛かってきて、バンドやんないかって。
そこで俺は、殴られるのかなあと思って、おずおずと六本木に出て行ったんだけれど、一緒にやろうってことになって、そっから人生が、ガーン!って変わりましたよねえ」

ナレーター
「80年代最強のロックバンド"BOOWY"。
結成時(1981年は"暴威"として結成。1982年に"BOOWY"としてデビュー)は6人でしたが、2人が脱退。
氷室京介(VOCAL)、布袋寅泰(GUITAR)、松井常松(BASS)、高橋まこと(DRUMS)、この4人となって伝説がはじまりました」

武田
「82年には、メジャーデビューなんですけれど、急にバンド一本で可能な生活になったんですか?」

布袋
「とんでもない、とんでもない。
BOOWYって、6,7年やっていたと思うんですけれど、食えていたのは最後の2年ぐらいでしょうね。
その前はとんでもない。
月に1万円もらえたらいいかなって感じでしたね。
でも、金なんていらなかったから、逆に云うと。
あんまり、そういった欲は無かったね。
俺達が最高のバンドなんだって云うことをとにかく全国に知ってもらうって云うのが、俺達の一番の欲だったし・・・。
やっぱ最初は、ライブハウスも客がまばらでしたから、このライブハウスを満杯にする事が、僕達の一番の目標だったし、ライブの事しか考えてなかったから。
ライブで忙しかったしね、実際。
金あっても使う暇が無かったし。
僕は、アヴァンギャルドなものが好きだったけれど、それでこう、地下を掘って皆で集まって誰も聞こえ無いのに、オーイって云うのはかっこ悪いと思っていたし。
かと云って、あまりメインストリームなものと云うのも、何だかアイドルみたいで、僕らの趣味で無かったと云うか・・・その中間の誰もやってなかったものをやりたいなあと云うのがあって。
その頃は、誰も髪を立ててなかったし、化粧もしてなかったし、ああいう音楽をやってなかったですよね。
あの頃の同期の"アナーキー"や"ルースターズ"は、ちょっと骨太で男っぽくて、メロディーと云うよりリフね。エネルギーって感じ。
逆に氷室さんの歌っていうのは、やっぱりメロディーだと思うし、彼と歌うのは気持ち良かったですね。
はじめは、サックスとギターがもう一人いたんですけれど、4人編成になっていくと、一人一人のスタイルが際立つんですよね。
松井常松は不動のベースで、8しか刻まないんだけれど、ああいうベースはいなかったし。
まこっちゃんみたいなシンプルなドラムもいなかったし。
僕みたいなギターもいなかったし。
結局、その4元素が混ざり合って、あのバンドになったとしか云えないねえ」

ナレーター
「ライブを重ねながら、人気を集めていったBOOWY。
次第に、チャートの上位に名を連ねるようになりました。
86年には、初の武道館コンサート。
5枚目のアルバム"BEAT EMOTION"は、100万枚を売り上げます。
しかし、名実ともにナンバーワンでしたが、87年12月24日、渋谷公会堂でのライブ中、突然の解散宣言」

その当時のライブ映像が流れ、氷室さんがマイクを持って語っています。

氷室
「一人一人、これから、やっていこうと思います。
誰が何と云おうと、日本で一番かっこいいバンドだったと思います」

再び、トップランナーのセットへ。

布袋
「BOOWYと云うバンドは、最終的には非常にポピュラリティを得て、メロディーとアンサンブルと云うバンドとして評価されたから、その栄光はずっと残っているかもしれないけれど、実際は、僕とヒムロックが一緒にやること自体が凄い実験的だったことだし、何か変なバンドを作りたいねっていう気持ちはずっとあったよね。
ただ、オーディエンスと共に、どんどん自分達のビートが増幅されていくにしたがって、僕達だけのものじゃなくなったような気もするし、100万枚とか売れるようになると当たり前にロック好きじゃない子も入ってくるよね。
それが俺は、ミュージシャンとしてこう居心地悪くなってきちゃってさ。
誰も俺のギターなんて聴いてないじゃんみたいな。
なんか、キューキャー云っているだけじゃんみたいなさ。
本当、アイドルみたいな時期もあったから、新幹線の裏口から出てどこどこへ行くみたいな、なんかそういうの好きじゃないんだよなあって思い始めて・・・。
なんかそこから、ギクシャクし始めましたよね」

本上
「メンバー全員が、そういう違和感を感じだした?」

布袋
「それだけじゃないけれど、それぞれが何となく自分自身に対してそうかもしれないし、バンドに対しても、すべてに対して、ビートルズがそうであったように、なんか違和感みたいなものは感じ始めたよね、後期になっていくと。巧くいけばいくほど。
ひょっとしたら男の子って、巧くいってなかったり、恋愛もそうかもしんないし、仕事もそうかもしんない。
なんか、やることなすことO.Kになっちゃうと、味気なくなっちゃうのかもしんないね。
それを人に壊されるよりは、自分で壊した方が、スジなような気もするし。
解散した後、解散の理由とか聞かれますけれど、それはこう、僕には僕の理由があるし、氷室さんには氷室さんの理由があるし、まっちゃんはまっちゃんの・・・逆に云ったら、なんで解散したのか覚えてないようなとこもあるし、一言で云々言えることではないですけれどね。
今、こうやって喋れるのも、時を経て、また今も自分のスタイルがあり、思い出になったんだと云う気がしますね。やっと」

武田
「布袋さんにとって、BOOWYって、どういう存在だったんでしょう」

布袋
「それが云えればなあ・・・でも、やっぱこう、BOOWYを思い浮かべた時、ほかのメンバーには申し訳ないけれど、やっぱり、ヒムロックの事を思い浮かべるんで、やっぱり最高の恋人だよねえ。
恋人と別れることだってあるじゃん。
永遠にその恋人と一緒にいられるって、誰も知らないじゃん。恋をするとき。
やっぱ、永遠の恋人っていう言葉が正しいかなあ。
それを支えてくれたメンバーがいて、ヤンチャ出来て、やっぱり僕の原点だし、でももう僕の敵ではないね。
今まではあれを乗り越えようって云うのがどこかにあったけれど、今は敵ではないしって云うのはあるなあ」

今日はここまで。
今回は、布袋さんの原点、BOOWYの起点と終点について語っていましたね。
伝説になってしまい、その当時の事が、まるで他人事のようになってしまった感があったんでしょうね。
けれどようやく、他人様に預けてしまっていた思い出を自分の懐へ迎えることが出来たって云うのかなあ、こういうのを。
そういう感触って、誰の心の中にも、一つぐらいはあると思います。
人が褒めたり、尊敬してくれたりした事に限って、なんだか他人事のようになるこの気持ち。
人は結果しか見てないですからね。
逆に本人は、その過程を嫌っていうぐらい見ている。
結果なんて、後から付いてきたものですからね。
賞賛は、あくまで他人の感情。
自分の心から生まれたものじゃない。
他人の目、他人の心・・・そこには、自分の心が入り込む余地なんてない。
その人たちは、自分の"イメージ"、"幻想"を見ているのだから。
だから他人事のように感じるし、違和感を生み出すんでしょうね。
それを拒絶したくなるから、解散というベクトルへ向かうんでしょうね。

他人の評価を重視し過ぎると、自分の本当の心の入り込む余地がなくなってしまいます。
自分の人生です。
他人じゃなく、自分で自分を褒めてあげたくなる生き方を歩み続けたいです。

この続きは、また次回へ。

Posted by kanzaki at 2004年06月11日 22:52 | トラックバック (0)
コメント

私も先日‘布袋寅泰完全版‘の放送を見ました。10何年も布袋さんのバンド時代の音楽を繰り返し聴いて育ったきたので、ある意味音楽を今まで楽しんでこれたのも彼のお陰だと思います。私にとっては音楽生活での生みの親です。そういう深い思いがあるからこそ、この前の放送は非常に貴重な内容でした。
ここでコメントをしたいと思ったのも、神崎さんのジーンと心に深く刻まれるコメントに心を打たれたからです。短いのですが、非常に心強い言葉だと感じました。
他人の評価を気にしすぎると、自分の心の余地をなくし、自分を見失ってしまうっていうのは、つくづく感じる今日この頃です。他人じゃなく自分を褒めれるように生き続けていければ、それは何よりの幸せだと思います。
神崎さんの言葉、非常に感謝しています。

Posted by: ソメハ at 2004年08月29日 05:15

ソメハさん、お褒めの言葉をいただきまして、ありがとうございました。
自分の人生って何なんだろうと自問自答していた際、ちょうど布袋さん出演の番組を見て、何かしら触発されるものがあり、自分の考えを文章に出来ました。
こうやって、いろんな人の考えを聞き、それを自分に置き換えてみると、思いもよらぬ発見がありますよ。

お互い、「ああ、良かったなあ」と笑顔で振り返られるような、素敵な人生を過ごしていきましょうね。

Posted by: 神崎 at 2004年08月29日 07:34
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