2005年02月25日

日本からPDA「CLIE(クリエ)」が消えた日

二日空いてしまいました。ごめんなさい(何故かはまた後日にでも)。

ソニーが、PDA「CLIE(クリエ)」の新機種投入を終了することが明かになりました。
現行機種の生産は7月まで行なわれるそうです。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0222/sony.htm

この数日間、あえてこのニュースについて神ナナで触れず、周りの反応をうかがっていました。
結論としては、「殆ど無反応」でした。
自分の周りでPalm・・・と云うかPDAを利用している人が皆無だからです。
このニュースの事を話しても、「ふーん」と関心がありません。
そりゃそうですよね、自分が使っている機械じゃないんだから。
これが、「ドコモ、携帯電話の新機種投入を終了」と云うニュースだったとしたら、メディアで大々的にとりあげられ、周りの人々も議論しあった事でしょう。

また、ネット上でも、さして騒がれていない気がします。
本気で利用している人達でも反応が少ないのは、ユーザーの絶対数の少なさ、そして海外製のPalm製品をメインに使用しているからではないでしょうか。
セカンドマシンとしてクリエを所有していて、「日本で発売されなきゃされないで、まあ何とかなるかな」と云う考えがあるからではないでしょうか。
ヘビーユーザーな方は、日本でのPDA普及に歯止めが掛かる事には危惧されていますが、自分自身は何とかなりますものね。
英語版Palmを日本語で使う方法を解説して、多くの方々にPalmを使ってもらおうと頑張っている方々もいます。
こういう草の根的活動って凄いなあと思います。

クリエをメインで利用している人の多くが「エンターテイメントマシン」として購入されたのではないでしょうか。
つまり、PIM系の機能の利用頻度が少ない。
エンターテイメント系の機能は、何もクリエを使用しなくったって、多機能携帯電話、ないしはPSPで代用できますからね。
PIM系機能の利用頻度が高く、更にクリエだけを利用している人の数って、国内では恐らく少ないと思います(最初はPIM系機能を利用しようと思ったけれど、挫折してホコリが被っている人も多いはず)。

紙の手帳と云うのは、日本人の多くが使用しています。
紙と機械と云うデパイスの違いはあれど、利用内容は同じはず。
けれどPDAは、紙の手帳にとって代わる事はできなかった。
そこまでの魅力を生み出しきれなかったんでしょうね。
それにPDAって、正直、値段が高いように思います。
激安パソコンと同じぐらいの価格があります。
多機能携帯電話だって、発売から半年もすれば、かなり安価で購入できます。
それに対してPDAは、あまり価格が下がりませんね。

今、日本で販売している携帯電話には、Palmにとって代わるような、まともなPIM機能がありません。
ノートパソコンだったら、アウトルック等を使えばスケジュール管理等は安心。
しかし、モバイルする事を考えますと、大きい・重い・値段が高い・スタンバイを使えば瞬時にOSが起動できるけれどバッテリーの消耗が不安等、PDAに慣れた人には不満。
携帯電話でもノートパソコンでも、まともなPIM機能が使えるようになったとしても、一番の問題は「データのバックアップはどうすんのよ?」と云う事です。
PDA・・・特にPalm OS系のPDAの最大のメリットは、パソコンと簡単に同期が出来て、PDAの中に入っているデータをパソコンで全てバックアップできることです。
外出中にPDAを落として壊してしまったとしても、自宅にデータのバックアップがあれば、新しいPDAへ簡単にデータを移行する事が出来ます。
予定管理等のPIM系データと云うのは、真面目に使っていれば、毎日どんどんデータが膨らんできます。
紙の手帳に対しての大きなアドバンテージは、「検索」が出来ること。
日々の積み重ねが、その使用者にとって大切なデータベースとなるのです。
PDAは精密機械ですから、毎日使っていると、落としたり傷つけたりしてデータが吹っ飛ぶ確率が高いです。
積み重ねたデータを日々、簡単にバックアップできなければ、機械でスケジュール管理なんて出来ませんよ。
そういう意味では、Palmは便利で良かったです。

電気屋へ行くと、PDAの陳列は隅に追いやられているのが現状です。
ここ最近で一番ヒットしたクリエTH55ですら入手困難。
特に辞書機能を搭載してパワーアップしたTH55DKなんて、殆ど見た事がありません。
後はシャープのザウルスとか、東芝のポケットPCがちょっとあるぐらい。
スタイラスや液晶保護シート、ケースのような周辺アイテムなんかも、探すのが大変です。
やはり需要が少ないんですね、PDAって。

クリエが世に生を受けてから4年。
しかし、たった4年でこれだけの製品が出たんです。

過去に発売されたクリエの一覧
http://www.sony.jp/CLIE/products/index_02.html

これに現在生産されている「VZ90」「TH55&TH55DK」を加えると、物凄い数ですね。
クリエは、Palmの中では異端児的なポジションだったのに、いつの間にやら、スタンダードからハイスペックまでを網羅する、「日本のPDAは全て任せろ!」みたいになりました。
そこが生産中止にしたのですから、やはり日本はPDAが生き長らえる市場ではなかったのですね。

ソニーはクリエは造らないけれど、PDAからの撤退は否定しています。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NCC/NEWS/20050222/156489/
『ただしソニーは「CLIEブランドは終了するが,PDA市場から撤退するわけではない」(ソニー広報)とした。
今後は,ワイヤレス通信機能を内蔵した新しいPDAをリリースする予定だ。
携帯ゲーム機「PSP」にPDA機能を追加したり,携帯電話機にPDA機能を内蔵するなどの展開が考えられるが,具体的な製品化については「現時点では商品イメージはコメントできない」(ソニー広報)とするにとどまった。』

日本にスマートフォンが誕生するのか、付加価値の付いたPSPとなって生まれ変わるのかは不明です。
ひょっとしたら、こういうアナウンスをするだけで、しばしの間、他社のPDAへ目を行かせない為のけん制とも考えられます。

『CLIE生産中止の理由としてソニーは,「エンターテイメント分野の市場が立ち上がらなかった」(広報)ことを挙げた。
現在,PDAはスケジューラや住所録など“手帳代わり”の用途での利用がほとんど。
ソニーが得意とする動画のビューアーなどとしての用途は普及まで至らなかった。』

・・・と云う事も話しているのですが、手帳代わりのどこが悪いんだろう?(前述したとおり、需要は少ないようだけれど)
クリエオーガナイザーと云う新たなものまで開発し、むしろ、手帳としての使い勝手を向上しようとしていましたよね?
エンターテイメントと力説する割には、PDA上での動画や音楽再生に関しての使い勝手はそれほど良いとは思えません。
特に、クリエで使うためにファイル変換をするパソコン用ソフトなんて、とても誉められたものじゃありません。

ソニーはクリエ以外にも、エンターテイメントソフト(音楽・動画)を再生できる似たようなものを幾つも発売してきました。
ソニーって自社内で似たような用途の製品を出しすぎていて、自社内で食いつぶしあってしまうんじゃないかと思う事もありました。
例えば、PSXとスゴ録。

Sony Digital Recorder ソニーデジタルレコーダー総合ホームページ
http://www.sony.jp/products/Consumer/digitalrecorder/lineup/index.html

いつのまにやらPSXは生産完了になっていました。
HDDレコーダーはスゴ録があるから良いのですけれどね。

電子手帳としてなら、クリエT650の時で既に完成の域に達していました。
一度完成してしまうと、次にリリースする際の目玉が無い。
そんな感じで遊び心を追加していったら、NZ90やVZ90みたいなものが出来たのでしょうね。

本田雅一の「週刊モバイル通信」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0329/mobile233.htm

上記のインタビューで、

『ではどのように変えるべきか? 1年前に出た結論は、“デジタル技術で手帳を作ること”でした。実は、クリエの事業を開始した当初から、現場のエンジニアからは、独自の使いやすいPIMを開発したいという声がありました。そこで、それまでの開発リソースをPIM開発に振り分け、独自PIM開発の封印を解いたのです。』

とあります。
これは、TH55に登載されたクリエオーガナイザーの事でしょう。
トップはどう思っているか分からないけれど、開発陣のなかには、ちゃんとクリエを電子手帳としての使い勝手にこだわった人達もいるのですよね。
そして、そのブラッシュアップがされない内に消えてしまうのは、非常に残念です。
まだ、クリオガには改良の余地が残っているせいで、普段、私は使っていないけれど、これが完成の域に達したとき、非常に魅力的なものになるよなあと期待していましたから。

PDA市場は冷え切っているけれど、電子辞書市場は好調です。
ソニーも発売しているのですが、中にはMP3音楽再生が出来るものがあります。

ソニー 電子辞書:EBR-500MS
http://www.sony.jp/products/Consumer/DD/EBR500MS/index.html

私はそれを知って「それってクリエの時と同じじゃん」と思いました。
後発故に、付加価値を付けなければいけないと考えたのかもしれませんが、もっと「王道」で勝負してもらいたいものです。

ソニー製品は型番で、大体その製品のポジションが分かりますよね。

3<5<7<9

3の付く製品は廉価製品。
9の付く製品はハイスペック製品。

そんな中、5の付く製品と云うのは、ソニーが自信を持って世に送り出した製品ですよね。
私が買ったクリエTH55は、正にその通りの製品でした。

このサイトのお勧め記事
http://kanzaki.sub.jp/archives/000278.html

上記に、私がクリエTH55を実際に使ったレポート記事のリンク集がありますのでご参照ください。
マルチメディア部分は中途半端な所もありますが、総合的にバランスの良いものでした。

ソニーがクリエを生産しなくなったからと云って、すぐに海外製Palm、ザウルス、ポケットPCへ移行する必要はありません。
少なくとも私はしません。
また、予備機を購入する気もありません。
私は同じようなものを複数持つのが好きじゃないし、PDAをコレクションしたりする考えも無いですから。
そもそもPDAのデータをパソコンで常にバックアップがとれているんだから、それがある意味、予備機みたいなものです。
今使用しているTH55が壊れてから考えます。
まだ当分は大丈夫でしょう。

その内、クリエで利用していた「予定」「アドレス」「ToDo」「メモ帳」のデータを完全に再利用できる「何か」が出てくるでしょう。
もし国内で発売されなければ、その時は仕方がありませんから海外製Palmを買います。

それまで私は、手に握ったこのTH55を大切に使いつづけようと思います。
クリエの意志を継ぐ「何か」が誕生するその日まで。

余談:
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BlogPet(ブログペット)と云うものでして、無料で誰でも自分のブログサイトで飼えます。
是非、お試しを。
”CLIE(クリエ)”は消えても、”くりえ”は生き続けます。

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Posted by kanzaki at 2005年02月25日 12:33 | トラックバック (0)