2006年08月16日

アンパンマンと戦争

アンパンマンと云うヒーローがいます。
私が小学生の時に読んでいた絵本が、今も販売されていると云うから驚きです。
また、「それいけ!アンパンマン」と云うタイトルでアニメも好評放映中。
仮面ライダーやウルトラマンのように、シリーズものとして何十年も放映されている事はあっても、同タイトル・同主人公でこれだけ続いているヒーローはそうそうありません。

このヒーローの最大の特徴は、お腹がすいた人に自分の頭を食べさせるという点です。
自分の身を削って他人を助け、悪と戦うヒーローは他に例がなく、そこがアンパンマンの人気の理由の1つとも云われています。

先ほどお風呂に入っていたら、原作者・やなせ たかしさんのインタビューがオンエアされていました。
1919年2月6日生まれですから、現在87歳と云う高齢にも関わらず精力的に活動し、今回のようにインタビューの機会があれば、その都度メッセージを我々に伝えています。
ラジオでその声を聴きましたが、若いこと若いこと。

今回、ラジオのインタビューを後半部分しか聴けませんでした(残念)
その時の内容によりますと、やなせさんは戦争当時、彼の所属する部隊は中国へ行ったそうです。
幸い、彼の部隊は拳銃で人を殺すような事はしませんでした。
国からは「中国の貧しい人々を救いに行け!」と云われていたそうです。
彼の部隊は、その指示を全うするため、現地の子供たちに紙芝居を見せてあげたりしていました。

しかし終戦後、日本は中国から非常に罵倒されました。
それを聞いた彼は、戦争とは見かた・立場によって自分達が正義にも悪にもなる事を知ったのです。

戦争中および終戦後、辛かった事は空腹でした。
あんぱんは、当時最も身近なお菓子でした。

そんな事から、アンパンマンと云うキャラクターが生まれたのです。
やはり作者の体験がベースになったキャラクターと云うのは、その根底に流れるものが強いなあと思うし、似たようなものを他人が作ろうとしても、所詮、劣化コピーにしかなりません。
私がもし、正義のヒーローを創造して製作しようとしても、まず、仮面ライダーやウルトラマンと云うベースを元に作ってしまうでしょうね。
見た目的なものから入ってしまうので、根底に流れるテーマは浅くなってしまうだろうなあ。

実際の戦争と云うのは、ヒーローがいないと思います。
みんなが怯えながらも、一生懸命生き抜くだけ。
成功者なんていなくて、みんな被害者。
被害の最たるものは原爆でしょうね。
これの怖いところは、被爆する際、何も分からない事です。
放射能は目に見えることなく、人間の身体に魔となって近寄ります。
そして、そういった直接的な攻撃だけでなく、被爆した事により、他人から「差別」と云う精神的に辛い被害を受けることもありました。
そして、被爆によって辛い生活を続けている人達はまだいるのです。
その人達にとって、まだ戦争は終わっていません。

食べ物を差し出し、みんなの笑顔を取り戻すヒーローは、実際に戦争を体験した人でしか考えられないでしょうね。
特にこれだけ飽食な時代では、なかなか思いつきません。

私も含め多くの人は、戦争と云うものは教科書等でしか知りません。
知識としてだけの戦争。
それ故、かっこいい部分だけに目が行き、その延長線上に特撮ヒーローやロボットモノがあるのだと思います。

もし、アンパンマンをテレビや絵本で見る機会がありましたら、以上のような事を思い出して見ていただければと思います。
そうすると、作者の思いが鮮烈に伝わってくるかもしれません。

Posted by kanzaki at 2006年08月16日 23:05