脳科学者の茂木健一郎さんは、「クオリア(感覚質)」を手がかりに、脳と心の研究をされています。
●茂木健一郎 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8C%82%E6%9C%A8%E5%81%A5%E4%B8%80%E9%83%8E
・blog 茂木健一郎 クオリア日記
http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/
茂木さんが雑誌「PHP 11月号」にて、「やさしさの回路」と云うタイトルの文章を書かれていました。
人間の脳にはもともと、他者にやさしくするという回路が組み込まれているそうです。
だから、人間が他人にやさしくすることは、とても自然な行為。
脳科学研究における最大のテーマの一つは「他人の気持ちが分かるとはどういうことなのか?」だそうです。
他者の気持ちをおもんぱかる行為は、人間特有のもの。
そういう特別な行為ができる脳だからこそ、やさしさという感情を生むことができるのです。
しかし人間は、必ずしも自分の感情をそのまま表に出すとは限りません。
心では怒っているのに、顔では笑っている。
本当はつまらないのに、楽しそうな表情をする。
つまり、ポーカーフェイス。
この行動が故に、相手の気持ちが分からないもどかしさに苛まれるのです。
しかし、ポーカーフェイスと云う壁があるからといって、まったく相手の気持ちを理解できないかというと、そうではありません。
完璧に分からなくても、相手と良好な関係を保つ程度に分かることは可能です。
目に見えない相手の気持ちを理解する方法は、「推理」しかありせん。
相手の気持ちを的確に推理するのに大切なのは、まずは経験の積み重ね。
相手の気持ちが分からなかった経験、自分の気持ちが分かってもらえなかった経験。
そういう積み重ねが推理力を高めます。
そしてもう一つは、「論理的な思考力」です。
友人がニコニコと笑っているとします。
けれど友人は先日、父親を亡くしたばかり。
心から笑っているはずはない。
このように、相手が置かれている状況などから推理すると云う論理的思考が、やさしさに結びつくのです。
以上から、他人の気持ちを理解するには、広い意味での知識が必要なのです。
多くの知識を吸収し、物事を深く考える。
そのことで脳が活性化され、やさしさの回路も活発になります。
『バカの壁』で有名な解剖学者・養老孟司さんの言葉を借りるならば、
「教養とは相手の心が分かることである」
だそうです。
●養老孟司 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A4%8A%E8%80%81%E5%AD%9F%E5%8F%B8
教養を身につけることがやさしさに繋がると云うのが面白いですね。
まるで、数学を究めていくと、国語の真髄が理解できると云っているように感じました。
よく、「空気を読め」と指摘される人がいますよね。
その場の雰囲気を察することが出来ず、見当違いな行動をしてしまう人。
その場に出来たルールを理解できないのが原因かと。
これも、推理力・・・教養レベルが影響するのでしょう。
正義のヒーロー仮面ライダーは、悪の組織によって改造人間にされました。
「改造人間の苦悩」という暗いテーマがあったからこそ、話しに深みが出せました。
辛い立場だからこそ見えてくる真実と云うものもある訳でして(=経験の積み重ね)、それ故に正義の為に戦う(=やさしさ)のは、上記の説明から云いますと自然な行為なのですね。
けれど悲しいことに、苦労・苦悩を経験することによって、「どうせ俺なんか・・・」等と、どこぞやのヤサグレ男のような台詞を吐いてドロップアウトしてしまう人もいます。
やさしさを相手に向けたけれど、相手が受け入れてくれなかった・・・等価値のものを貰えないと、そうなってしまう可能性があるんだろうね。
人は必ずしも、無償の愛で満足できる訳じゃありませんから。
やさしさと云うのは難しいね。
だから、教養が必要なのか。
幼い頃、物事を学ぶことの大切さを上記のように科学的に説明を受けていたら、数十年後の姿が大きく変わるでしょうね。
「勉強しろ!」と脅迫まがいな事を怒鳴り散らすより、上記のようなことを少しずつ、分かりやすく説明していけば、ドロップアウトする人の数も減ると思います。
昨今のいじめ問題を解決する糸口になるかもしれません。
何せ学校は元々、教養を身につける場所ですし、「やさしさは教養から生まれる」ことを説明しやすいと思います。
今まで、やさしくなりたいと常に思ってはいたものの、具体的にどうしたらよいか分かりませんでした。
抽象的で観念的すぎますから。
けれど、ようやく具体的な方法を知ることが出来ました。
私は改めて、教養を身につけたいと思いましたよ。
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