2007年01月11日

地方で生活するプロと云う道

プロと呼ばれる人達がいます。
プロとは専門家のこと。
広辞苑によりますと、「ある学問分野や事柄などを専門に研究・担当し、それに精通している人」だそうです。
そういう人達は、自分の職業や、そのための技能、専門的知識に強い自負心や探求心を持ち、社会的責任を自覚しているものです。
私はそれにプラスして、「憧れの対象となる人」も定義の一つに入れたい。
道を極めた人の背中には、ヒロイズムが感じられます。
何度も云うように、ヒーローはテレビの中にだけ存在している訳じゃありません。
むしろ、現実の世界にいるヒーローを抽象化して表現したものが、ウルトラマンや仮面ライダーなのではないかと。

地方にだってプロはいます。
地方の新聞(特に夕刊)には、地元で生活しているプロを紹介した記事をよく見かけます。
今回は、新潟に住んでいるプロをご紹介したいと思います。

まずは、ビリヤード女性プロの樋口静美さん(32歳)。
新潟県内でただ一人のビリヤード女性プロです。
2005年12月にJPBA(日本プロポケットビリヤード連盟)の認定試験に合格。
女性プロは全国に僅か65名しかいないそうです。
今年は全国大会でベスト8入りを目指してがんばっているそうです。

彼女は普段、新潟市古町通3のビリヤードバー「プールファクトリー」で働いています。
4月にはそこで、女性を対象にしたレッスンを始めるそうです。

「私を見てプロになりたいと思ってくれたらうれしいけれど、まずは自分が好成績を残したい」と語ります。
私が冒頭で書いたとおり、彼女もプロと云うものを「憧れの対象となる人」と自覚しています。


続きましてご紹介しますプロは、鉄道員です。
プロは何も、スポーツ選手のようなテレビで紹介される人達だけではありません。
野球選手がヒットやホームランを打たなくても、我々の生活に影響はありません(ファンならば、ヤケ酒を飲むでしょうが)。
しかし鉄道の場合、ミス一つが我々乗客の命を奪う事だってあるのです。

新潟市の中心部にあります「JR新潟駅」。
一日の平均利用者数は、本州日本海側で最多の7万5千人。
発着する列車の数は450本を超えます。
我々の旅路を見守り、列車の運行を日夜支えるプロにスポットをあててみましょう。

鉄道業界で「スジ屋」と呼ばれる人がいます。
列車を表す線(スジ)を引き、ダイヤを組む人のことです。
見開き新聞より更に一回り大きい方眼紙に500本以上引かれた斜線は、線区を走る全ての列車の運行情報を表しています。
それがダイヤグラム(ダイヤ)です。

JR東日本新潟支社のスジ屋、道下知晶さん(49歳)。
輸送司令室総括指令長として、管内を走る全ての列車の運行を指揮しています。
事故や悪天候によるダイヤの乱れをできるだけ早く、小さい影響で収束させるため、トラブル発生直後からペンを手にして、新たなスジを走らせます。

これだけコンピュータ化された世の中ですが、今でもこのアナログな方法が最も信頼できる方法なのです。
道下さんの左手には、17年間使い込んだ愛用の三角定規が握られています。
スジ屋専用の特製定規です。
目盛りはセンチでもミリでもなく、方眼紙の横軸と同じ一目盛り「二分」刻みです。
その目盛りも長年使い込んで、すっかり薄くなっています。

スジ屋として、ダイヤ改正にも携わっているそうです。
お客様に満足してもらえるように、最適な乗り継ぎ、停車時間を考え、スジを書いては消す試行錯誤を半年以上も行うそうです。
時が戦国ならば、今年の大河ドラマ「風林火山」の主人公である戦国一の軍師・山本 勘助とも知略戦を交えていたかもしれませんね。

ダイヤ改正の後、山間部の高校生から手紙をもらったそうです。
その手紙には、「通勤時間が短くなりました」と書かれており、スジ屋としての喜びがこみ上げて来たそうです。
その高校生にしてみれば、道下さんはヒーローなのです。

東京に夢を見、憧れて上京するのはいい。
けれど、本当にしたい事・自分がヒーローになれる場所が果たして東京なのかと云うと、必ずしもそうじゃない人の方が多いのです。

歌やドラマ、小説など、その地方ならではの特色が活かされたものが注目され、ヒットしています。
あえて具体的には書きませんが、すぐに幾つか思い出せるでしょ?
どうしても、関東首都圏を舞台にした歌や物語は、日本国民の平均的な考え方・美徳・美観によって創作され、今ひとつ印象が薄いのです。
既にそのような設定は、出し尽くした感がありますから。
しかし地方を舞台にすると、その土地の風土が反映され、それが詩やストーリーに独特なエッセンスを醸し出してくれます。
それ故、オリジナル色の強い作品が生まれやすいのです。

若いときは、地元の嫌な部分ばかりが目に付きます。
しかし時が経つにつれ、いつしか地元の良さが、じんわりと感じられてくるものです。

地元に根ざしたプロと云う道。
今、自分のいる場所をもう一度見回してください。
ひょっとしたら、あなたが否定していた場所にこそ、あなたがプロとして活躍できる舞台があるのかもしれませんよ。

Posted by kanzaki at 2007年01月11日 22:08