2007年03月31日

宮崎駿監督 in プロフェッショナル【1】

現代の日本を代表する映画監督と云っても過言ではない宮崎駿監督。
宮崎駿監督率いるスタジオジブリの新作が遂に発表されました。


スタジオジブリ 「いつものジブリ日誌」より
●スタジオジブリ次回作「崖の上のポニョ」が発表になりました。
http://www.ghibli.jp/10info/003652.html#more
スタジオジブリおよび配給元の東宝(株)は、スタジオジブリが現在制作している作品ののタイトルが、「崖の上のポニョ」であることを発表いたしました。

YOMIURIONLINE ジブリをいっぱいより
・宮崎駿監督の新作「崖の上のポニョ」来夏公開
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/ghibli/cnt_eventnews_20070320a.htm

ZAKZAKより
・宮崎駿監督、手描き新作で「息子には負けない!!」
4年ぶりメガホン「崖の上のポニョ」
http://www.zakzak.co.jp/gei/2007_03/g2007032001.html


公開はまだ来年の夏ですが、その製作過程を追ったドキュメンタリー番組が先日、NHKで放送されました。
今回から何回かに渡って(不定期ですが)、その番組をご紹介しながら、なかなか普段は見られない監督の創作方法、日常生活に迫ってみたいと思います。

では、どうぞ。


*注釈:
「宮崎駿」の正しい漢字表記は、「宮駿」です。
一部の日本語環境で表示できない文字があるため、代用文字を用いています。
NHKの番組中でも、「宮崎駿」となっていました。


*2007年3月27日放送、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」より


テロップ:
巨人、動く

3月8日。
その日のアニメスタジオの現場が映し出される。
大勢のスタッフ達が黙々と机の上で、原画等の作成をしている。

ナレーション:
そのアニメスタジオは、張り詰めた空気に包まれていた。
アニメーターが描くのは、謎めいたキャラクター。
一本の新作映画が動き出していた。
部屋の隅には、白髪の監督。

宮崎駿監督だ。
白髪、白い髭、黒ブチのメガネ。
緑色のエプロンをしている。
左足を正座をするように曲げて椅子の上に座る。
机の上には、複数の原画。
それを左手で、パラパラ漫画のようにめくって絵を動かす。
顔をピクリとも動かさずに見つめる。

宮崎駿監督:
なんで、ふぬけになってんだろうね。

ナレーション:
鋭い眼光で絵を睨む。

椅子に座っている宮崎駿監督の周りにスタッフが数名集まり、打ち合わせをしている。

ナレーション:
映画監督、宮崎駿(みやざき はやお)、66歳。
その映画は、見るものの心をとらえて離さない。
今再び、新しい世界に挑もうとしている。

アトリエの一室。
机の前で椅子に座り、何か映画関係の資料(案?)をビリビリとやぶる。

宮崎駿監督:
あー、映画作りに入っちゃった。

そう云って、左手を顔に当てて笑顔をもらす。


********************


場面は、NHKの「プロフェッショナル」スタジオへ。

脳科学者・茂木健一郎:
茂木健一郎です。

住吉美紀:
住吉美紀です。
「プロフェッショナル仕事の流儀」
今日から火曜夜10時のスタートとなりました。
今夜は映画監督の宮崎駿さん。
「ハウルの動く城」以来の長編映画に挑む姿を1時間のスペシャルでお伝えいたします。

茂木健一郎:
宮崎監督と云えばね、カメラ嫌いで知られているのですが、今回はなんとディレクターが、この小型カメラを片手に3か月半(100日)も密着取材をしたんですよね。

茂木、小型のビデオカメラを取り出して構える。

住吉美紀:
この小さなカメラが正に新しい映画の生まれる瞬間を記録しました。

テロップ:
プロフェッショナル 仕事の流儀
file:045
special edition


********************


テロップ:
2006年春

ナレーション:
新作映画の準備作業は去年の春、はじまった。
その発想の現場に、はじめてカメラが入った。

宮崎監督のアトリエの中。
昭和時代の洋館のような建物(作り自体は新しく、最新設備が揃っているようだ)。
綺麗にされていており、壁の白さと相まって清潔感がある。
宮崎監督ともう一人が、その建物の階段をのぼり、木製の机を運んでいる。
2階の広い部屋の隅に机が置かれる。
その上に緑色のデスクマットを敷き、照明器具を固定する。
宮崎監督、椅子に座り、照明器具の灯りの位置を調整する。

宮崎駿監督:
新入社員の気持ちで・・・(服の襟を触りながら笑顔)

ナレーション:
カメラが見つめたものは、ありのままの宮崎駿。

宮崎駿監督、窓辺に立つ。

宮崎駿監督:
俺は途方に暮れていますよ、今。

ナレーション:
老いと云う現実。

宮崎駿監督:
(作業を止めてメガネを外し、両手で顔を拭く仕草)自分が若くなるわけじゃないからさ。
限界はね、毎日ひたひたと感じていますよ。

ナレーション:
一人、海に向かった。

電車に乗って移動する監督。
一人、港の先でたたずむ。

宮崎駿監督:
(まくしたてるように)一番人間が孤独でいる時に声をかける必要は全然ないんだよ!

ナレーション:
そしてカメラは、映画が生まれる瞬間に立ち会った。

宮崎監督、机の上で一枚のイメージ映像を描いている。
沢山の巨大な魚(?)の群れが、嵐の時のような波のように向かってくる絵。
その一匹の魚(?)の上に、映画「崖の上のポニョ」の主人公が立っている。

宮崎駿監督:
これが映画の最初の1枚なんです。
だから、やっと本質の絵が描けたんですよ(満足そうな笑顔)。

外で、宮崎監督が小さな女の子と立っている。
宮崎監督が手をあげて「またね」と云うと、女の子は「ハウル、作ってありがとう」と可愛くちょこんとお辞儀をする。
監督は「どういたしまして」と返事をする。

イメージ映像を描いていた部屋。
三人がけ程度のソファに横になり、毛布をかけて書類を読む。

テロップ:
featuring today
映画を創る
宮崎駿 創作の秘密


********************


ナレーション:
狭い路地を入った小館の中に、映画監督 宮崎駿のアトリエはある。

道の向こうからアトリエに向かって銀色の古めかしい外車が、これまた古めかしいエンジン音を申し訳なさそうな感じに鳴らし、ゆっくりと走ってくる。
宮崎監督の車だ。
アトリエの周辺は木々に囲まれ、風と鳥のさえずりだけが聞こえる閑静な住宅街。
建物は濃い褐色系の色をしている。
新しいようだが、どことなく昔の洋画に出てきそうなレトロな雰囲気も漂わせている。
アトリエの前に車を停車させる。

ナレーション:
撮影は去年の春、このアトリエで始まった。

宮崎監督、左ハンドルの運転席から服と小荷物を持って出てくる。

ディレクター:
おはようございます。

宮崎監督、軽く挨拶を返すと建物の中へ。
白い壁の綺麗な内装。

ナレーション:
午前10時。宮崎の朝は、不思議な挨拶ではじまる。

宮崎監督、建物の中を進み、奥の扉を更に開けて入る。

宮崎駿監督:
(淡々と誰もいない部屋の中へ向かって)おはようございます。

ナレーション:
建物の中に、他に人はいない。
照明をつけず、クローゼットの中のハンガーにジャケットを掛けて片付ける。

ディレクター:
すみません。今は誰に・・・?

宮崎駿監督:
うちの人に・・・。

ディレクター:
うちの人?

宮崎駿監督:
(奥の部屋から戻りながら)いるんですよ。
(窓を開けながら)誰だか分かんないけどいるんです。

窓は、上の部分を軸にして、下の部分が外へ向かって斜めに開くタイプ。
ハンドルをクルクルと回すと、少しずつ開いていく。

映画「もののけ姫」のワンシーン。
沢山の「こだま」が、顔をカラカラと鳴らしている映像を画面に映す。

宮崎監督、カーテンを動かして、外の明かりを部屋へ呼び込む。
部屋は天井が高く、普通の二階建ての高さぐらいある。
カーテンも同様に縦に長い。
上の方にあるガラス窓から入り込む光が眩しい。
宮崎監督、早足で各窓へ移動してカーテンと窓を開ける。

ナレーション:
「ハウルの動く城」から2年。
宮崎は、このアトリエで一人、次回作の構想を練ってきたという。
撮影は、ディレクターが一人で来るのを条件に許された。

宮崎監督、片手で背中をさすりながら階段をおりていく。

ナレーション:
取材がはじまった4月、宮崎の一日は、同じことの繰り返しだった。

宮崎監督、キッチンでコーヒーをいれる作業。
コーヒーカップが二つ(植物が描かれたもの、トトロが描かれたもの)。
植物柄のコーヒーカップの上に、白いコーヒードリッパーを置く。
コーヒー豆を挽いた粉の入ったガラスのピンをひっくり返し、コーヒードリッパーへ豆を入れる(残り僅かだったので、これで粉が無くなった)。
そして、銀色のヤカンに入ったお湯を注ぐ。

ナレーション:
朝はまず、一杯のコーヒーをいれる。

場面はアトリエの前。
宮崎監督と女性スタッフ、木製のベンチをそこへ運んでくる。
植物が植えられている場所と、道路の間にそれを置く。
そして、タバコの灰皿代わりに、緑色のペンキで塗られた背の高い缶も置く。

ナレーション:
スタッフと共に木のベンチを運び出し、アトリエの前に置く。

宮崎監督、道路の方へ進んで振り返り、そのベンチを見つめる。

宮崎駿監督:
あっ、ワナに見える(笑)

木製ベンチの背もたれの端に、「どなたもどうぞ」と手書きされた木の板をくくりつける。

場面はアトリエの2階の部屋。
宮崎監督、大きなガラス窓から、先ほどの木製ベンチを見下ろす。

宮崎駿監督:
ダメだなあ、おばあちゃん。
来ないなあ、おばあちゃん。
・・・こんなことしてらんない、仕事しなきゃ(笑)

タバコを口にくわえ、ゆっくりと机の前へ進む。
机の上には、絵の具でカラフルに描かれた一枚の絵が置いてある。
それは、小さな船の絵。
漫画のように吹き出しがあり、言葉が書かれている。

宮崎駿監督:
全然、絵になってないね、まだ・・・。

ナレーション:
そして、机に向かって絵を描く。
しかし、新作映画のものではない。
惚れ込んだ、イギリスの児童文学を紹介する漫画だ。

宮崎監督、筆で原稿に色を置いていく。
黒ブチのメガネを額にまで上げて、裸眼で見ている。

彩色された漫画の原稿には、昔の戦闘機が滑空している姿が描かれている。
雲の上空、一機のプロペラ戦闘機が、もう一機を追いかけている。
「見えた!! ウエリントンだ」の手書き台詞あり。

宮崎駿監督:
道楽なんだよ、これ。俺の。
仕事じゃないんですよ。

そう云って、目を優しいそうに細める。


********************

ナレーション:
時折、思いついたように、別のことをしはじめる。

アトリエの一階。
宮崎監督の手には、小型のデジタルビデオカメラがある。
隣にいる女性スタッフが、操作方法を教えている。

宮崎駿監督:
(女性スタッフに向かって)撮りたい時には、これを押して撮影にすればいいのね。

女性スタッフ:
そうそう、そそそ・・・。

場面は、アトリエの駐車場。
宮崎監督、先ほど操作方法を教えてもらったビデオカメラを片手に、セダンタイプの自動車(外車、左ハンドル)の後部ドアを開けてシートに座る。

女性スタッフ:
えっ、もう車に付けちゃうの?

ナレーション:
この日は、小型ビデオカメラを車に持ち込んだ。

宮崎監督、助手席側シートのヘッド部分に、そのビデオカメラを固定する。

宮崎駿監督:
俺は普段、自分が知らないで、どういう風景を見て歩いているんだろうってのをちょっと確認してみたいだけなんです。

宮崎監督自らが運転している。
画面は、そのビデオカメラで撮影した風景が映し出される。
車が近所の小道をまっすぐに進んでいるのが分かる。

宮崎駿監督:
この何でもない風景が、僕らの風景なんだけど・・・何でもない風景に少し、面白いと云う関心を呼び起こそうと思ってね。

アトリエへ戻り、車を降りた宮崎監督と女性スタッフ。
宮崎監督、カメラを手にして楽しそうにアトリエのドアを開ける。

宮崎駿監督:
ワクワクするなあ。

宮崎監督、アトリエに入ってからビデオカメラの液晶画面で、先ほど撮影した映像を再生して見ている。

宮崎駿監督:
もうちょっと下を撮れればいいのにね。
空ばっかり入るね。

女性スタッフ、それに頷く。

ナレーション:
また、撮り直しに行った。

宮崎監督、先ほどと同じように車へ乗り込み、ビデオカメラを車内に固定する。
女性スタッフに手伝ってもらいながら作業をしつつ、以下のように語る。

宮崎駿監督:
仕事に直接関係あるもんだけやっていたら、仕事にならないんです。
僕の仕事の元って殆ど、仕事に関係のない中から出てきている・・・。

ディレクター:
あ〜、そういうのも・・・

宮崎駿監督:
僕は仕事に関係があると思ってしていないです。
自分が面白いからやっているんだって(笑)


********************


アトリエは日中、白く薄いカーテン越しに入ってくる光だけが灯り代わり。
クラシックの音楽が部屋中に響き渡っている。
そんな中、電話がかかってくる。
宮崎監督、机の上の受話器まで歩いていき電話応対する。

ナレーション:
日中、映画の準備らしきことは何もない。
新作映画は、どうなっているのだろうか。

電話のやりとりは続く。
机の前の椅子に座り、机の上を照明で照らし、書類をいじっている。
カメラが部屋の壁の方を映す。
彩色された絵が沢山、画鋲で貼り付けてある。
新作映画の設定資料だ(金魚姫のポニョ、人の姿のポニョ、少年、風景・・・)。

ナレーション:
書斎の壁に、十数枚のスケッチが貼られていた。
「ポニョ 金魚姫」と書かれた不思議な絵があった。

ずんぐりむっくりした可愛らしい赤い金魚。
けれど顔は、女の子の顔。

部屋の隅にいた宮崎監督に向かって、ディレクターが問いかける。

ディレクター:
宮崎さん、新作の方は、あれなんですか?(どうなっているんですか?)

宮崎監督、スケッチの貼られた壁の横を歩いて部屋から出て行く。

宮崎駿監督:
ん? 止まっているよ。
やる暇なんか、ありゃしないじゃない。

宮崎監督、別の部屋にある机に座る(先ほどの漫画を描いていた場所)。

宮崎駿監督:
(机に腰をおろしながら)やる暇はない、全く・・・。
(筆を手に取り、漫画の続きを描く)どうするんだろうね、一体・・・。

ディレクター、ふっと笑いを漏らす。


********************


今回はここまで。
監督の日常生活が描かれていました。
なんだか本当に普通。
そして、とても静かな時間の流れを感じます。
現代とは違う、日本とも違う、その時間の流れ。
それがご自身の作品に反映されているように思いました。

さあ、新作映画の製作進行はいかに?
次回をお楽しみに。

次回は、監督デビューを果たした宮崎監督の息子さんも登場します。
新作映画を語る上で、この息子さんが重要になってきます。

●次回の記事:宮崎駿監督 in プロフェッショナル【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001362.html

Posted by kanzaki at 2007年03月31日 14:05