2007年08月16日

劇場版「仮面ライダー電王 俺、誕生!」の感想【パート1】 

そういえば今週月曜日に、劇場版「仮面ライダー電王 俺、誕生!」を見てきました。
この作品の感想を書こうと思います。
いつも通りネタバレをしていますので、ご了承ください。

テレビ版を未見の友人と行ったのですが、ゲキレンジャーは分かりやすい内容なので、彼は素直に楽しめたそうです。
二つの勢力が、新たに現れた勢力を前に共闘すると言う、王道的な燃えがありましたからね。

電王の場合、イマジンとの契約ルール、良太郎がイマジンに憑依されると色んな性格のキャラになること、電王が幾つものフォームを持つ事、デンライナーの存在意義など、テレビ版を見ていないと分かりません。

また劇場版は、テレビ版のジーク登場編からクライマックスフォーム登場編までの一連のエピソードで補完され、はじめて一つの物語が完結する内容となっています。
今までの平成仮面ライダーの場合、劇場版はパラレル扱いで、いわば「別物」と言う扱いでしたからね。
そこが今までと大きく違うところです。

基本的には、テレビ版を見ているファンの為の映画ですから、今回のような試みに対して私は好意的です。
って言いますか、よくもまあテレビ版と劇場版をうまくリンクさせているなあと、脚本家の手腕に感心しましたよ。

劇場版は、電王の全フォームが一同に揃って戦うシーンや、モモタロス達がデンライナーの外で実体化して活躍するシーン等、お祭り的要素もあって楽しめますね(テレビ版のエピソードでも使われていたので、サプライズ演出ではありませんが)。

作品がはじまってしばらくの間は、殆どテレビ版のエピソードで使われていたシーンだったのが面白くもあり、残念でもありました。
「俺の必殺技 パート1」を使った場面まで、全てテレビ版の方で見ていましたからね。

テレビ版のエピソードやメイキング等で、この映画作品の内容や見所は、殆ど把握できてしまいます。
唯一、劇場にて驚いたシーンは、小太郎(主人公・良太郎の幼少時代)が電王ソードフォームに変身してしまうシーンですね。
あれは見に来ていた観客の多くが、声を出して驚いていましたね。
変身後の背の小さい電王の活躍にオモシロカッコイイものを感じました。
「ゲキレンジャー」のテレビ版のエピソードでも、主人公・ジャンが子供の姿になってしまい、そのままゲキレッドに変身して戦うと言うものがありました。
やはり、視聴者の多くがチビッ子ですから、自分と同年代の子がヒーローに変身するのは、彼らにとって燃えシーンなのだと思います。

12日のテレビ版のオンエアにて、冒頭、劇場版のクライマックス戦闘シーンが放送されていましたね。
クライマックスフォームが登場する12日のエピソードは、劇場版直後のエピソードだと知っていたので、わざとその日は見ませんでした。
月曜日に劇場版を見た後、これを見ました。
おかげで何の違和感もなく、テレビ版と劇場版の全てのエピソードを観賞できました。

これから劇場版を見る人は、おそらく既に12日のクライマックスフォーム登場編を見ているでしょうね。
見た後だと、面白さが半減してしまうかも。
この劇場版は、テレビ版をリアルタイムで見ているならば、8月6日以降11日までの間に鑑賞した人が一番の勝ち組かもしれませんね。

ただし、テレビ版のエピソードの中で、劇場版のエピソードが使われたのは、主にバトルシーンに関連するところです。
肝心のドラマ部分に関しては、しっかりと劇場版の中で全て完結しているので、これから見られる方は、そちらを楽しみに見るのが良いかと思います。

また、コンピュータグラフィックがいつも以上に多用されています。
テレビ版でも、過去の作品以上に贅沢に使用されていますが、劇場版はそれに輪をかけていますね。
エンディングテーマに合わせて、スタッフ・キャストのエンドロールが流れるのですが、コンピュータグラフィック関連を担当した会社・人の名前が物凄く多かったです。
その中に、フルデジタルアニメーションの先駆的会社であるGONZO(ゴンゾ)の名前もありました。
コンピュータグラフィックは本当に凄いですね。
デンライナーとガオウライナーのバトルシーンを始め、テレビ版以上に実写的な質感で表現されています。
予算がそちらに使われたからでしょうか、実写パートの予算が少なくなっているかもなあと感じました。
確かに、戦国時代のガオウライナーが埋まっている場所のオープンセットは凄いものがあります。
しかし、戦国時代の他の部分は東映太泰映画村のセットそのものですし(既に、劇場版の響鬼で使用済み)、クライマックスバトルにて使われた廃墟も特撮ファンにはお馴染みの場所です(茨城県高萩市安良川:日本加工製紙高萩工場跡地です)。
今までにも見たことのある場所ですので、「この映画ならでは」と言う感じがしません。

また、過去の平成仮面ライダーですと、劇場版では大量の同一タイプの怪人が登場するのですが、今回はそういう部分ではお金をかけていません。
今回は、怪人ではなく、忍者が沢山登場します。
明らかにお金はかかっていませんよね?

テレビ版のエピソードと劇場版のエピソードがリンクすると言う面白い試みでしが、同じ映像を使い回しするが故に、映画ならではの豪華な映像と言うのはコンピュータグラフィックぐらいでしたね。

ドラマ部分に関しては、非常に良かったです。
良太郎とモモタロスの絆の強さを中心に描いています。
良太郎が記憶喪失になってしまい、モモタロス達の事を忘れてしまいます。
特異点とイマジンの関係には「記憶」が重要。
記憶喪失になった事で、その関係が崩れてしまいます。
それが修復され、更に結束力が強くなるのが今回の映画の見所です。

その部分に関しては、モモタロスの台詞と演技が特に注目。
猪突猛進キャラですから、いつもならば良太郎を責めるところですが、仕方が無いとグッとこらえるところや、良太郎の記憶が戻った事で大喜びをして、戦いの前の準備運動なんか始めちゃうところがいいですね。

台詞としても、モモタロスの台詞が一番印象的です。
ラストバトルにて、牙王と電王ソードフォームが戦っているシーン。

牙王「知っているか? そういうのを往生際が悪いって言うんだぜ」

電王(モモタロス)「ああ、知っているぜ。最後までクライマックスって事だろ」

こういう切り返し台詞が、脚本家・小林靖子さんのうまいところ。
第1話から使われていた名台詞をこういう形で使われると、ファンとしてはたまりませんね。
歌舞伎や時代劇のキメ台詞って、現代劇ではなかなか使えないものですが、特撮では違和感なく使えていいですよね。

いろんな意味で人間味溢れる敵怪人・イマジンが登場するのが電王の面白さ。
けれども今回の劇場版では、敵も人間です(消滅する際のシーンほ見るにも、人間の形をしたイマジンかもしれませんが)。
仮面ライダーガオウに変身する牙王と言う人間。
演じるのは、渡辺裕之さんです。
至上最年少ライダーである電王に対し、シリーズ史上最高齢となる51歳の仮面ライダー。
wikiによりますと、「仮面ライダースーパー1」のオーディションで落ちたこともあるとか。
今回の役が「牙王」と言うことで、その名前から私は「牙狼-GARO-」をすぐに思い起こしてしまいました(そういう人、多いと思う)。
冴島鋼牙の父親・冴島大河役で登場していました。
男気のある正に戦士そのものの役。

一方、今回の牙王は、見た目は冴島大河のノリですが、性格的にはちょっと軽いところがありますね。
本当ならば、凄みのある声と台詞で相手を威圧するであろうシーンに、わざと軽くオカマっぽい感じの台詞を使ったりしています。
公式設定ではありませんが、過去に子供を失っていると言う感じで演じたそうです。
その設定を考えれば、物理的に戦闘の中で良太郎を殺さず、良太郎の生まれた日を消滅させる事で良太郎の存在を消すと言う方法を使ったのも納得がいきますね。

牙王はガオウライナーを手に入れるのが目的だし、時間と言う流れが嫌いなのは分かるのですが、そのガオウライナーを手に入れて、更にその先、何をしようとしているのかが劇中では分かりませんでした。
あえて描かなかったのかな?
そうすることで、戦隊モノによくある、強大な力で世界を征服すると言うありきたりな内容をやりたくなかったのでしょうか。

もし牙王の動機を深く描くとしたら、失った子供の設定を公式にして描いたら良いかもしれませんね。
これをやると、悪役に徹した描き方はできませんが・・・。
それに一時間ばかりの作品では、時間的に無理か。

ゲストイマジンの中では、モレクイマジン、コブライマジン、そしてジークが良かったですね。
モレクイマジンの声は、仮面ライダーカブトで矢車を演じた徳山秀典さん。
このイマジンが大勢の警察官相手に、仮面ライダーキックホッパーの必殺技をやっていたのにはニヤリ。
そして、コブライマジンの声は、仮面ライダー龍騎の浅倉を演じた萩野崇さん。
台詞の口調が、浅倉そのまんまでニヤリ。
できれば、「イライラするんだよ・・・」とか「祭りの会場はここか?」の台詞を使ってくれたら嬉しかったです(電王も龍騎も、メイン脚本家が同じ小林靖子さんですしね)。

他に、サラマンダーイマジンの声は、仮面ライダーカブトの影山を演じた内山眞人さん、ニュートイマジンの声は、ボウケンジャーの真墨を演じた齋藤ヤスカさんです。
しかし、あまりよく分かりませんでした。

仮面ライダーカブトと仮面ライダー響鬼からは、他にもゲストキャラが登場したのですが、それは次回に書くこととしましょう。

ジークはテレビ版でもゲストキャラとして登場しましたね。
良太郎は劇中、大半のシーンでジークが憑依された姿で登場します。
ウラタロスに近いキャラですが、そこに気品と威厳を加えた性格。
やはりウラタロス同様に、大抵の事には動じない行動が面白いですね。
一番、映画館の中で笑いをとっていたシーンは、ジークに憑依された良太郎が、オロナミンCをカクテルグラスに注いで飲んでいるシーンでした。

かっこいい行動が多かったのは、オーナーでしょうか。
旗の付いた爪楊枝一本を投げつけるだけで檻を破ったり、ラストに良太郎の為に過去を遡り、良太郎の両親を見せてくれたり。
なんとまあ、かっこいい事でしょうか。

今回の劇場版ですが、笑いも感動も沢山詰まっています。
けれど、笑いに関してはドリフ的な笑いではなく、台詞によるクスッと笑える知的なものです。
私の中では、モモタロスが小太郎に対して「さすが、良太郎の息子だぜ」と言ったのがツボでした。
「小太郎は、良太郎の幼少時代の姿だろう!」と心の中で突っ込んでいました。

また、感動シーンとしては、最後に両親をはじめて見る事が出来た良太郎や、小太郎が両親・兄弟の絵を描いた写真立てを映し出すシーン等、あえて大泣きさせるのではなく、ジンとくるような感情を観客に覚えさせるのが良かったです。
笑いも感動も極端にはせず、わざとホドホドに抑えるのがいい。

そんな訳で、テレビ版を見ている人には、非常に満腹感のある作品になっていたと思います。

Posted by kanzaki at 2007年08月16日 19:23