2007年09月03日

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」の感想【2】

前回の続き。

使徒は第1始祖民族が造りあげた「月」をその起源としていると言うのが設定にあったものの、旧作のフィルム上では語られませんでした。
新作では、カヲルが月(我々の見ている月とは違うかも)にいることから、初期の設定やストーリー展開を描こうとしているのではないかと予想されます。

ゲンドウの台詞から、登場する使徒が減っているようです。
旧作ではサキエルは第3使徒でしたが、新作では第4使徒として登場。
第4使徒 シャムシエルは第5使徒として登場。
第5使徒 ラミエルは第6使徒として登場。
ゲンドウの台詞から予想するに、使徒の数は全部で13or14のようです(旧作は第17使徒 タブリス(渚カヲル)までいる。ちなみに第18使徒 リリンは我々人類のこと)。

次回「破」編では、旧作のストーリーをカットし、その分、新しいストーリーが追加されるようです。
エンドロールが終わったあと、次回作の中編『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2008年公開予定、上映時間:90分)の予告がありました。

破の予告で、ミサトのナレーションに、「そして月より飛来するEVA6号機とそのパイロット」とありました。
また、新キャラとして、メガネをかけたツインテールの女の子が映し出されていました。
彼女が月からやってきたパイロットなのでしょうかね。
なんだか予告を見る限り、ようやく登場する惣流・アスカ・ラングレーが、今ひとつクローズアップされていませんでした。
新キャラの方に注目してしまうような予告でしたからね。
果たしてどうなるやら。

基本的に旧作のストーリーや演出を踏襲していますが、ミサトとシンジの描かれ方が少しだけ変わっていたように思います。

「新作ヱヴァ」では、主人公のシンジが、内向的な性格は変わらないものの、それでも前へ進もうと男気みたいなものを感じました。
ヤシマ作戦にて初弾を放ったものの、使徒を殲滅できずに失敗しました。
怖くて怖くて仕方がないけれども、それでも初号機を立ち上がらせ、再び敵に立ち向かうところなんか、「旧作より成長したなあ」と感じました。
新作シリーズは劇場版と言うことで、全体の時間が短いせいもあり、キャラ達に立ち止まらせている時間はありません。
ストーリーを展開しなければいけませんから。
新作のテーマは「ヒトを好きになるということ」だそうです。
それを映像として表現するには、主人公は現実と向き合わなくてはいけないし、そうそう内向的でネチネチさせられません。
時代が変化し、不景気だけれども、少しは精神的に良い方向へ向かっている世相を反映しているのかな?

ミサトは、旧作でも数少ない「まともな人間」だったと思いますが、本作では旧作以上に立派な大人になっていると思います。
ミサトは設定上、元々利発で行動的だったかと思いますが、ヤシマ作戦の立案・準備・始動をしっかりと指揮している姿が、とても良く描かれていました。
指導力が本当にあるなあと。
テレビ版より細かく描かれているので、そう思えたのかもしれません。
そしてシンジに対して、保護者としても良い態度だったと思います。
旧作よりもそんなに、シンジとくっついている訳ではありません。
だから、親代わりと言う感じではありません(だから、保護者と表現してみました)。
劇中でも言ってますが、あまりプライベートには干渉していません。
けれど、シンジが少し立ち止まってしまった時、必ずミサトが奮起させてくれるのです。
その奮起のさせ方も、相手自身に結論を導かせるような形です。
これも時代の変化でしょうかね。
特に良かったのは、二人でセントラルドグマ深層部へ行ったシーンですね。
シンジの手をつないで連れて行き、リリスと使徒が接触してはいけない事を説明している時、ずっと手を握って話します。
シンジは手を握られている状態だったのですが、話しを聞いて決意し、強く握り返します。
相手に考えさせる余地を与え、自ら決意させるように話す姿は、立派な保護者ですね。
親・姉・友・恋人と、旧作では様々な微妙な関係を描いていますが、新作では今後、ミサトとシンジの距離がどうなるのでしょうかね。
また、ミサト自身の過去との精算も気になります。
旧作では、もう一人の主人公と言えるような立場でした。
しかし新作は、カヲルが最初から登場していることから、どれぐらいミサトのキャラを描けるか心配。
まあ、ヤシマ作戦で十分に活躍していますけれどね。

それに比べ、レイはインパクトが少なかったですね。
旧作とキャラが全く同じで、描き方にも変化が見当たりませんでしたから。
大きな違いは、レイの乳首やお尻を描いていたことでしょうかね(お
映画なので、テレビと違って規制がうるさくないのかな?

今はセル画を使ったアニメと言うものは殆ど無く、地上波放送に限りますと、サザエさんのみだそうです。
当然、ヱヴァもCG(デジタル)を駆使して描かれています。

いかにもCGというモノも多いのですが、二次元で描かれているものでも、手作業では不可能な綺麗な動きをしていました。
序盤、初号機の初陣のシーンですが、夜間戦闘の際、初号機の緑色のカラーリングが、旧作と違い、とても綺麗に発光していました(新作は、旧作と若干カラーリングが違い、胸や腹部にも緑色の彩色がある)。

第3新東京市の高層ビル群が、地下ジオフロントからせりあがってくるシーンは感動しますね(ロックボルトで固定されるシーン等、細部に渡って描いています)。
これはデジタルで無ければ、不可能でしょう。

CGやデジタルで表現すると、薄っぺらいと言う印象があったのですが、ヱヴァに限って言えば、むしろ表現の拡大化に貢献していますね。
以下に記述するヤシマ作戦のエピソード等は、ハリウッドの映像・・・例えば「トランスフォーマー」よりもインパクトがあり、映像技術は世界でトップに躍り出たと言っても過言ではないと思います。
それぐらい、インパクトがありました。
もう、映像技術で驚いたり感動なんてすることは無いと思っていたので、非常に嬉しかったです。

新作一作目で一番驚いたのは、やはりヤシマ作戦関連でしょうか。
ヤシマ作戦とは、使徒ラミエルが強固なA.T.フィールドを展開し、一定範囲内に侵入する敵に対して強力な荷電粒子ビームを放つのに対し、その射程外から陽電子砲による超長距離狙撃を行なう作戦。
作戦に使用する陽電子砲は戦略自衛隊技術研究所で開発中のものをNERVの持つ特権で徴発し(劇中でミサトが「ちょっと借りがあるから」と言い、リツコが「蛇の道は蛇ね」と返した )、狙撃をEVA初号機、防御をEVA零号機が務めました。
作戦は日本全国の電力を全て徴発して実施したのですが、そのスケールの大きさが、旧作を上回るスケールで展開されました。
ヱヴァは基本的に、ヱヴァのみで使徒に対して戦い、そして勝って行きます。
そんな中、このヤシマ作戦は、ヱヴァだけでなく、大勢の人間が関与して作戦が遂行されます。
この作戦を行うには、沢山の資材・設備が必要です。
それらの準備を描く姿が凄いです。
本当に大勢のスタッフが動いて準備をしているのが、よく描かれていました。

日本映画「踊る大捜査線」が、旧作のイメージにインスパイアされて、似たような表現を使っていました。
大勢のプロフェッショナルが、沢山の車両や装備で作戦を遂行します。
その雰囲気は正に、旧作エヴァンゲリオンそのもの。
今度は、本家がそれを上回るスケールで描き返したと言っても良いでしょう。
本作のヤシマ作戦を実写で描くのは不可能ではないでしょうか。

大勢のスタッフによる準備の他、一般市民もその作戦を見守るシーンがあります。
正に日本人全員が一丸となって使徒と戦っている様子を描いていました。
映像パネルに描かれる、電力が一箇所に集められる様子等も必見です。

それに対抗する第6使徒ラミエルが凄いのなんの。
旧作において、戦闘能力では最強と思われる第14使徒 ゼルエル(覚醒したEVA初号機に食われたアレです)。
それを上回る戦闘能力が描かれていました。
旧作では、ガイナックスファンならば当然のように、「あっ、ブルーウォーターだ」と思った事でしょう(お
旧作は正八面体の姿のみでしたが、今回はデジタル技術・CGを駆使して、あらゆる幾何学的な立体に変化します。
加粒子砲の攻撃も、場面に合わせて多彩な姿を見せます。
これらの動きも、劇中の見どころです。

負傷した際、ウニのようなトゲトゲ状になり、血を噴き出して叫び声を上げたりと、以前よりも生物的な表現もします。

この使途もそうですが、新作の使徒は全て爆発した後、血の雨を降らします(赤いコアの中の血?)。
それによって虹が出たり、戦闘後に血の池が出来たりします。
そういえば新作は、虹の表現が多かったです。

旧作ファンが新作を見た際、否定的な見方をする人は、新作の前半部分が「焼き直し」にしか見えないからだと思います。
けれど、このヤシマ作戦の描き方に関しては、殆どの人が賞賛すると思います。

私が見た回ですが、エンドロールの流れる前に「続く」とテロップが出た後、大きなどよめきが沸きました。
否定的などよめきではなく、賞賛のどよめき。
旧作もそうですが、見た後に他の人と語りたい気分で一杯でした。
それだけ情報量の詰まった作品でしたから。

エンドロールの最中も、殆ど人が帰りませんでした。
宇多田ヒカルさんの主題歌が、作風に非常にマッチしていましたね。
エンドロールには見慣れた旧作の一流スタッフや、プロダクションIG、ボンズ等、日本中のトップアニメクリエイター達のオンパレードでした。
そして次回「破」編の予告。
懐かしの「サービス、サービス」の台詞があったりと、旧作の前半・元気な頃の雰囲気が蘇った気分でした。
そして、かなり旧作とは違う展開を予感させるものでした。
公開は来年だそうで、早く見たいのはやまやまですが、今回と同じぐらいのクオリティを維持できるならば一年でも待ち続けますよ。
それまで、とりあえず劇場公開している間は、何度か映画館で「序」編を見たいと思います。

Posted by kanzaki at 2007年09月03日 21:58