現在発売中の雑誌「PRESIDENT」の特集は、「できる上司の話し方」です。
会社の仕事の多くは、一人では不可能な事ばかりです。
一人でやっているように見えても、実は色んなところと繋がっており、決してスタンドアローンではありません(最近は気づきにくくなっていますが・・・)。
人に伝える、人を動かすには、対話が重要です。
パワーポイントで作った小奇麗なだけの資料なんて飾りです。
偉い人にはそれが分からんのです。
話す相手が社内の人、社外の人、それぞれの場面に対して的確な話し方が出来てこそ、「できる上司」と言えるのではないでしょうか。
それでは、雑誌に掲載されていた内容で気になったものを掻い摘んでご紹介し、私なりの見解を書きたいと思います。
まずは、成長に繋がる叱責の作法。
失敗をした部下は、心理的に萎縮した状態になっています。
そこに助言を与えたところで、部下の心には届いていない可能性が高いです。
南海ホークス(現ソフトバンク)の鶴岡一人監督は、エースの杉浦忠投手が失敗して試合に負けた時、当日には叱らなかったそうです。
なぜなら、負けた直後は心が閉じていて、負けん気の強いエースにあれこれアドバイスしても素直に聞いてもらえないからです。
鶴岡さんが心がけていたのは、杉浦投手が勝つまで待つことでした。
成功体験で気分が良くなっているところで「この前の試合で打たれたのは、あれがいけなかったんじゃないか」と試合を振り返ると、相手も素直に耳を傾け、更に練習に励んだそうです。
部下への仕事も同様に、アドバイスは、部下が成功を体験して心を開いているタイミングが効果的です。
私の知っている、コンビニを何店舗も経営する会社のお偉いさんは、土方系の現場上がりの人です。
昔、店長クラスの人間達に、土方時代と同じような感じで怒鳴り声で叱責したところ、全員次の日から店に出てこなくなり、仕事を辞めていったそうです。
今時これでは、誰もその人には付いてきませんよね。
今は反省し、対処に対してデリケートになっているそうです。
その方に聞いた所によりますと、コンビニの各店舗の売り上げと言うのは、従業員たちの人間関係が良い事と比例するのだそうです。
お客と言うのは、店内の雰囲気を敏感に察知するらしく、ギスギスした人間関係の店からは足が遠のくそうです。
それが立地条件の良い店だったとしてもです。
逆に、人間関係の良い店は、最初は誰にも知られないような静かなスタートだったとしても、確実に売り上げが伸びていくそうです。
良い情報も悪い情報も、ちゃんと上司に伝わる会社と言うのは、やはり良い結果をあげています。
上司は、なにも部下を怒りたくて悪い情報を伝えろと言っているのではありません。
悪い事が起きたら上司と部下が一丸となって当たり、事が大きくならないうちに解決する為に報告を上げさせているのです。
とは言え、悪い報告を上司に報告しやすい環境と言うのは、なかなか構築しにくいのも事実です。
現在、会社は「個室化現象」と言う病魔が巣食っているからです。
昔、職場は人間関係を重んじる「場」でありました。
人間関係の中で仕事をする仕組みがあり、お互いに迷惑をかけないように節度を持って働く「場」でした。
感情のベースも共有されていたので、コミュニケーションも取りやすかったのです。
しかし、成果主義の人事制度が導入されるようになり、その「場」は崩壊しました。
なぜなら成果主義は、仕事が切り分けられ、個人に割り振られるからです。
そのパフォーマンスによって成果を測り、評価をします。
「場」の論理が、いきなり個人単位の仕事と評価の仕組みになってしまったのです。
いまや7割の企業で個人仕事が増えているそうです。
そんな個室化現象の真っ只中、上司は自分の仕事を抱えながらも、部下の育成に励まなければいけません。
一人一人が個別に断片的な仕事をするので、周りの同僚との仕事の関係が分かりにくくなっています。
職場内のコミュニケーションの機会も減り、上司としても、どう部下と接していいか分かりません。
しかしこれだけは言えます。
企業の資産は、財務諸表を見ただけでは分かりません。
企業には、人材と言う含み資産があるからです。
人材ののびしろがいかにあるか。
この含み資産の拡大なくしては、企業の成長はありえません。
上に立つ人はその事を部下にしっかりと伝え、「自らの成長のためなのだから、失敗を恐れずに挑戦していいんだ」と思える環境をつくってあげるべきです。
人の成長には時間がかかります。
あせらず愛情を持って部下を見守る姿勢が、強い組織に繋がるのではないでしょうか。
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