吉野家と言えばご存知、バブル崩壊以降、マクドナルドとともに、低価格路線を採った外食産業における代表的な店です。
その吉野家について、雑誌「PRESIDENT」が特集をしていました。
M&Aとか、流動資産比率についても説明していたのですが、あまり面白くないので割愛。
他に、吉野家の面白い記事が二つあったので、そちらをご紹介いたします。
まずは、「なぜ、"お玉"の穴の数は47個なのか?」です。
これは、商品回転率について説明した記事です。
吉野家には「人時客数」と言う独特の指標があります。
人時客数とは、一時間当たりに一人の店員(キャスト)が何人の客を捌いたかを見る指標です。
回転率を見る為の数値なんですね。
一人の店員が単位時間当たりに捌ける客数を増やす努力をしているのですが、その人時客数アップの為には、厨房で使う道具も大切です。
吉野家が人時客数を高める秘策たる道具とは・・・「お玉」です!
吉野家のお玉の穴の数は47個です(直径は企業秘密)。
穴の数も直径も、全店舗共通だそうです。
一発で盛り付けた時、タレの量がご飯に対して最適なバランスになるように、穴の数と直径を決めているそうです。
物凄い道具であるのですが、上文の「一発で盛り付けた時」と言うのがミソです。
つまりこのお玉は、二発や三発での盛り付けを許してくれないのです。
このお玉は、タレの量を最適化するだけではなく、この道具を使う以上、一定動作で盛り付けをせざるをえないのです。
このお玉の形状は、店員の動作を規定する力があるのです。
タレ、肉、米の使用量のバランスを見るため、毎日データをとっているそうです。
規定のバランスが崩れていると、スーパーバイザー、エリアマネージャーが店長を指導するようになっているそうです。
高い回転率を維持出来ているのには、ちゃんと理由があったんですね。
吉野家の第1号店は、魚市場で有名な築地だそうです。
席数が僅か15しか無いのに、年商1億円をたたき出していると言うから驚き。
一日の来客数は1,000人。
場所柄でしょうか、営業時間は朝5時〜昼1時迄です。
回転率はなんと一日66.6回転。
ファミレスの回転率が通常5回転に満たないのですから、いかにこの数字が驚異的か分かりますよね。
続きまして、「なぜ、"券売機"を置かないのか?」です。
これは、営業利益率について説明した記事です。
吉野家フリークの間でよく話題にのぼる謎の第一位は、なぜ吉野家は券売機を置かないか、です。
同業他社やそば屋等、当たり前に券売機が置いてある昨今、上記のように回転率の高い吉野家に置いてないのは、確かに謎です。
巷に流布している定説は、「機会損失防止説」です。
券売機は通常、ドア付近に設置されています。
すると、昼のピーク時に券売機の前に行列が出来、その列が店の外にまでなるやもしれません。
それを見た人が、店が混んでいると勘違いして別の店へ行ってしまう。
券売機が無ければ、そういう機会損失がなくなると言うもの。
しかし、これは嘘です。不正解。
答え意外でした。
それは、券売機を置くと「ご注文は何にいたしますか?」と言う接客用語が一つ減ってしまうからだそうです。
更に、代金の受け渡しと言う接客行為も一つ減ってしまいます。
それ故、券売機を置かないと言う、なんとも情緒的な回答でした。
築地で生まれた吉野家には、伝統的に醸し出してきた文化があり、それを収益が許す限り大事にしたいと言うメッセージだったのです。
その文化とは、生産性を犠牲にしても守るべき「江戸の粋」だそうです。
効率を追求しつつ、粋を守る。
なかなか侮れない企業なのです。
他にも、お客がお茶を飲むとき、角度が高くなれば、それはお茶の量が少なくなっている証拠。
すかさずお茶を追加する。
客が食後に胸ポケットを探れば、それは薬を取り出す仕草。
すかざす水を持っていく。
客の動きによって求められるサービスを察知し、要求を満たす。
そんな粋な飲食店、いまどき、田舎でも見かけません。
私は吉野家と言いますと、初めて耳にしたのは、ゆでたまご原作のアニメ「キン肉マン」のギャグでした。
今では当たり前に食している吉野家の牛丼。
こうして経営面から見てみますと、また面白い一面が垣間見れますね。
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