2007年09月27日

出でよ! 骨太社員〜強い会社とは

「日経ビジネス9月24日号」の特集は、「出でよ! 骨太社員」と題し、グローバル競争と人材不足に対応する為に「強い会社」を作る方法を紹介していました。

「強い会社」として最初に紹介したのが、三井物産。
三井物産はこの5年の間に純利益を約12倍に伸ばしました。
その功績の影には、人事制度の転換がありました。

なんと、「成果主義」による評価をやめたのです。
業績が低迷していた時代に、業績回復の為と、団塊世代の人件費抑制の為、成果主義による人事制度を始めました。
これにより2004年3月期から右肩上がりで高収益企業に変身しました。

しかし、成果主義は思わぬ「病」を会社に産み落としました。。
ベテランが、若い人に仕事のスキルや価値観等を教えなくなったのです。
上司から部下へ、先輩から後輩へと伝えられた教育が途絶えて、組織としての教育力が落ちたのです。

原因は、評価の軸が業績のみになってしまい、ベテランも若手も同一線上で競うことになったからです。
そうすると、「ベテランと若手が競合する事になったのだから、教えるだけ損」と考えるようになったのです。
まあ、当たり前ですね。

他にも、同僚や後輩と一緒に仕事をするよりも、自分一人で仕事を引き受けて成績を上げようという考えも出てきました。

そうした制度の矛盾が指摘されるようになった頃、二つの事件が社内に起きました。
発電施設を巡る不正入札・談合事件。
ディーゼル車の排ガス浄化装置のデータ捏造事件。
どちらも、業績を上げるのに必死になった社員の焦りがもたらした事件でした。

表向きは業績回復をしているものの、社内の人材教育力は低下していきました。
これではいけないと、改善策をとりました。
業績のみの評価方法から、仕事の企画立案・実行・人材育成などの「定性面」を見るように変えたのです。

定性面とは、その人の人柄、他の社員とうまくやっていけるか、チームをうまくまとめられるかという人間力のことです。
結果だけではなく、これまでの仕事のやりかた、プロセスも重要視されます。

評価で金額が変わる賞与。
2004年4月のスタート時には、賞与金額の変動部分のうち、定性面の評価割合が4割でした。
それが昨年4月には8割にまで引き上げられました。
かつて、10割だった業績評価は2割にまで落ち、三井物産は成果主義と決別したのでした。

成果主義による賃金体系は、部下育成力や同僚との協調性を弱くし、目標達成の為ならば違法行為も犯しかねないモラルハザード(倫理の欠如)が起きかねません。

また、目標の難易度が高すぎると達成しにくくなるし、翌年以降の難度が上がる為、低い目標設定になりがちです。

80年代以前は、部下の潜在能力を年功的に評価していました(長期的な面を重視)。
90年代以降は、顕在能力(実現した成果を生み出した力)としての実績ばかりを重視してきました(短期的な面を重視)。

今、企業にとって大事なのは、単純な教育ではなく、社員自ら学び、それを生かして企業の強さを増す仕組み作りです。
人材を育てることは、強い企業を作ることと同義になりつつあります。
業績回復の解決のヒントは、そこにありそうです。
人材を育てる方法を具体的に導入している会社の例は、本誌をご参照ください。

読んでいて思ったのは、「うちの会社はまだ、成果主義のまんまだよなあ」と落胆した事です。
個々人の専門的な能力を持ち寄り、自分の職務領域を限定せず、仲間と協力し合えるチームワーク。
それこそが今の時代には必要です。
しかし、それを賃金に評定するには、企業側も「評価する力」が必要です。

私の会社には残念ながら、そういった評価する力はありません。
業種柄でしょうか、当社の支店の場合、支店長と従業員が顔を合わせるのが数日に一回あるかないかです。
面と向かって話し合いをするのなんて、評価を従業員へ伝える個人面談の時だけです。

これでは、個人評定を上司が適正に出来るわけがありません。
そしてこの悪い面は、評定だけではなく、業務改善のチャンスも失うことになります。

業務改善として取り上げられる問題点は、日々の仕事の中で発見できます。
そして、その解決方法もまた、日々の仕事の中にあります。
その日々の仕事をしているのは各従業員。
彼らからのヒアリング無しには、解決は不可能なのです。

その為にも上司は、各従業員との接点を常に持たなければいけません。
つまり、話しを言い合える仲になる為、上司の方から気さくに話しかけてみるのも大事。
それと、自分が仕事をやってみせるのも大事。
この数年間で入社してきた人達は、就職氷河期の中にあった為、非常にスキルが高いです。
それ故、自尊心も大きいので、「命令」や「指令」では動きません(私の年代でも、それは同じか)。

大日本帝国海軍の軍人・山本五十六の言葉に
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば人は動かじ」
というものがあります。
つまり、人を動かすには率先垂範(本人が他の人の模範となるような行動を自ら進んで実行すること)が大事なのです。

定性面の重要性を最近、特に痛感しています。
ある支店の事務所を新しくしている最中なのですが、その支店は、私が今いる場所から遥か彼方の西日本にあります。
こうなりますと、自分の力だけでは物事が動きません。
何せ、物理的に建築、工事その他をするのは、遥か彼方にいる、会った事も無い人達なのですから。
電話や書類、メールでのやりとりで物事が進んでいきます。
相手も人間。こちらも人間。
お互いが協調性を持って事を運ばなければ、建物は完成しません。
支店の支店長・従業員、建設会社、備品販売会社、電話設備業者その他大勢の人達が、一つの物事を遂行する為に動きます。
そんな時、「スーパーマン一人だけでは、世の中は動かない」と本当に思います。
まあ、おかげで何とかその件に関しては、皆さんのおかけで成功の光が見えています。

人格、人望、協調性・・・これらがある人は、特殊能力で秀でる人に勝る事を歳をとってから理解できてきました。
テクニック本に頼らない、本当の意味で強い自分を作りたい今日この頃です。


(追記)
本文と全く関係ないのですが、本日、一番嬉しかったニュースはこれ。

●内野聖陽「風林火山」クランクアップで涙
http://www.nikkansports.com/entertainment/f-et-tp0-20070926-261842.html

NHK大河ドラマ「風林火山」が26日、クランクアップを迎え、主演内野聖陽が涙で13カ月間の収録を終えた。共演した市川亀治郎、Gackt、柴本幸が駆け付けた中「涙が自動的に出てくる。俳優としての誇りであり、宝物です」。妻の女優一路真輝にも「支えになってくれたことに感謝しています」。好評のため当初の予定より1話多く制作、放送されることも発表された。最終話は12月16日。

上記の記事のとおり、好評の為、当初の予定よりも1話増えたのは嬉しいですねえ。
1話だけでなく、なんなら来年も続きを放映してほしいものです。
来年の作品は、ちょっと期待できそうにないからなあ・・・。

Posted by kanzaki at 2007年09月27日 22:18