2007年11月06日

郵便決済系システムの不具合

10月から郵便局が民営化されましたね。

何かしら毎日、郵便局(今は、日本郵政株式会社と呼ぶのが正しい)とお付き合いのある企業の皆さんは、青ざめたり、苛立っていたりしているのではないでしょうか?
特に、郵便料金を後納扱いで決済している会社は大変だと思います。
まあ、私もその一人なのですが。

郵便物は普通、封筒に切手を貼り、ポストへ投函します。
しかし、仕事などで郵便物の発送が沢山ある場合、いちいち切手を貼ってポストへ押し込むのは大変です。
そんな場合、毎日決まった時間に郵便局の人が郵便物を集荷に来てくれるサービスがあります。

その際、更に助かるのは、「料金後納郵便」と掘られたハンコを押すことにより、郵便切手を貼らずに済むことです。
郵便物の大きさ、重さ、種類などによって料金が違うものをいちいち計算して切手を貼らなくても良いのは助かります。
そして翌月、まとめて郵便料金を支払うことになります。

私の会社のように、各支店の郵便料金をまとめて本社が一括で支払う場合、翌月の初め頃、各支店の郵便料金のデータが、郵便局から届きます。
今までは紙に印刷されたものでしたが、民営化された10月分以降は、そのデータをインターネット上から見ることができるようになりました。

郵便局からは、「翌月の1日には、前月分の集計データを見たり、ダウンロードできますよ」と聞かされていました。
今までだと、どんなに早くても、集計表が提出されるのが翌月になって一週間後だったので、これは助かるなあと思っていました。

しかし、現実はそうはなりませんでした。
まず、データをダウンロードしようと思っても、郵便局のホームページが非常に重たく、ダウンロードができません。
一向に反応せず、タイムアウトすることもしばしば。
後納扱いのページだけではなく、たとえば郵便番号の検索ページなどの一般的なところも重たかったです。
ここ最近になって、ようやく動作が軽くなってきました(そうは言っても、まだ機敏という訳ではありませんが)。

データをダウンロードし、郵便料金のチェックをして再び困ったことが。
前月分のデータは、次の月の一日には確定しているはずなのに、毎日データをダウンロードしてチェックしてみる度に、料金が違っているのです。
追加されるだけならば、入力漏れがあったのかなと推測できるのですが、いきなり金額が下がっている事もありました。
おかげで今現在、10月分の後納料金の金額が確定しておりません。

この状況は、私の会社だけでは無かったようです。
郵便局へ問い合わせしましたところ、「導入した後納集計システムの運用に障害等があり、現在、全国の支店で、利用状況の確認作業と確定確認に取り組んでいます」との事。
通常、翌月20日までに前月分の郵便料金を支払わなければいけないのですが、このままだと請求書が発行されるのがギリギリになりそうです。
下手したら、20日までに請求が来ないかも。

今回の原因は、このシステムの設計思想に原因があると思います。
確か、日立が制作したシステムだったと思いますが、このシステムを作成した人たちは、「入力を間違わない」ことを前提にしています。
人間なのだから、間違いがあってもおかしくないのに、それを考慮していないのです。

後納扱いの場合、集荷担当の人が携帯端末を使って、集荷の際にリアルタイムで入力作業をするのですが、毎日大勢の人がやっていれば、そりゃあ間違いも出てくるってものです。

私の会社の集荷を担当している人は、10月になってからオロオロしていました。
新しい作業方法に慣れておらず、作業に時間がかかっていた為、集荷へ行く先々で文句を言われていたそうです。
私は集荷に来るのが遅くなろうが、作業に時間がかかろうが気にはしません。
どうせ、残業で夜遅くまで会社にいるのでorz
「大変ですね」と声をかけると、「そんな事を言ってくれるのはお客様だけですよ」と力の無い声が返ってきました。
相当、よその会社でこっぴどく言われているのだろうなあと思いました。
集荷に来てくれる人に対し、精神的に追い詰めるようなお客もどうかと。

新システムは、使う人にかなりの負担を強いるようですね。
ネット上でも、郵便局の人たちの悲痛な声を聞くことがあるのですが、こちらの方が切なくなりましたよ。

毎日、そんな新システムを100%間違いなしで操作できるものなのでしょうか?
それも、全国規模で扱うシステムです。
ヒューマンエラーを想定したシステム作りと運用を誰一人考えなかったのかなあ。

システムを実際に作成した日立だけではなく、郵便局のシステム制作に携わった本部も同罪。
このシステムの欠陥で最大のものは、間違えた時に対応する方法を全く考えてないという事ですね。
日立は実際の現場を知らないのだから、提案してくる内容は、あくまで日立が机上で考えたもの。
おそらく、民間の運送業務システムを基礎として考えたものだと思います。
しかし、運送会社と郵便局は、似ているようで実は違う。
そもそも、運送会社の間でも、業務体系が異なっているのです。
そんな日立の提案を現実に即したものに修正するのが本部の役割だと言うのに、それがなされていなかったのです。

最新のテクノロジーが最適な方法とは限りません。
私のところにも、いろんな企業が新しいシステムの提案をしてきます。
私は基本的に疑ってかかる方なので、どんなに良い提案を出してきても、そうそう首を縦に振りません。
プレゼンと言いますと、提案者が一方的に話し込むもののように感じますが、実際は、聞く側の私の方もあれこれと準備をして、質問内容などを考えております。
首都圏の方だと、立派なプレゼンをして、質問や意見に対しても即答できるようなスーパーマンがいるかもしれませんが、新潟だといませんね。
こちらは素人だからこそ、敢えて基本的なこと、単純なことを聞いてみるのですが、それを返答できない人が多すぎです。

そして、相手の企業の業務内容や実態を知らず、一般的な提案をする会社ばかりです。
「提案型の営業」が注目されて髄分と時間が経ちますが、それをやっている会社ってどれぐらいあるのでしょうか。
相手の業務実態を詳しく理解した上で新システムの提案をしないと、今回の郵便局のような事態が起きてしまいます。
提案を受ける側も最新の技術に感心して、派手な部分ばかりに目が行ってしまい、予測されるであろう諸問題を検討せず、開発にGOサインを出してはいけません。

プロジェクトが一度動き出し、役員まで決裁が行ってしまうと、もう検討する時間は残されていません。
郵便局はヒューマンエラーを考慮し、熟練者ではなくても扱えるものをもっと時間をかけて検討すべきでした。
そして研修にも、もっと時間を割くべきでした。
研修の際、講習を受けた方から、ヒューマンエラーに対する質問があったそうですが、「そういう間違いが出ないように、ちゃんと研修を受けてください」と言う陳腐な返答があったとか。

なんでも今回のシステム、Tabキーでしか移動できないと言う、ヘッポコ仕様だとか。
素人の私でも、顔がひきつってしまう内容です。
この部分だけを見ても、いかに現場を考慮せずにシステムを作成したのかがうかがえます。

多くの人が携わるプロジェクトは、検討に時間をかけすぎて損はありません。
そして、天才一人や、声だけ大きい馬鹿者を中心に話しを進めるのもいけません。

仕事の解決方法は、いかに多くのアイディアを出せるだけ出し、検討する材料を増やすかにかかっています。
そして、その中からベストなものを選び出す。
ビジネスにスピードは必要ですが、大きなプロジェクトに関しては、答えはなるべく先送りした方が懸命です(ただし、期限が決められている時は、この限りではない)。

郵便局の現場は、運送会社も小泉元首相に対しても敵意はないと思います。
敵意の向けられた先は、今回のような、現場を無視した愚作を推し進めた本部ではないかと。
きっとこれから、そういう不平不満がさらに表面化し、我々利用者にも不便なことが起こるのではないかと心配です。

今回の郵便局の騒動は、私自身の仕事の進め方を見つめなおす良い機会でした。

Posted by kanzaki at 2007年11月06日 18:26