2008年04月15日

新人研修について思うこと

●映画興行成績:「仮面ライダー電王」女性人気で堂々1位
http://mainichi.jp/enta/cinema/news/20080415mog00m200006000c.html

12、13日の映画観客動員数は、人気特撮ドラマ「仮面ライダー電王」と「仮面ライダーキバ」が夢の共演を果たした「劇場版 仮面ライダー電王&キバ クライマックス刑事(デカ)」(金田治監督)が初登場1位となったことが14日、興行通信社の調べで分かった。メーンの支持層である子どもたちのほか、出演する若手俳優のファンである女性客が後押しした。

遂に、特撮ヒーローものが一位になる時代が来ましたか。
この映画はもともと、オリジナルビデオ作品として販売・レンタルされるだけだったのですが、ファンの後押しもあり、急きょ劇場公開となりました。
平成仮面ライダーシリーズの中で一番、平均視聴率が悪かったのに、次々と出る関連商品が売れまくり、商業的には大成功を収めました。
先日、紀伊國屋書店へ行きましたところ、既に昨シーズンの作品にも関わらず、関連書籍をズラリと陳列した特別ブースを作っていました。
未だに人気は衰えそうもありませんし、なんとなく、まだまだ続編を作りそうな予感です。


さて本日のお題。

●特集ワイド:今年は「カーリング型」 新人研修をのぞいてみた - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/life/job/news/20080415dde012040015000c.html

「社会経済生産性本部」は今年の新人を「カーリング型」と分析している。冬のスポーツ、カーリングにたとえ「周りが育成の方向性を定めてそっと背中を押し、ブラシでこすって働きやすい環境づくりに腐心しないと減速したり停止しかねない」という意味のようだ。
「最近の若い人は傷付きやすく、意味のないことを嫌がる。相手を肯定する形でコミュニケーションを取り、成長を実感できる教育計画などのシナリオ作り、演出が大事」とは、人材育成事業を行っている日本能率協会マネジメントセンター(本社・東京都港区)のコンサルタント、入谷亨さんの分析だ。
人材開発情報誌「企業と人材」(産労総合研究所)の野沢和男・編集委員は、新人について「あいさつなど、家庭での教育が不十分な上、メール文化の弊害で対面でのコミュニケーション力が低下している。職場の人間関係でも溝を広げやすく、早期退職につながるケースも多い」と指摘する。


今回、取材を行った研修の1日の費用は、1人4万5000円だそうです。
随分と高いですねえ。
数日前、テレビでもこういった研修を取材していました。
その時の研修も、確か7万円ぐらいと高額でした。

ベンチャー系の企業は、人材育成を出来る部門が社内に無い為、外部へ委託する傾向があるそうです。
「名選手が名監督になれるとは限らない」と、大昔から言われている事ですが、ベンチャー企業のオーナーには、そういう傾向が強いのではないかと勝手に思っています。
基本的に、王道を嫌ってのし上がった人たちですから。

毎日新聞で紹介された研修の中身を見ますと・・・


・この研修は意識改革に焦点を当て、スキルを学ぶ土台となる心の持ち方に働きかける内容

・研修のテーマは、三つ。
(1)物の見方をどう変えるか(パラダイム転換)
(2)自分を律するにはどうしたらいいか(自律)
(3)オーナーシップを持つとは(当事者意識)
いずれも、新人たちの心に語りかける内容

・「前向きに考えることが大切だ」と漠然と言うのではなく、どうすれば前向きに考えられ、どんな結果を得られるかを演習を通して説明し、実感させてくれる


・・・うーむ、どうも私には魅力に感じない内容です。
その理由は、既に自分自身で分かっているからです(分かった上で、反論も自分の中にあります)。
それが経験から得たものなのか、書籍から得たものなのかは忘れましたが、それらが血や肉となった今、わざわざ研修へ行って、概念的なものを学ぶのは正直辛いです。

実は管理職になる前、似たような研修を何日間かの泊まり込みで受けた事があります。
その時もやはり、違和感のようなものを感じました。
よく研修で、ロールプレイングをやるでしょ?
普段とは違う役割を演じて、その役割の中で振舞うのですが、その役割についての知識やバックグラウンドが無いのに演じたところで、それはただの「お遊戯」、もしくは「お医者さんごっこ」にしか感じませんでした。

私は年齢を重ねたからそう思うだけで、そういった事を若いうちに教えてもらえる事は、彼らにとっては確かにメリットがあるのかもしれません。
しかし、こういった概念的なものや、自分の思考方法を変えさせる研修と言うのは、私にしてみれば「教育」ではなく「調教」だと思います。

調教とは、サーカスにおいて猛獣や動物を見世物にする際に行なわれる訓練のこと。
動物の意思と反することを鞭で打ちつけて教え込むのです。

人間の躾(しつけ)というものは、S-R連合理論の考えに基づいたものです。
S-R連合理論とは、学習を習慣的な反応形式と考え、刺激(S)と反応(R)の結び付きを重視すること。
信賞必罰を原則として、施行者にとって良い反応であれば、被訓練者に報償を与え、悪い反応であれば罰を与えるという古典的条件づけを行なうことで、人間の行動を制御するのです。
まさに、動物と同じ「調教」ですね。

人間に対して「調教」という言葉を使うのは、あまり好ましくありませんよね。
他に「洗脳」という言葉も嫌われる。

会社の仕事を行うのに、社員の考え方を変える方法を教え込むのは、良くない事だと思うのです。
確かに現在、新入社員の多くが、最初に入った会社をすぐに辞めます。
だからこそ、こういった形式の研修がもてはやされるのでしょう。

しかし私は、若い人たちが会社を辞めることを悪いことだとは思いません。
「沈没する船にはネズミは住まない」とか、「ネズミは沈没する船からいち早く脱出する」等と言います。
結婚して子供を授かり、家のローン等の金銭的な鎖に縛り付けられる前に、自分が本当に活躍できると思う場所を探すのは、良いことだと思うのです。
会社を辞めるのを推奨しているのではなく、選択肢として常に持って置くのは良いことだと。

「最近の若い者は、根性が足りない」と言う老年もいます。
本当に人格者である人ならぱ、その発言も受け入れましょう。
しかし、居酒屋で会社の愚痴や家族への不満をネチネチと言うような人からは、そんな言葉を言われても何とも思いません。
多くは後者だと思うのです。
だから、そんな老年の意見に対して卑下する必要はありません。

今回の記事にあったような訓練をするのに、会社がお膳立てした研修で身につける必要はありません。
それこそ、こういうのは少しずつ自分の中で自問自答し、死ぬまで模索していくことだと思います。

どうもこういった研修は、企業の人事部門の自己満足に感じるのです。
人を教育するのに流行りに乗ってどうする。

そもそも、「教育」という考えは、大学や大学院で学ぶことなんじゃないかと思うのですが、どうなんでしょう。
知識を学ぶ中から、教育というものを感じ取るのです。
もしくは、そういった理論を直接学ぶのもいい。

企業はまず、目の前の利益を確保しなければいけません。
一年周期で業績の良し悪しを判断し、悪ければ銀行からの融資が切られてしまうからです。
大学の教育には、そういう考えはありません(まあ、「単位」はありますが・・・)。

まだ、目先の利益を重視する環境にいない学生の皆さんは、今のうちに「教育」を受けておくべきだと思いますよ。
企業に入ると、いろいろカモフラージュはされているものの、結局は「調教」される可能性が高いのですから。
教育を受けておくことで、調教という事が当たり前の環境から回避できるはずです。

Posted by kanzaki at 2008年04月15日 12:32