●入院患者射殺に無期懲役求刑 佐賀・武雄の事件
http://www.asahi.com/national/update/0521/SEB200805210015.html
佐賀県武雄市の病院で昨年11月、入院患者の宮元洋さん(当時34)が射殺された事件で、暴力団関係者と間違えて射殺したとして殺人などの罪に問われた指定暴力団・道仁会(本部・福岡県久留米市)の組員、今田文雄被告(61)の論告求刑公判が21日、佐賀地裁(若宮利信裁判長)で開かれ、検察側は「暴力団と無縁の一般市民を、一方的思いこみで殺害した極めて冷酷な犯行」として、無期懲役を求刑した。
この事件はショックでした。
何せ、全く関係の無い人が、「人違い」で殺されたのですから。
遺族は死刑を求めていたので、この求刑に対して不満を記者会見で述べていました。
死刑を求めている遺族。
公平な判断で無期懲役を言い渡した裁判官。
この両者には、大きな隔たりがあるのは間違いありません。
(どちらが正しいとかではありません)
もしあなたが裁判官だった場合、死刑を言い渡す事ができますか?
複数人で決めて言い渡すから精神的苦痛は少ないと言われたって、普通ならば、とても怖くて出来ません。
言い渡したら言い渡したで、相当な精神的苦痛や後遺症を残しそうです。
架空の話しのような事をしているように思えるかもしれませんが、それは間違いです。
現実にあなたが死刑を言い渡す可能性は、十分にあるのです。
ちょうど今日から一年後の2009年(平成21年)5月21日、「裁判員制度」が施行されるのです。
●裁判員制度 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%81%E5%88%A4%E5%93%A1
裁判員制度(さいばんいんせいど)とは、一定の刑事裁判において、国民から事件ごとに選ばれた裁判員が裁判官とともに審理に参加する日本の司法・裁判制度をいう。裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号。以下「法」という)により規定され、一部の規定を除いて2009年(平成21年)5月21日に施行され、同年7月下旬以降に実際に裁判員が加わる裁判が開始される予定。
現在、実際に始まる前の模擬裁判が繰り返し行われています。
我々は裁判の素人。
そういう人達が法廷にて、円滑に裁判を執り行えるようにする準備です。
しかし未だに、その模擬裁判でやっていない事があります。
それは、「死刑の宣告」です。
理由は、死刑という状況は、模擬裁判という形の中では想定・対処できないからと、意味の分からない事を言っています。
昨年、死刑判決が21件ありました。
この死刑というのは、それを言い渡す裁判官にも相当な心理的負担があります。
裁判官はそれでも、そういう場面に出くわすことに対して訓練を受けているから、まだ耐性があります。
しかし我々庶民が、そういう事に出くわすことなんて、普通はありません。
来年から始まる制度なので、未だかつて、誰も体験をしたことが無いのです。
被害者の遺族ならばともかく、全く関係の無い第三者である我々が、事件の関係者を前にして「死刑」と「無期懲役」のどちらかを選択しなければいけないかなんて、簡単に判断が下せません。
もし自分が担当することになったら、そんな重大事件を担当したくありません。
裁判員制度に関して本日、幾つかの関連記事を見かけました。
●<裁判員制度>司法解剖の遺体写真、イラストやCGも活用
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080521-00000015-mai-soci
来年5月に始まる裁判員制度で、日本法医学会(理事長・中園一郎長崎大教授)と最高検は、市民から選ばれる裁判員の心理的負担を軽くするため、遺体の写真の代わりにイラストやコンピューターグラフィックス(CG)を使った立証を積極活用する方針を決めた。学会は、司法解剖の結果を裁判員に分かりやすく伝えるため、初めての一般向け法医学用語集の作成にも乗り出した。
裁判員に、フィルタのかかった資料を見せて、ちゃんと正しい判断ができるのかと疑問が残ります。
真実は、直視した時に姿を現すものですからね。
しかし実際問題、死体だのなんだのグロ画像を見せ付けられれば、気持ち悪くなることは必至。
私なんてきっと、卒倒することでしょう。
●日弁連、裁判員制度の理解を高めるため、マスコットキャラクター「サイサイ」を発表
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00133223.html
日本弁護士連合会は21日、2009年5月21日から始まる裁判員制度の理解を高めるため、マスコットキャラクター「サイサイ」を発表した。また、裁判員制度では、被告の服装も大幅に緩和される。 日弁連の宮崎 誠会長は「決して『ダサイ』と言わないでほしい」と話した。 この制度で新たに変わりそうなのが、被告の服装で、拘置中の被告は現在、自殺や逃走を防ぐため、ノーネクタイ、サンダル履きだが、見た目で犯人視されないよう、大幅に緩和されるという。
●被告のネクタイ着用もOKに、法務省 日弁連の批判受け
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080520/crm0805202251047-n1.htm
裁判員制度の実施に合わせ、法務省は法廷に立つ勾留(こうりゅう)中の被告の視覚的印象に配慮し、服装などを大幅に変更する方針を固めた。裁判員に予断を与えないための措置で、現在は法廷内で行われている手錠の取り外しを裁判員の見えないところで行うことを検討しているほか、自殺や逃亡を防ぐためノーネクタイにサンダル姿が多かった被告の服装も、ネクタイの着用を認めることになりそうだ。
「サイサイ」・・・本気でこんなことで理解が高まると思っているのでしょうかね。
誰だ、こんなの発案、実行した人は?
私は裁判員制度に対して、基本的に懐疑的です。
日本の裁判は、真実を白日の下にさらす為にある機関だと思うのです。
そして、それを可能にするには、プロフェッショナルが集まって取り組むのが最適ではないでしょうか。
上記でご紹介しましたように裁判員に対して、いろいろな配慮がなされています。
考慮するのは、そもそも無理があるから。
そういう事に向いていない人達にやらせようとしているからです。
やはり裁判は、裁判官の仕事だと思うのです。
今回の制度、選任されれば基本的に拒否できません。
しかしこの国には、「職業選択の自由」というものがあります。
基本的人権の一種であり、日本国憲法第22条第1項で定められています。
今回の事って、それに反していると思うのは私だけでしょうか?
極端な話し、会社の経理をやっているサラリーマンが、いきなりジャンボジェットのパイロットをやらされるようなもの。
いくら素人とは言え、自分の操縦ミスで人を殺したら、その人の精神は崩壊するでしょう。
人の心はもろいのです。
既に後戻りはできない状態なのでしょうが、始まったら必ず問題・・・否、事件が起きるかもしれません。
「相棒 season6」にて、裁判員制度が試験導入されるのだが、それが原因で事件が発生するエピソードがあります。
法務省が想定し得なかった、制度の施行を脅かすほどの不測の事態が続々と発生してしまうという内容。
現実にならない事を祈るばかりです。
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