2008年05月28日

円滑な業務引き継ぎの方法

4月18日、食品メーカー「ネスレ日本 姫路工場」の社員2人が、家族の介護を理由に転勤命令の無効確認を求めた訴訟の上告審で、最高裁は会社側の上告を退ける決定をしました。

●介護中の従業員への転勤命令無効、ネスレの上告棄却・最高裁
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080418AT1G1803518042008.html

転勤命令の拒否は、どこまで許されるものなのでしょうか。
今回のような親の介護という問題は、誰にでもありえる話しですし、気になりますよね。

雑誌「PRESIDENT」の最新号によりますと、2001年に成立した改正育児・介護休業法により、転勤命令についての取り扱い方が変わったのだそうです。
以前から、家族や本人に健康上の問題がある場合、転勤命令が無効になる例はありました。
しかしこの法改正により、企業側に求められる配慮義務のハードルが高くなったのです。
育児についてはまだ不透明ですが、今回のような介護を理由にした転勤拒否については、企業が負けるケースが増えてくる予想です。

訴訟の負担(金銭・精神)を考えれば、最初から転勤を命じられない環境づくりをする方が得策です。
会社へ事前に、家庭の事情を報告しておくのが良いでしょう。
プライバシーの問題もありますから、それを拒む人もいるでしょう。
その為にも、個人情報保護法に配慮した情報収集体制が、企業側にも求められます。

また、「労働審判制度」を使うのも手です。

●労働審判制度とは(ジョブゲッター.COM)
http://www.job-getter.com/m/wiki/r12.php

解雇や賃金不払いといった労働者と使用者間のトラブルを迅速に解決することを目的に、2006年(平成18年)4月からスタートした新しい制度のこと。
労働審判制度は法的拘束力を持っているため、不服であるならば民事裁判にも移行できる。通常の裁判との違いとしては、迅速な解決が得られるのが特徴で、小さな紛争には威力を発揮するだろう。
開始から1年強経った2007年6月現在、すでに1,100件を超える申し立てがあり、手続きが終了したうちの約80%以上が解決していることから、その成果は期待以上のものといえる。

個別の労使紛争を3回以内の審理で解決します。
しかも審理非公開で、家族のプライバシーも守られます。
裁判のようなYES・NOではなく、今後の処遇も含めて柔軟な解決を図るため、勤務先は同じで配属先を替える等の交渉も可能です。

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さて本題。
殆どの会社員は、労使契約の際に「勤務地限定特約」が無いはずです。
よほどの事情が無い限り、転勤命令を拒否できません。

転勤につきものなのは「業務の引き継ぎ」です。
自分が日々行ってきた仕事のやり方を短期間のうちに、後任者へ伝えなければいけません。
かなり前の「NIKKEI プラス1」に、要点が書かれていました。

●引き継ぐ側

・仕事のやり方は誰でもわかるようにまとめる

・引き継ぎ資料に加え、取引の現状なども伝える

・十分時間が割けない場合は、成功・失敗談だけでも伝える

・引き継ぎ資料は上司にも渡しておく

・引き継ぎ後も、フォローを忘れない


●引き継ぎを受ける側

・受け取った資料はよく読む

・我流を出すのは、前任者のやり方を踏襲してから

・1度は前任者に会うように調整する


以上です。
伝授のコツは、話したいことの8割程度の内容にとどめることです。
一度にすべてを話しても、伝わりにくい場合があるからです。

やはり、仕事のやり方を誰にでもすぐ伝えられるように「仕事のマニュアル」を作っておくのが一番です。
いきなり転勤命令があった場合を考えると、日々、少しずつまとめておくのが良いでしょうね。
しかし、一気に書き出そうと思っても、なかなか書けないものです。
仕事には、一日、一週間、一ヶ月、季節ごと、年一回のものがあります。
その仕事をしつつ、まとめていくのが一番ですよね。
そうすると、細かい注意点等も書き出せますから。
そうすると、やはり一年がかりになるのでしょうかね。

私が昔いた部署の部長は、各担当者に必ず「仕事のマニュアル」を作らせていました。
そして更に同じ部署内で、業務の分担を定期的に変更していました。
これにより、もし誰かが何らかの事情で仕事が出来なくなっても、他の人(しかも一人じゃない)が素早く対応することが可能なのです。
今思えば、部長の考えは非常に正しい。
知識・情報を共有する事により、突然のトラブル対処だけではなく、業務改善もみんなで知識を持ち寄って考えられます。

私が今の部署に異動した際ですが、なんと既に前任者はいませんでしたorz
しかも、仕事のマニュアルは一切ありません。
日常業務の半分は、上司から教えてもらったので何とかなりましたが、残り半分に関しては非常に困りました。
日々、手探りで仕事を覚えたのを記憶しています。
ただし、それはそれでメリットがありました。
前任者が高齢だった為、全くパソコンを使っておらず、人手を要して業務を行っていました。
私はパソコンやインターネットのおかげで、他の人の手を借りずとも作業効率を高めることができました。
おかげで「業務引き継ぎ」と「業務改善」を同時に行えました。
勿論、そこに行き着くまでに、色んな人の協力があったのは言うまでもありません。
大変、感謝しています。

今思えば、かなり奇跡的な業務の引き継ぎなのですが、いつも奇跡が起きるとは限りませんので、やはり仕事のマニュアルは作成しておかなければいけないと思っています。

マニュアルは、自分がその仕事をちゃんと理解していなければ書けませんよね。
まとめ上げて形になることで自信もつきますし、業務改善のポイントも見えてくるはずですよ。
私も少しずつ、マニュアルを作ろうと決心した次第です。

Posted by kanzaki at 2008年05月28日 22:19