2009年03月05日

相次ぐ健康保険組合の解散

本日の「クローズアップ現代」は、解散する健康保険組合が多いという内容です。

健康保険には三つあります。

1.健康保険組合・・・大企業、同業種グループ
2.協会けんぽ・・・中小企業(国の支援を受けて運営)
3.国保・・・自営業、定年退職した人等

これらの運営をゆるがす問題が発生しました。
それが高齢者医療制度。
去年4月、国が導入しました。
それにより、健康保険組合と協会けんぽが各々1兆円ずつ負担することになりました(国保は2兆円)。
既に大赤字だった国保だけではなく、健康保険組合と協会けんぽまでもが厳しい運営を迫られることになりました。
それにより、全国1500の健康保険組合のうち9割が赤字に陥ることになりました。

テレビで紹介されていたタクシー会社健保組合は、保険料率8.2%を徴収。
会社と従業員が半分ずつ負担して、27億円の収入を確保してきました。
その中から加入者の医療費の他、国に高齢者の医療負担を拠出。
昨年は9億9千万円でした。
それが新しい制度によって、13億5,000万円も負担することになりました。
巨額の負担をどうまかなうか。
やむを得ず、積立金に手を出しました。
しかし2億円を超える蓄えを使っても大赤字。
そこで健康保険組合は、保険料率を上げる事を考えました。
保険料率を8.2%から8.3%に変える事により、3,000万円の確保が出来ます。
しかしその半分を会社が負担するのですから、会社も大変です。
会社に理解してもらわなければいけません。
しかし、不況で売り上げが落ち込む中、なかなか経営陣は首を縦には振りません。
健保の解散も選択肢として出てきました。

埼玉県の運送会社500社で作られる「埼玉県トラック健保」。
高齢者医療制度により、拠出金が5億7,000万円もアップしました。
負担をまかなえず、3月末をもって解散することになりました。
4月からは、協会けんぽに移る事になります。
人間ドッグ、インフルエンザの予防接種、生活習慣病予防の健診、健保組合独自の手厚い補助がなくなりました。
今年度解散した健保は既に14。
来月は更に8つの組合が解散します。

財政が豊かで安定していたので、財源としての部分があった健康保険組合。
健康保険組合は保険活動、予防活動に力を入れているので、ある意味、医療費の伸び率を抑える効果もありました。

どうして高齢者医療制度の負担を健康保険組合が負おうことになったかといいますと、未曾有の少子高齢化社会による医療費の増大により、国保の負担を健康保険組合に付けまわしたのが理由です。
取れるところから取ろうという事です。
付け焼刃的な対策です。

健康保険組合が解散すると、協会けんぽへ移ることになります。
健康保険組合は付加給付と言いまして、法律にそった医療サービスの他に、薬箱の提供、人間ドッグの助成等がありましたが、協会けんぽへの移行によりなくなります。
協会けんぽに人がどんどん移りますと、協会けんぽは今は8.2%の保険料率ですが、もっと上昇する可能性があります。
結局、協会けんぽに加入している人達の負担率も上がることになります。

健康保険組合は独自運営なのに対し、協会けんぽは国からの負担(国庫負担)が13%(9千億円)あるのですが、それは税金です。
つまり国民の負担が、税金という形で増えるわけです。

協会けんぽに収める保険料を少しでも抑えようと、各中小企業は画策しています。
パートタイマーの増員で、会社の負担を抑えようとしたりしています。
中には、社会保険料の削減の為、正社員で契約している雇用形態を業務委託経営に変更しようと考えていた会社もありました。
これにより保険から外そうというわけです。
社員は個人事業主と扱われ国民健康保険へ移ります。
保険料は全額個人負担。
今まで保険料の負担を会社が半分支払っていたのを無くそうという荒業です。
しかし、社会労務士によりますと、行政に偽装請負と見なされ指導を受ける可能性が高いので、それはやめた方が良いとアドバイスしました。
請負契約になると、社員の保険負担料は月に1万円以上増えることになり、社員も戸惑っています。
今後もこの会社は、この件について検討を続けるそうです。

違法な保険料改ざんを行っている企業も出てきました。
社会保険事務所へ提出する書類の中で、月々の給料を事実より減らして申告し、保険料の負担を何百万円も免れている会社もあります。
昨年、実際の給料と申告の金額が違うとして3万4千もの企業が指摘を受けたそうです。

健康保険組合から協会けんぽへ流れる数が多くなっているせいもあり、協会けんぽの内、保険料率8.2%よりも高いところが約2割あります。
そこへ税金を投入して、短期的な対策も必用。
しかし場当たり的なものなので、中長期的には抜本的に改革する必要がありそうです。

私は今、健康保険組合に加入していますが、今の会社の業績を見ていますと、解散も近いと感じます。
賃金の減少や、健保などのサービスの低下・・・普通に暮らす事が難しくなってきているのに、それでも仕事のレベルは落とせないという、辛い時期。
こんなんでヤル気を維持するのは難しいですよね。
環境の変化に対応するには、会社や行政に期待するより、まずは自分自身の考え方を良い方向へ変える方がてっとり早い。
他人とか過去に縛られず、つかの間の休息時に、あれやこれやと考えてみたいと思っています。

Posted by kanzaki at 2009年03月05日 21:31