2009年08月22日

三浦展・著「シンプル族の反乱」を読んで

シンプル族の反乱
作者: 三浦展
出版社/メーカー: ベストセラーズ
発売日: 2009/07/09
メディア: 新書
新書: 216ページ
ISBN-10: 4584131813
ISBN-13: 978-4584131817
商品の寸法: 17.2 x 10.8 x 1.6 cm


商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
自動車販売は減っているが自転車は人気だ。百貨店は苦しんでいるがユニクロは絶好調だ。エコ志向、ナチュラル志向、レトロ志向、和風好き、コミュニティ志向、先進国より世界遺産、農業回帰…新しい価値観が台頭してきたのだ。シンプル族が日本を変える。


三浦 展(みうら あつし、1958年9月25日 - )は、マーケティング・リサーチャー(著作では「マーケティング・アナリスト」と自称)、消費社会研究家、評論家。マーケティングリサーチやマーケティングプランニング、コンサルティング等の受託業務等を行う株式会社カルチャースタディーズ研究所代表取締役を務める。
新潟県出身。新潟大学教育学部附属高田小学校、同中学校、新潟県立高田高等学校を経て、1982年に一橋大学社会学部を卒業し、パルコに入社。同社のマーケティング雑誌「アクロス」編集室で勤務し、入社4年目の1986年に「アクロス」編集長に就任。1990年にパルコを退社し、三菱総合研究所主任研究員に就任。マーケティングや労働行政等の調査・研究にあたる。1999年には三菱総合研究所を退社し、独立。マーケティング会社、株式会社カルチャースタディーズ研究所を設立し、同社の代表取締役に就任。現在は、マーケティング調査、商品企画などを行うほか、家族、都市問題を独自の視点で捉え、『下流社会』(光文社新書)(80万部のベストセラー)や『ファスト風土化する日本』、『下流大学が日本を滅ぼす!』などの本を出版している。


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著者が新潟出身であること。
そして内容が、私の生活の心情としているシンプルライフなので読んでみました。
(勿論、図書館から借りました)

昔の若い人達は高級志向が高くてブランド好きでした。
ワイン、シャンパン等を格好をつけて飲み、タクシーも頻繁に使う。
いわゆるバブリー族です。

年齢で言えば私よりも上の45歳前後。
企業の部課長クラスにあたると思うのですが、彼らから見た場合、部下である団塊ジュニア以降の世代が理解できません。
地味でケチケチして、貯金ばかりしているように見えるそうです。
しかしもう今の時代、バブル族は旧体制として乗り越えられるべき存在になってしまった事を自覚しなければいけません。

いわゆる中流階級というものの中身が変化してきており、生活の質を物質的にではなく精神的に高めようとするシンプル族が生まれました。
シンプル族は大衆消費をあまり好みません。
しかし全く何も買わないのではないし、嗜好品も買います。
しかし、流行だから買うとかそういう感じではなく、自分の生活に合うものだから買うというスタイルです。
モノにあわせて生活を変える訳ではありません。
本書では実際に集めたアンケート、実態調査から数値的に解説をしています。

これだけモノが世の中に溢れ、人々の生活が物質面で豊かになると、人は高い学歴、高い地位の職業、高い収入を重視しなくなり、むしろボランティア活動、町内活動などの社会活動や趣味のサークルで中心的役割を担うことを重視するようになるそうです。
これから人々にとって重要になるのは、いろいろな人との関係、つきあいになるでしょう。
この人と会うと楽しいとか、ここに行くといろいろな人に会えるとか、自分の視野や世界が広がるとかいった機会を人々は求め、もしかするとそこに代価を支払うようになる。

今、人々が求める「豊かさ」とは、単なる経済政策だけでは実現されず、人と人との関係性の構築によってこそ実現されるものでしょう。
今、選挙活動がさかんで、色々なところで立候補者達が「私が当選したら、日本はこんなに豊かになる」とメッセージを伝えています。
人々の中でも、今のままではいけないと、投票をしようとする意識が過去に比べて高い。
メディアでも大きく取り上げられている割には、何故か今ひとつ盛り上がりに欠けているように感じるのは私だけでしょうか?
私の推測ですが、「投票はするけれど、なんだかんだ言ったって、この選挙で世の中が劇的に良い方向へ変化するなんて期待していない」というのが本音なのではないでしょうか?
バブルの再来なんて、もう来る訳がないのです。
そもそも、あのバブルの時の酒を浴びるように飲み、豪遊をして、馬鹿みたいにはしゃぐ姿に、逆に嫌悪感を感じる人も多いはず。
あんな中で自分が楽しめ、豊かな生活を過ごせるとは感じられません。

著者は今後、シンプル族がつくる社会を「共費社会」と名づけました。
これまでの「消費」から「共費」への変化。

・物の私有のみにこだわらず、借り物や共有でもいいと考える。
・他者とのつながり、共同(協働)、共感に価値を置く。
・そこから必然的に、資源、地球環境を、自国だけ、人間だけのものと考えず、地球上の他の人間、他の生物との共有物であると考える。
・したがって様々な国や地域の文化を認め、積極的に取り入れようとする。
・新しい物をいたずらに追い求めるのではなく、古い物の価値を認め、味わおうとする。
・機械文明に過度に依存せず、生活の基本を大事に、手仕事を重視する。

シンプル族が増えると、古い体質の企業は恐れおののきます。
買ってもらわないと企業の収益にならないのに、シンプル族は消費というものをそれほど好まないのですから。

シンプル族に買ってもらうには、エコ商品の開発、環境問題への取り組み、社会貢献、世界の文化に対する姿勢が重要になってきます。

更に重要なのは、寿命の長い商品を作ること。
長く使えて、飽きの来ないシンブルな商品展開。
これは企業には諸刃ともいえるものですが、それでも経営が成り立つ新しいシステムの模索をしなければなりませんね。

私はシンプル族の第一世代だと思います。
最初の頃は、ロハス、シンプルライフというのは、どちらかと言うとお洒落の一種だったと思います。
それがいつしかメインストリームになってきました。
私より上の世代で同じ事をすると、同年代からは「貧乏臭い」と言われるかもしれません。
しかし、私より下の世代は、仕事を見つけるのもままならず、就職しても仕事の量の割に給料が上がらない、むしろ下がってきている。
こんな中で馬鹿になって遊びまくったり、消費に費やすのはむしろイビツです。
数が社会を制するのならば、十年後は確実にシンプル族が中心となり、当たり前になっている事でしょう。
今はちょうどその移行期間というところでしょうか。
「他の人が持っているから」というのが消費原動になりえるならば、その逆もしかり。
周りがシンプルな生活になれば、自分もそうなっていくものです。

私はこの最近、マイカーを手放したのですが、地方在住では珍しい方かと思います。
私の場合はたまたま、立地的に問題がなかったからですが、いつしかマイカーを持たない事が当たり前になるかも。
その為には地方と言えど、公共機関の充実、公共機関だけで行けるお店の立地改善等が必要です。
そうやって少しずつ、世の中が変化していくと思います。

社会は政治ではなく、一般大衆の意識の変化が大きく影響する・・・そういう事をこの本で再確認しました。

Posted by kanzaki at 2009年08月22日 11:09