勝間和代さんが、「キャズム越え」というタイトルで新聞のコラムを書いていました。
商品がどれだけ普及しているかを5段階で見ることができるそうです。
(1)イノベーター:
とにかく新しいものが大好き
ex.燃料電池
(2)アーリーアダプター:
人よりもいち早く使って得をしたい
ex.全自動掃除機
(3)アーリーマジョリティー:
そこそこ小慣れてきたので、早めに使ってみたい
ex.ホームベーカリー
(4)レイトマジョリティー:
みんなが使っているから、使ってみよう
ex.家庭用パソコン
(5)ラガード:
本当は使いたくないけれども、仕方が無いので使おう
ex.携帯電話
このように顧客を五段階に分けてみるのです。
(1)(2)の段階ですと商品は高価ですし、まだ使い勝手もよくない。
そのユーザー達の意見を取り入れてメーカーは改善をする。
徐々に量産効果で値段も安くなり、操作も優しくなります(これが(3)の段階)。
多くの商品は(2)から(3)への移行に失敗するそうです。
この(2)と(3)の間の溝を「キャズム」と呼びます。
●キャズム とは | マーケティング用語集 | ミツエーリンクス
http://www.mitsue.co.jp/case/glossary/m_023.html
米のマーケティング・コンサルタントであるジェフリー・ムーア氏が、同名の著書によって、明らかにしたのは、イノベーターとアーリー・アドプターで構成される初期市場と、アーリー・マジョリティやレイト・マジョリティによって構成されるメジャー市場のあいだには、容易には越えがたい「キャズム(深いミゾ)」あるということでした。
顧客セグメントの違いによって生み出される、このキャズムを超えなくては、新しい商品はメジャー市場でブレイクすることなく、規模の小さな初期市場のなかでやがては消えていく運命となります。
同著が、10年間にわたって米国ハイテク業界のバイブルとされたように、特にテクノロジーの進歩の激しい業界においては、強く意識することが重要なマーケティング理論です。
作り手は、どうやってこのキャズムを越えて儲けを出せるかを競っています。
消費者側でも、新しい技術にわくわくをして、例え値段が高かろうが、操作性に問題があろうが、そんな事を気にせずに買う人達がいます。
彼らは自分達を自虐的に「人柱」と言って、楽しんでキャズム越えをしそうな商品を探そうとします。
こういう人達は本当にそれを楽しんでおり、人間としてのキャラも面白く魅力的な人が多いです。
そして、そういう人達に限って、社会的地位が高かったり、収入が多かったりするんですよねえ。
そういえば以前、「9倍効果」について書きました。
●神崎のナナメ読み: 「9倍効果」とは〜新製品は従来製品の9倍価値がないと売れない
http://kanzaki.sub.jp/archives/001921.html
・日本において新製品のヒット率は26%というデータがある。つまり4分の3の商品が、満足のいく結果ではなかったということになる。
・買い手は、既に所有しているものを通常の3倍も過大評価しているから、機能が少し追加されたり、不満点が改良されたぐらいでは新製品を購入しようとは考えない。
・売り手は思い入れが強すぎて、3倍の過大評価となってしまった。そして買うほうも、既に所有しているものを3倍に過大評価してしまう。これを掛け合わせると、売り手と買い手の知覚価値には、9倍のギャップが存在する。ハードード大学のジョン・グルビル教授はこれを「9倍効果」と名づけた。新製品定着には、この9倍の壁を乗り越えなくてはいけない。
・【神崎の結論】欲しいなあと思ったものに対して、「これは自分の生活にとって有益かどうか」を感覚的に捉えるのは難しい。けれど「今、自分の手元にある旧機種と比べて、性能的に9倍以上優れているか?」と数値的に比較してみればいい。そうすると殆どが、この「9倍」には満たない事が分かってくる。9倍の効果に満たないものに消費せず、もっと自分に有益となるものだけを手にするように考えてみるのも良いと思う。
家電製品、デジタルガジェット等は、キャズム越えができるかどうかのサバイバルが日夜繰り広げられています。
「家電芸人」という人達がもてはやされているのは、キャズム越えをしそうな商品を見つけるアンテナに長けているだけではなく、それを面白おかしくプレゼンできる能力があるからです。
そういう家電製品には興味があっても、なかなか敷居が高くて触れることが出来なかった女性のみなさんが、家電芸人の言動に注目するのはうなずけます。
●家電芸人 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%B6%E9%9B%BB%E8%8A%B8%E4%BA%BA
家電に限らず、例えばマイナーなロックバンドに注目し、そのバンドがヒットした場合、「私の目に狂いは無かった」と自慢したくなるものです。
誰もが、そういう「青田買い」という行為に、一種の美徳を感じるものです。
残念ながらここ数年は不況のせいか、作り手も消極的で無難なものばかりをリリースしますし、買い手もお金がありませんから、自ら人柱的な行為をすることを抑えています。
このような悪循環の中で、魅力的なヒット商品が出る可能性は低くなるのも当然です。
私はキャズム越えする家電を追い求めるのは卒業しました(た、多分・・・)。
その代わり、新潟で頑張っている人達と出会い、そんな人達を応援したいと思うようになりました。
人にだって、キャズム越えというものがあると思うのです。
成長しようとしている人達のキャズム越えの協力ができればいいなあと思う今日この頃です。
Posted by kanzaki at 2010年03月19日 22:38日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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