2010年05月05日

連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」が面白い

今、面白いドラマがあります。

●連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」
http://www9.nhk.or.jp/gegege/

私は今、ちょっと忙しいのですが、毎日この15分のドラマを見続けています。
俗にNHKの朝ドラと呼ばれているこの枠。
今回のドラマから15分繰り上げとなり、8時からスタートしています。
時間帯が変わったり、前作の低視聴率が影響し、放送当初こそ視聴率的にもあまり芳しくなかったのですが、じょじょに作品の良さが認知され、視聴率も上がってきています。

漫画やアニメでお馴染みの「ゲゲゲの鬼太郎」。
それを描いた漫画家・水木しげる先生の奥さんが書いた自伝が原作です。
私が朝ドラにハマったのは、「ちりとてちん」以来です。
その「ちりとてちん」のテーマソングのピアノ演奏を担当した松下奈緒さんが主人公・布美枝さんを演じています。
そして、水木しげる先生(村井茂)役は向井理さん。

このドラマは、スタートする前から興味がありました。
理由の一つは、主人公が主婦だと言う事。
通常、朝ドラの主人公は、快活な女の子が特定の職業に就いて頑張るのが王道。
しかし、「ゲゲゲの女房」はタイトルの通り、主人公が主婦です。
朝ドラは通常、主人公の女の子が結婚するのは中盤頃。
言ってみれば、大きな流れの中のイベントの一つです。
けれどこのドラマは、その結婚がスタートになっています。

旦那の水木しげる先生は漫画家ですから、確かに特殊な職業です。
先生が主人公で、紆余曲折しながら成功を勝ち取るストーリーならば話しは早いのですが、あくまでそれを支える奥さんが主役なのです。

専業主婦かどうかはともかく、世の中には沢山の主婦・奥さんがいます。
決して特殊な職業ではない。
視聴者と同じ立場の人が主人公となり、テレビドラマとして魅力あるストーリーを作るとなると、どんな工夫をこらすのだろうかと興味を持ちました。

もう一つ興味があったのが、水木しげる先生が戦争で左腕を失うハンディを持っている事実をそのままドラマに使用している事。
ハンディキャップとか非常にデリケートな部分ですよね。
ドラマの設定上、それを外さなかったのが凄いと思いました。
(設定から削除したら、それこそ非難轟々だったでしょうが・・・)

主人公の布美枝さんは、当時としては高身長で、ドラマの中で本人はそれをコンプレックスに思っています。
一方、水木しげる先生は片腕であるものの、利き腕があれば漫画は描けると、それほどハンディキャップは気にしていません。
唯一、その片腕である事で気にすることは、自身が描く戦争漫画は、快活劇ではないこと。
戦争をヒーロー物のようにせず、とても惨めで悲惨なものである事を描き続けていたのは、自身が左腕を失ったからです。

奥さんも旦那さんも、それぞれがコンプレックス・ハンディを持ちながら共に歩む。
それを普通ならば痛切だったり、暗い感じになりそうなストーリーのはずなのですが、予告を見た限り、非常に明るくコミカルに描いていました。
これは面白そうだと思ったのが、視聴の理由です。

実際、コミカルでいいですよお。
決して陰惨な感じにならない。
それはどうしてかと思ったら、主人公の布美枝さんも、旦那のしげる先生も、あまり感情的にピリピリしない性格だからです。
布美枝さんはおっとり、しげる先生はおおらか。
二人とも敬語で話すせいもあり、そんなにぶつかり合わないんですよね。
この二人を見ていると、漫画「めぞん一刻」の響子さんと五代くんを思い起こさせます。
そういや「めぞん一刻」も「ゲゲゲの女房」も、周りの人達が面白いキャラクターで、二人が振り回されるのは同じかもしれません。
今ですと、「ねずみ男」のモデルとなった浦木克夫が、ねずみ男そのまんまな性格で二人を振り回していますよ。

このドラマは小道具の使い方もうまいです。
「ちりとてちん」のような神がかり的な伏線・小道具の使い方ではありません。
けれど、ほのぼのとした方向で、伏線・小道具を有効活用しています。

特に感心したのが先週の話し。
結婚して早々、しげる先生は原稿の締切に追われ、居間と仕事部屋を仕切る襖をパタンと閉めてしまいます。
結婚したのに、殆ど奥さんとの会話・やりとりがありません。
主人公の布美枝さんは、郷土を離れて東京に来たばかり。
寂しい状態なのに、さらに旦那さんまで相手にしてくれません。
いつも仕事をする為、襖をパタンと閉める音と仕草が印象的でした。

とある事がきっかけで喧嘩をした二人でしたが、それを機に二人の仲が深まりました。
その時の象徴が、居間と仕事部屋を仕切っていた襖が開かれた事でした。
襖が開いたまま、旦那さんは漫画を描き、奥さんは台所仕事をする。
ようやくお互いの心が開かれた事を象徴する場面となりました。
その週の象徴となる小道具は本来、「自転車」と「花」だったのですが、私はこの開かれた襖の方が印象的でした。

まだまだ始まったばかりのドラマですが、本来の視聴対象となる主婦だけではなく、男性ビジネスマンにも楽しめると思いますよ。

Posted by kanzaki at 2010年05月05日 21:19