2010年05月30日

劇場版「涼宮ハルヒの消失」の感想

アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の劇場版、「涼宮ハルヒの消失」を見てきました。
この作品に点数を付けるとしたら、今年の映画でナンバーワンの100点ですよ(ただし、今までの小説やアニメのシリーズを見た場合に限ります)。


●涼宮ハルヒの消失・京アニサイト【トップページ】
http://www.kyotoanimation.co.jp/haruhi/movie/

・涼宮ハルヒの憂鬱・京アニサイト【トップページ】
http://www.kyotoanimation.co.jp/haruhi/index.html

・涼宮ハルヒシリーズ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B6%BC%E5%AE%AE%E3%83%8F%E3%83%AB%E3%83%92%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA


原作はライトノベル・・・つまり、主に10代を対象にした小説です。
絵柄も今時の可愛らしい感じ。
ただ、他のライトノベルと違うのは、私のような上の世代にも視聴に耐えうるものだということです。
むしろ30代・40代の方が、すんなり受け入れられるかも。

何故かと言いますと、TVシリーズの1期、2期を見て、「ああ、現代版"うる星やつら"なんだな、多分」と思ったからです。
「うる星やつら」というのは、新潟市出身の漫画家・高橋留美子先生の漫画。
アニメ化もされて大ヒットしました。
アニメ版は、「攻殻機動隊」で有名な押井守監督も携わっていたのですが、彼が携わったエピソードは、今でいうところのオタクネタ、エヴァンゲリオンのような抽象・哲学的なネタ等、難解なものを含んでいました。
特に、劇場版「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」は、現実と虚構の狭間で展開する内容が、当時も高く評価されました。

●うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%86%E3%82%8B%E6%98%9F%E3%82%84%E3%81%A4%E3%82%892_%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BC

「うる星やつら」の舞台は、我々と同じ日常の世界なのだけれど、そこに宇宙人などが登場し、超常現象が巻き起こる学園モノ。
「涼宮ハルヒ」シリーズもそんな、日常を舞台にしながら、美少女・涼宮ハルヒを中心に、宇宙人やら未来人・超能力者が集まり、超常現象が巻き起こるストーリーです。

「涼宮ハルヒ」シリーズは、いわゆるタイムスリップネタが多いです。
同じことを何度も繰り返したり、過去に戻って昔の自分達に影響を与えたり、過去・現在・未来が複雑に絡んでいます。

それゆえ、テレビシリーズを見ていないと、この劇場版も理解がしにくいかもしれません(まだアニメ化されていない小説のエピソードも絡んできます)。
でも、劇場へ足を運ぶお客の殆どが、原作・アニメのファンでしょうから、そこら辺は別に問題ないのかもしれません。

映画は、他の映画の予告等も合わせると、実に3時間になります。
見る前は、トイレとか大丈夫だろうか、レイトショーだから疲れて寝てしまうのではないだろうかと心配しましたが、全くそれは問題ありませんでした。
実によく出来た作品でして、長時間だからと言って苦痛にはなりませんでした。

劇場版だからと言って、新しいキャラクターが出てるわけではありません。
舞台も、主人公達が生活する街や学校ばかりです。
映画を見に来ている人達の殆どには、小説とアニメで見慣れた画面です。
ガンダムのようなドンパチがある訳でもありません。
けれど、日常の中の非日常がこのシリーズの醍醐味なので、それで良いのです。
タイムスリップやら、他のエピソードとのリンクが重要になってくるので、その見慣れた画面の方が逆に面白い。

この劇場版はある日を境に、男の主人公「キョン」の周りで、彼を無茶苦茶な体験に引きずりまわしていたキャラクター達が消えたり、性格が変わってしまうのです。
この変革してしまった世界は、宇宙人やら未来人やら、超能力者もいない、超常現象が起きない普通の世界でした。

彼は、非日常的な生活を嫌々過ごしていたように思っていました。
しかし、こうして普通の世界に身を委ねてみると、なんかしっくりこない。

彼は、以前の非日常的な世界へ戻る方法を探します。
そして、ようやく彼は、その方法を見つけました。
しかしこのまま、平凡な生活を過ごすという選択も出来ます。

彼は、無茶苦茶な体験に振り回される生活が嫌だと思っていました。
けれど実は、彼は非日常的な世界を楽しんでいたことに気づくのです。
そのことを受け入れ、非日常の世界へ戻っていくのです。

そんな彼の心境の変化が、この映画で長時間に渡って描かれていきます。
その心境の変化を長時間だからこそ、唐突な展開無しに描くことができました。

以前の世界へ戻る為の方法を探す部分は、ある意味、ミステリーの犯人探しのようにも感じます。
最初は全く手がかりが無かったのですが、少しずつ、ほんの少しずつ見つけて行く様子は、知的好奇心を私の心のなかに満たしてくれました。

アニメだし、何も知らない人から見れば、「萌えアニメ?」「なんか、エヴァンゲリオンのアスカと綾波のようなキャラだなあ」とか、色々と思うかもしれません。
けれど、それは手段であって、結論ではありません。

最近の映画は、劇中では凄い映像と世界、ストーリーが展開されるものの、それはあくまでスクリーンの中だけであり、見ている我々は置いてけぼりにされている感じがしていました。
けれど、この「涼宮ハルヒ」シリーズは、我々と同じ日常的な世界が舞台ですし、超常現象の類も、男の主人公・キョンという普通の人間の視線で描かれるので、唐突感もなく、少しずつ学習して世界に入り込んでいける。
視聴者を置いてけぼりにしないで、非日常を描いていける手腕は大したもんだと思いました。

新潟市での上映は、今週6月4日(金)まで。
小説やテレビアニメシリーズを見ていた人ならば、間違いなく拍手できる作品なので、是非見てみてください。

Posted by kanzaki at 2010年05月30日 21:40