2011年01月05日

AKB48に入りたがる娘を宝塚に行かせるには

雑誌「PRESIDENT」に、こんな質問がありました。


●質問「AKB48に入りたがる娘を宝塚に行かせるには」


なんかまるで、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』系のラノベのタイトルみたい。

この質問に答えたのは、稲増龍夫さん。
稲増龍夫さんは法政大学社会学部教授。
1952年生まれ。
東大大学院修士課程修了。
専門分野は社会心理学、メディア文化論、現代若者論。
著書は「アイドル工学」など多数。

結論から言えば、AKBと宝塚ではもともと志向も目的も違います。
アイドルの置かれている状況をきちんと説明し、自分の進路についてきっちりと娘と話し合うことが大切です。

それでは、AKBと宝塚の違いをまとめてみましょう。

●AKB48の場合:
アイドルが活躍できるのは期間限定で、通常は十代半ばから二十代前半。
プロ志向というより放課後のクラブ活動的なノリ。
一生、これで食っていくぞといった覚悟はそれほどありません。
メンバーの数が多く、同世代のファンを抱え込んでアイドル予備軍を引き寄せ、瞬く間に消費されてしまう。
その結果、新たにアイドルの世代交代が進みます。

AKBが過去の「おニャン子クラブ」「モーニング娘。」と違うのは、テレビから売り出すのではなく、秋葉原といういつでも会える舞台から出発させ、現場から発信する手法だという事。
さらにネットを使い、口コミによって情報を増殖させ、それと相まってヒットしたというのが特徴です。


●宝塚の場合:
宝塚は若くて15歳、一番年長だと18歳で入り二年間、音楽学校へ通ってからデビューをするので、遅い人では20歳になってからになります。
きちんと養成期間があり、宝塚という集団の中で切磋琢磨して鍛えられます。

かつて宝塚は良家の子女が良妻賢母の教育を受け、劇団で活躍した後に医者や弁護士などとお見合いをして結婚するのが主流で、一握りのトップスターたちが芸能界へ進みました。

舞台で活躍した人がそのまま芸能界へ入るパターンもかなりあるとはいえ、それでも学校教育をしてくれるし、しつけもしっかりしてくれる。
いわば、ひとつのブランドになっています。


●親御さんの視点:
親御さんとしたら、AKBより宝塚を勧める人が多いでしょう。
将来の点で宝塚は、音楽学校に合格すれば必ず宝塚歌劇団に入れるからです。

宝塚は入学試験があり、高校卒業相当までという年齢制限があるのも、受からなければ諦めるだろうという安心感があります。
しかしアイドルグループは浮草稼業で、オーディションに合格してもデビューできるかどうか将来が見えず不安です。

しかし、オーディションに合格してデビューするというスピード感からすれば、宝塚は芸能界の登竜門としては遠回りです。
舞台で訓練を積んである程度成功した後、いろいろな形で芸能活動をしようしても舞台が中心になります。
そういった意味では、テレビ、CDといった華やかな表舞台よりは、かなり地味な活動が主流となります。

子供が何を目指すかによります。
「本当に何がやりたいの?」と突き詰めたときに、歌が好き、踊りが好き、芝居が好きとはっきりとした目標があれば、音楽学校の教育をしてくれる宝塚のほうを勧めるべきです。

AKBなどのアイドルになりたい子の中には、芸を磨きたいということよりも、テレビに出て有名になりたいと考えている子も多い。
アイドルの消費的な人気、そういう生き方はどうなのかを問うてみるのも大事です。


※※※


上記は稲増教授の考えです。
かなり宝塚びいきの説明ですよね。
でもそれは、親御さんの視点ですから納得できます。

それにしても大前提として、なんで「AKB48」「宝塚」だけで、普通の職業は選択肢にないのでしょうかね。

北野武(ビートたけし)さんがこんな事を言っています。

●夢をもて目的をもて、やれば出来る。
こんな言葉に騙されるな。
今の子供は夢を持てといわれつづけ、
個性が大事だといわれつづけていて息苦しさを感じている。
夢なんてそうそうあるものではない。
なくたっていいんだと言ってあげられる人がいない。


●夢は、夢。
目標とは違うんだけど、勘違いしてる奴が
「夢をもっていきなきゃ」なんてごちゃごちゃにしている。


●努力すれば必ず夢は叶う
こんな言葉に騙されるな。
夢なんてそうそう叶うもんじゃない。
夢破れた後の生き方を言ってあげられる人がいない。


●普通であることをもっと認めようよ。
今の社会はさ、子供に夢を持てって言うよね。
でも、その気になった子供が結局悲惨な現実に遭ったりする。
いつから、みんな強制的に夢を持たされることになったんだろうと思うよ。


●夢なんてもう、急にどっかに現れたり消えちゃったりするんだけど、
目標って上がっていけばそこにあるって確信しているからね。 
『夢は夢でしかないよ』って言いたいね。

よく歌詞で「諦めないで。夢は必ず現実になる」とか簡単に言ってしまっていますよね。
完全に記号化しています。

以前、飲み屋に連れて行かれたとき、隣についた女の子が「私は○○になりたい」と言うんですよ。
そして話しが進むと、「実は私、△△にもなりたいの」と言い出しました。
そんな感じで、次から次へ職業を言うのです。
でも、○○も△△もその他も、全く関連性がありません。
「それじゃあ、それになる為、君は何をしているの?」と聞くと、何もしていないと言います。
単に夢を見ているだけで、目標でも何でもないのです。
そういう立場について、ちやほやされたいだけ。
飲んでいた酒が非常に不味くなりました。
案外、そういう感じの若い子って多いんですよ。

飲み屋だけじゃない。
大学生の就職が大変だと言っているけれど、募集定員に対して何倍もの応募が来ているのは主に大手だけ。
中小企業は逆に人手が足りなかったりしています。
大手に入り、ちやほやされたいだけでエントリーしている子も多いんですよ。

北野武さんの言う「夢」と「目標」の違いをちゃんと子供たちに説明してあげないといけない。
こういう話しになると、相手もけんか腰になっちゃうから、なかなか歩み寄れません。
30歳を過ぎてそれに気づいても遅いので、やってみて失敗しちゃうのが一番手っ取り早いかもしれませんね。
知識で説得できなければ、経験を通して体で覚えるのも人生なのかも。

Posted by kanzaki at 2011年01月05日 23:32