私のように音楽に疎い人間でも、ヴァイオリンの名器「ストラディヴァリウス」の名前ぐらいは知っています。
ヴァイオリンドクター中澤宗幸さん(なかざわむねゆき。1940年兵庫県生まれ)。
彼によると、この300年も前に作られたヴァイオリンが、今尚、一流演奏家に愛される理由が幾つかあるそうです。
ストラディヴァリウスの表面には、金属を含む超微粒子が十層以上重なっており、これが音色に関係しているそうです。
使われている木材の密度は驚くほど均一で、年輪による木目の幅の違いが殆ど無いとの事。
これは、製作者アントニオ・ストラディヴァリ(1644?〜1737)が生きている時代、ヨーロッパで続いた氷河期に関係があります。
年間を通じて寒冷であり、寒暖差が小さいために木目が均質に詰まり、弦楽器の制作に最適な材料となったのです。
おかげで現代の木材に比べて、弾力や反発力がかなりあります。
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ストラディヴァリウスは、「ダイヤモンドトーン」と呼ばれる澄み切った響きが特徴です。
旋律を奏でるとき、「楽音(がくおん)」以外の音が、他のヴァイオリンより格段に多いのだそうです。
それを「倍音(ばいおん)」と言います。
この音は演奏家の耳元では、人の声や川のせせらぎのような雑音に聞こえます。
複数の弦を同時に弾く際の重音(じゅうおん)のうねりも強い。
これらの特徴がホールを唸らす重層で多彩な音色となり、我々を魅了するのです。
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これらを聞いて分かったのは、「本当の理由は分からない」という事。
色々なデータは取れてはいるものの、全く同じものを現代の材料と技術で再現出来ないのですから、理由は分からないのと同じです。
アントニオ・ストラディヴァリは2,000挺(ちょう)以上の弦楽器を製作し、今も600挺が現存します。
そして何と日本には、そのうち100挺近くもあるそうです。
1挺が数億円もするのにね。
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私がこのストラディヴァリウスを素晴らしいと思うのは、今なお、超一流の演奏家(ヴィルトゥオーゾ)達によって愛用される「実用品」だという事です。
ある意味、人類の文化遺産とも言えます。
厳重に保管だけされていてもおかしくないのに、ちゃんと楽器として奏でられ、人々を魅了しています。
私は、保管されただけの調度品に魅力を感じません。
建物でもそうです。
古い建物の水回りや電気関係を改修し、現代人が普通に住めるようになっていると、とても魅力を感じます。
古い物と現代との調和。
そういうものに人は「時間の流れ」を感じ、心地良さを覚えるのではないでしょうかね。
どんなに綺麗に保存されていても、使われなければ、それは時間が止まっている事と等しいですから。
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