2011年10月18日

各社の発表会により、日本の携帯電話業界は、競争の軸が「端末」ではなく、「料金」と「通信品質」へシフトしていく事が鮮明になりました

本日、NTTドコモから、新しい携帯電話の発表がありました。

●NEXT/with/STYLE/タブレットにシリーズを一新:Xi対応スマホが登場、デュアルコアCPUやHD液晶搭載機も――ドコモ、2011年度冬春モデル25機種を発表 - ITmedia +D モバイル
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/1110/18/news060.html

●報道発表資料 : 2011−2012冬春モデルに24機種を開発 | お知らせ | NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2011/10/18_00.html

今回の大きな特徴は、端末を三種類に再編成したこと(タブレットを除く)。

スマートフォンを「withシリーズ」と「NEXTシリーズ」の二種類で展開。
昔ながらの形をしたフィーチャーフォン(俗に言うガラケー)を「STYLEシリーズ」の一種類で展開。

フィーチャーフォンは今まで、三種類に分けていましたが、それらを一つにまとめました。
iモードを中心に使っている人は、STYLEシリーズから選ぶことになります。

ここ最近、こういった携帯電話の端末発表会は、今ひとつ盛り上がりません。

今回のドコモの発表会も、各メディアの報道は「今回もiPhoneの発売は無し」の一言でまとめてしまっています。

【みんな、iPhone以外に関心が薄くなった】

日本において携帯電話端末は、iPhone以外に話題が無くなっている事が、「日経ビジネス」に書かれていました。

この前のソフトバンクモバイルの発表会でもそうです。
孫正義社長への取材が終わると、新製品の展示コーナーに出来ていた人だかりは、瞬く間に消えてしまいました。
各メディアの関心は、「auからもiPhoneが出るようだ。独占販売が崩れ、ソフトバンクは危機を感じているのか?」という事だけ。
発表されたばかりの新製品に対して、これっぽちも関心を示していません。

KDDI(au)の時も、iPhoneを発表するのかにだけ質問が集中。
この時にはノーコメントで貫きました。
そして後日、iPhone4S発売を正式発表しました。

もう、端末発表会が華々しい時代は終わったのです。

【発売される端末が激減】

2009年以降、ソフトバンクモバイルがiPhoneへ販売を集中させた結果、日本のメーカー製端末が少なくなりました。

2009年冬〜2010年春モデルの新製品は22機種。
7割以上が日本メーカーでした。

2010年冬〜2011年春モデルの新製品は21機種。
日本メーカーは5割未満に低下。
その分、中国・台湾・アメリカなどの海外メーカー製が増えました。

そして今回。
新製品は、たった12機種になりました。
シャープ以外のメーカーは、1機種ずつしか供給しません。
NTTドコモとの関係を強めている韓国・サムスン電子、KDDIの上位機種を手がける台湾・HTCは、今回のラインナップにありません。

ちなみに、KDDI(au)も、一年前に比べて半数以下に減らしています。

国内メーカーが供給しなくなったというより、提案をするものの、ソフトバンクモバイルから販売してもらえないというのが実情です。

ソフトバンクモバイルにも言い分はあります。
スマートフォンは、どれも見た目が変わりません。
ユーザーは端末よりも、それによって味わえる体験を重視するようになったと考えています。
だから、端末の数を多くする必要が無いと考えるのです。

端末の魅力が携帯電話会社の純増数に直結した時代は、iPhoneなどのスマートフォンの登場によって終わったのです。

今回、NTTドコモの製品は24種類ですから、他の通信キャリアに比べて強気です。
しかし、スマートフォンを中心に舵をとったのは同じ傾向です。

これでとうとう携帯電話は、「品揃えの均質化」の時代となりました。

これはどういう事を意味するかと言いますと、携帯電話会社の競争の軸が「端末」ではなく、「料金」と「通信品質」にシフトしていくことになります。

※※※

以下、三社の今後の方針を説明していきます。

実際、NTTドコモは他社に対抗する形として、通信料金を下げる方針を出しました。

●ドコモ、通信料金2割前後値下げへ アイフォーン陣営に対抗 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111018/biz11101801300001-n1.htm

NTTは、競合他社の事業活動を困難にさせるような、思い切った値下げは出来ません。
公正取引委員会と総務省から、「独占禁止法上又は電気通信事業法上問題となる行為」とみなされ、禁止されているからです。

言ってみれば、三社が横並びになるよう、NTTは調整弁になっているのです。

auからもiPhoneが出たり、割安な料金プランが発表されました。
NTTは「ドコモ、SB、auが横並びになった状態にする」為に、通信料を下げる方針を打ち出したと解釈するのが正しいでしょう。

別に、切羽詰って値下げした訳ではありません。
しかし、ユーザーにとっては恩恵があることですから、歓迎すべきでしょう。

KDDIは、ソフトバンクモバイルのホワイトプランのように、自社携帯電話間の無料通話プランを打ち出しました。
それが、「プランZシンプル」です。
(午後9時〜午前11時を除く)

KDDIは元々、電話が繋がりやすかったです。
アンテナ・基地局の多さにより、通話品質は良かった会社なのです。

ここに、iPhoneという強力な端末と「プランZシンプル」を打ち出すことで、ソフトバンクモバイルに対抗しようとしています。

一方のソフトバンクモバイルは、料金は安いけれど、アンテナの数が少なくて圏外になったりと、通話品質が低いと言われ続けました。

今年と来年の2年間で1兆円の設備投資を行い、通話品質の改善を打ち出す計画です。

これとは別に、経営破たんしたウィルコムから引き継いだ2.5ギガヘルツ帯を使った高速無線通信サービス「ソフトバンク4G」のサービスも開始します。

KDDIとは逆で、iPhoneと安い料金プランに加え、通話品質を強化しようというアプローチです。

NTTドコモは、新しい高速データ通信サービス「Xi(クロッシィ)」があります。
光回線のような高速通信が出来ます。
基本料金が割高だったり、実質、大都心でしか使えません。

今回、新しく魅力的な発表がありました。

●報道発表資料 : 音声通話に対応したXi向け料金プラン等を提供開始 | お知らせ | NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2011/10/18_01.html

ドコモ同士の通話が24時間無料。
更にテザリングが、追加料金無料というのは嬉しいですね。

現時点で最強のインフラですので、これで全国どこでも使用できるようになれば、iPhoneの無いNTTドコモにも称賛はあります。

以上から、携帯電話業界が熟成したきた事を感じました。
「ワクワク感」から、「日常生活に当たり前のインフラ」へ変化してきたのです。

Posted by kanzaki at 2011年10月18日 20:46