2011年10月21日

タイの大規模洪水に伴う日本企業への影響について〜ソニーやニコンのデジタルカメラ工場が操業を停止

本日の日本経済新聞は、タイの大規模洪水に伴う日本企業への影響について、多く書かれていました。

タイの洪水は、首都バンコクに広がっています。
死者は300人以上、930以上の工場が浸水しています。

東日本大震災から3日後、タイ政府は2億バーツ(約5.4億円)の支援予算を組み、食料や生活物資を大量に送ってくれました。

今度は、私たちが支援しなくては。
「微笑みの国」と云われるタイに、再び笑顔が戻ってくることを祈っています。

【ソニーの被害状況】

ソニーは洪水被害により、デジタルカメラ工場の操業を停止しました。
その結果、11月11日に予定していたデジタル一眼カメラ7製品の発売日を「未定」にすることにしました。

●Sony Japan | タイ洪水の影響による発売日延期のお知らせ
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201110/11-138/index.html

発売日未定になったのは、以下の製品です。

SLT-A65V(α65ボディ)
SLT-A65VK(α65ズームレンズキット)
SLT-A65VY(α65ダブルズームレンズキット)
NEX-7(NEX-7ボディ)
NEX-7K(NEX-7ズームレンズキット)
NEX-5NY(NEX-5Nダブルズームレンズキット)
NEX-C3Y(NEX-C3ダブルズームレンズキット


特に、ミラーレスカメラ(デジタル一眼カメラ)で最強を誇るスペックの「NEX-7」が発売日未定になったのは、カメラファンにとって大きな衝撃でした。

●NEX-7 | デジタル一眼カメラ“α”(アルファ)[Eマウント] | ソニー
http://www.sony.jp/ichigan/products/NEX-7/

・価格.com - SONY α NEX-7 ボディ [ブラック] 価格比較
http://kakaku.com/item/K0000281272/

NEX-7は、ミラーレスカメラで最も大きくて高性能なセンサーを積んでいたり、更に高性能な電子ビューファインダー(覗き窓)を搭載しています。
大人気のソニーNEXシリーズ最上位機種としての品格と高性能に、マニアが大注目していました。

中部アユタヤ県にあるデジカメ工場は、11日に操業停止。
この工場は現在も浸水しており、再開の目処が立っていません。

【ニコンの被害状況】

同じくカメラを製造、販売しているニコン。
現地、Nikon(Thailand)Co.,Ltd.(ニコンタイランド社)は水位が2mとなっており、立ち入り禁止となっています。

初心者〜中級者向けデジタル一眼レフカメラ「D3100」、「D5100」、「D7000」、「D300S」を製造しています(台数ベースでニコン全体の約92%)。
また、カメラに装着する交換レンズも約66%手がけています。
それらを生産できないのですから、ニコンにとっては大打撃です。
生産設備の新規調達、グループ全体での生産体制見直しなどを検討しています。

尚、新製品のミラーレスカメラ「Nikon 1 V1」「Nikon 1 J1」は中国製なので、問題なく販売がスタートしています。

●Nikon 1 J1 | ニコンイメージング
http://www.nikon-image.com/products/camera/acil/body/nikon1_j1/index.htm

●Nikon 1 V1 | ニコンイメージング
http://www.nikon-image.com/products/camera/acil/body/nikon1_v1/index.htm

他社のミラーレスカメラより圧倒的に高速なオートフォーカス、高速連射により、シャッターチャンスを逃しません。

工作機械大手のオークマ。
タイの企業へ納入した工作機械500台が水没したらしく、調査チームを派遣します。

タイの顧客企業500社のうち、自動車、家電など約50社で被害がありました。
その為、計500台の機械が水没したらしい。

復旧作業に向けて、電子部品やベアリングなどの部品発注を開始しました。
復旧要員を数十名規模で現地へ送り込む予定です。

同じく工作機械のツガミは、復旧需要に備え、日本国内や中国の工場で増産に入りました。
被害の全容がつかめていないのですが、供給が追いつかない可能性を考慮し、準備を急いでいます。

ファミリーマートは、浸水地域の拡大に伴い、一時閉鎖の店舗が増加しています。

タイ国内に約650店舗があるそうです。
そのうち35店が浸水で一時閉鎖しています。

洪水発生直後は閉鎖数が20店でしたが、浸水地域が広がっています。
また、道路の冠水により、物流にも遅れが見え始めています。

尚、今のところ、バンコク市内の店舗には被害がありません。

トヨタ自動車は、部品調達難を受け、10日からタイ国内にある3つの完成車工場の稼動を停止しています。

海抜が低いサムロン工場(サムットプラカーン県)とバンポー工場(チェチェンサオ県)にて、浸水地域拡大の対策として、従業員が土のうを積んでいます。

週明け以降の生産については、21日に対応を決めるそうです。
既に22日までの停止を決めていますが、操業再開は難しく、休止期間延長が濃厚です。

国内では低迷中の2輪車(バイク)市場ですが、海外では成長産業です。
特にホンダが絶好調。
巨大な2輪車市場のあるインドネシアは、増産に次ぐ増産。
もちろん、シェアもトップです。

売上高営業利益率は、自動車事業の約3倍。
世界で1500万台を販売する2輪事業が、ホンダの収益を支えています。

そんなホンダですが、バンコクにある2輪車工場の生産再開を延期。
11日に操業を休止し、19日に内製部品の製造再開。
21日から車体の組み立ても再開する予定でした。
しかし、洪水がバンコクに迫ってきたことから、従業員の安全確保を優先しました。

タイの洪水は、株式市場にも影響を及ぼしています。

パソコンなどに使われるハードディスク駆動装置は、この洪水で生産が大幅減となりました。
関連銘柄が軒並み急落となりました。
アップル社は、自社製品パソコンのMacで使用するハードディスクの供給がどうなるのか不安視しています。

私も愛用しているカメラメーカーのニコン。
デジタル一眼レフカメラの多くの部分をタイで生産しております。
工場が被災したことにより、株価の下落が止まりません。
洪水被害が明らかになってからの下落率は14%にも達しました。
10〜12月期の販売で、ライバルのキヤノンの優位性が高まっています。
キヤノンは基本的に、日本国内で生産をしているからです。

ニコンにしてもソニーにしても、海外のクリスマス商戦に、商品を売り出せないのは大きな痛手です。

ニコンは10月26日、デジタル一眼レフカメラの新型を発表するという噂がありました。
一般の人向けではなく、ハイアマチュア〜プロが使用する上位機種(現行機種D700の後継機種)です。
今回の水害で、新型発表およびキャンペーンは無期延期になったとネットでは噂が広まっています。

先日、キヤノンがプロ向けフルサイズ機「EOS-1D X」を発表したばかりです。
店頭予想価格は65万円前後。
オリンピックの時には、必ず、ニコンとキヤノンからプロ向け最新機種が発売されます。
ニコンもそろそろ発表しても良い頃なのですが、今回の水害でどういう影響が出てしまうのか不安ですよね。

●キヤノン、12コマ/秒・ISO204800のプロ向けフルサイズ機「EOS-1D X」 - デジカメWatch
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/20111018_484450.html

ニコンのデジタル一眼レフカメラとレンズの多くはタイで生産されています。
しかしプロ向けは、日本国内で生産されています。
東日本大震災で被災した仙台の工場などです。
10月26日に発表予定の機種は、今までの経緯からいけば日本国内製造ですので、影響は無いと思っていたのですけれどねえ。
使用されている部品等がタイ製なのかもしれません。

洪水から首都バンコク中心部を死守するため、タイ政府は、北部にたまっている水を首都東部などへ排出することを決めました。

現地工場が停止している日系企業のうち71.5%が21日時点で、再開について「見通しが立たない」事が明らかになっています。
企業の8割が、代替生産・調達を決めました。
各社は業績回復への影響回避を目指し、「サプライチェーン」の再構築を急いでいます。

「サプライチェーン」とは、自動車やテレビのように最終製品に必要な素材や部品の生産とその供給網のことです。
人件費や関税、部品調達の安さなどから、そのネットワークは国境を超えて複雑化・大規模化しています。
部品会社の中には、1社や数社で高いシェアを持つ企業もあります。
東日本大震災にて、このような企業が被災して、サプライチェーン全体が影響を受けるリスクが浮き彫りになりました。

タイの人々が、安心して生活できる日々が、一日も早く訪れて欲しいものです。

Posted by kanzaki at 2011年10月21日 23:12