2011年11月30日

「ふじのくに新東名マラソン」〜給水地点に水がなく、側溝にたまった雨水をランナーが飲むという異常事態発生

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日本のジョギング・ランニング人口は、推計800万人を超えたとの調査結果があります。
2010年の時点で883万人。
これは、東京マラソンがはじまる前(2006年)と比較して、278万人も増加しています。
私が参加するぐらいですから、全国的なブームなのでしょう。

●「スポーツライフに関する調査」笹川財団
http://www.ssf.or.jp/press/pdf/101029_press_release.pdf

東京マラソンの大成功を皮切りに、全国各地でマラソン大会が開催されるようになりました。

そんな中、最近話題になっているマラソン大会があります。

●ふじのくに新東名マラソン(2011年11月20日開催)
http://shintomei-marathon.com/index.html

話題と言っても良い意味ではありません。
あまりにもお粗末な運営に、参加者からブーイングが起きて、全国ニュースに迄なっています。

●給水地点に水がない! 静岡のマラソン、参加者脱水症状
http://www.asahi.com/sports/spo/TKY201111250334.html

・給水地点の水が尽き、参加ランナーの一部が最長で17キロにわたって水分補給ができなかったことがわかった。
脱水症状を訴えるランナーが相次いだ。

・富士市ではこの日、11月の観測史上最高の26.5度を記録。
21キロの折り返し地点以降、脱水症状や熱中症で倒れる人が相次ぎ、うち9人が救急搬送された。
側溝にたまった雨水を飲む人もいたという。

・スタート地点やコース上のトイレではトイレットペーパーがなくなり、参加者の一部は用が足せなかった。

・日本陸連は「水は約5キロ間隔で確実に供給しなければならず、ありえない運営ミス。
主催者から事情を聴き、厳重注意などの指導を検討する」という。

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このニュースの後日談が下記の記事です。

●脱水症状続出の新東名マラソン、静岡知事が陳謝
http://www.asahi.com/national/update/1128/TKY201111280604.html

・川勝平太知事は、「極めて重大な失敗。けがをされた方、不愉快な思いをされた方に心よりおわび申し上げたい」と陳謝。
担当者の処分も検討するとした。

・知事はさらに、「担当のスタッフの対応が傲慢(ごうまん)で、用意されたバスもスタッフ優先で乗っていた。聞けば驚くべき事実が明らかになり、楽しみにして参加された方に本当に申し訳なく思っている」と陳謝した。
再発防止に向けて何が問題だったかを調べ、1月1日発行の「県民だより」で報告するという。

今は、全国各地のマラソン大会に参加するのが簡単になりました。
「RUNNET(ランネット)」に登録しておけば、ネットで手軽にエントリー出来て、参加費もクレジット払いが可能です。
私も今年参加したマラソン大会は、全てここでエントリーしました。

●RUNNET(ランネット)
http://runnet.jp/

このサイトには、マラソン大会へ実際に出場された方々のレポートが掲載されています。
ちなみに、「ふじのくに新東名マラソン」の評価は35.7点というとても低い評価です。

●大会レポ − レポート&評価・東日本大震災復興支援 ふじのくに新東名マラソン(2011年)
http://runnet.jp/report/race.do?raceId=31779

まだ完成したばかりでクルマも走っていない新東名高速道路を自分の足で走れるという事で話題になっていました。
しかし、まだ利用前というのが仇になりました。
開催日は、11月としては異例の暑さで、用意していた水が早々に無くなってしまいました。
市街地で行われるマラソン大会ならば、道路脇の自動販売機やコンビニで買えば良いのですが、利用前の高速道路にそんなものはありません。

灼熱地獄の陸の孤島において、水分補給もさせてもらない、トイレにも行かせてもらえない、救援を求めたくても誰も助けに来てくれない中、延々と走らなければいけないのです。
一人、そしてまた一人と倒れていきました。

側溝にたまった雨水を飲んだ人や、トイレに行けなかった人は、とても侮辱された気分だったと思います。

市民ランナーが「楽しむため」に参加するマラソン大会で、命の危険にまでさらされました。
全国でマラソン大会が開催されているからと、安易な気持ちで運営側は思っていたのではないでしょうか。

前日の雨で、用意していたトイレ用の紙が駄目になった。
当日は猛暑で、水分補給をする人が多くて、供給不足になった。
そういった予想外の出来事は確かにありました。
しかし、このマラソン大会の評価が低かった理由は、運営側の傲慢さです。

●大会レポ − レポート&評価・東日本大震災復興支援 ふじのくに新東名マラソン(2011年)
http://runnet.jp/report/raceDetail.do?command=page&raceId=31779&userNumber=6060008&pageIndex=&sortIndex=0

・距離表示が5kmごとだったので、途中で役員に何km地点なのか聞いたところ、「何kmだと思う??(笑)」と茶化された。

・30kmの関門を設定時間より5分オーバーしてしまい、通過できず。
給水待ちの遅れを考慮してもらえないかお願いしたが、「私の権限ではわからない」と言うだけで、結局何もしてくれず。

・収容バスを30分待ちやっと2台来たが、役員&スタッフで満席。

●大会レポ − レポート&評価・東日本大震災復興支援 ふじのくに新東名マラソン(2011年)
http://runnet.jp/report/raceDetail.do?command=page&raceId=31779&userNumber=6829269&pageIndex=&sortIndex=0

・15キロ地点ではお水をもらえず、「この先でもらってください」。

・折り返し地点で何人もの方が「なぜ(水が)ない?」とつめよると、「ハイハイ、文句はゴールしてから言ってね」。耳を疑いました。

・スーツを着た係りの人がお茶を飲んでいたので、分けてもらえないか頼んだら、「そういうわけにはいかない」。

・なんとかゴールしても、参加賞であるはずの水が品切れで、「買ってください」。


これを読んで驚きました。
高校生のボランティアの皆さんたちは、こんな状況の中でも自分達が出来る事を一生懸命やっていたそうです。
そんな中、運営側の大人たちの態度には呆れました。

一人参加料8,500円、手数料200円、シャトルバス代1,000円、荷物預料500円。
通常のフルマラソン大会よりも物凄く高額です。
給水は水だけ(それすら不足)、参加賞はタオルのみ。
参加した人達に対し、ちゃんと運営費用の内訳を提示してもらいたいものです。

側溝にたまった雨水をランナーが飲むという異常事態が起きた大会。
原因究明と担当者の処分をきっちりと行い、うやむやで終わらせない事。
それが、全国各地のマラソン大会主催者達への戒めとなるはずです。

今、全国各地では町おこしの一環として、「B級グルメ」と「マラソン大会」は重要なキーワードになっています。

B級グルメの大会で、食中毒があったなんて聞いた事がありません。
食べ物を扱っているので、この一線は守らなければいけない。

マラソン大会にいたっては、己の肉体の限界に挑戦するイベントですから、「生命の危機」という死線を越えてはいけません。
参加する方も準備万端で望まなければいけないし、それをフォローする運営側のみなさんの協力も必要です。

こういった町おこしをどんどんやるのは良いと思います。
そういう心意気は大切です。
でも、守るべき一線というのは必要です。
新東名マラソンには、そういう事を考えさせられました。

※※※

【追記2011.12.14】

●マラソン 給水トラブル処分せず 知事、再度開催へ 静岡 (産経新聞) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111214-00000017-san-l22

先月20日に行われた「ふじのくに新東名マラソン」(県や静岡陸上競技協会などで構成する実行委員会主催)で、主催者側の不備で水分補給ができず、参加ランナーの一部が脱水症状などを訴えて病院に搬送された問題で、同実行委員会は13日、県に報告書を提出した。川勝平太知事が同日の定例会見で明らかにした。

川勝知事は当初、関係者を処分する方針を示していたが、「日本陸上競技連盟から、特段の指導、忠告は受けていない」として処分を行わないことを表明。今回の反省を踏まえて、再度マラソンを開催する方針を明らかにした。

・・・うーむ。関係者の処分無しですか。
一歩間違えれば命を奪われかねない事態だったのですがねえ。

Posted by kanzaki at 2011年11月30日 21:45