iPhoneやiPadなどのヒット作を送り出したスティーブ・ジョブズ。
生前、彼は市場調査というものを信じませんでした(NIKKEIプラス1より)。
市場調査を信じなかった理由は、こうです。
「人は形にして見せてもらうまで自分が何を欲しいのか分からないものだ」
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【消費者の意見は商品化しにくい】
日本は一時期、消費者から幅広くアイディアを募集し、商品開発する試みが広がりました。
その多くが、失敗(不採用)に終わっています。
理由は、消費者には専門知識が無いからです。
彼らの出す多くのアイディアは、既に市場に出回っています。
市場に出ていないアイディアがあったとしても、「空飛ぶ自動車」のような実現不可能な案ばかりでした。
集まった意見をもとに味や香りを一新したドリンクなど、ようやく商品化しても、大半は短期間で店頭から消えます。
コンビニの陳列棚を見れば、それは頷けますよね。
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【ガラケーの敗北】
日本の携帯電話。
アップルのiPhoneとは別の進化を遂げてきました。
俗に言う「ガラケー」ですね。
海外へ展開出来ない、閉鎖された進化です。
●「ガラケー」とは:
「ガラパゴス・ケータイ」の略。
世界の携帯,IT事情を知ってか知らずか、日本独自の進化を遂げた日本製の携帯電話のこと。
他の島との接触が無かったために独自の進化を遂げたガラパゴス諸島の生物となぞらえ、自嘲的な意味を込めて日本の携帯は「ガラケー」と呼ばれる。
円高が進んだ1980年代から1990年代。
企業は国内で、携帯電話に限らず、製品の付加価値を高めることに力を注ぎました。
その結果、普通の人が使いこなせないほど高機能な製品ばかりでした。
だから結局、装備されていても、その付加価値を殆ど使いません。
根幹となる部分について新規でアイディアを出せなければ、付加価値に目を向けるのは常套手段です。
携帯電話ですと、ワンセグとか、オサイフケータイとかです。
それはそれで便利ではありますが、そこにiPhoneが登場。
スマートフォンという新しい提案です。
消費者は、ワンセグもオサイフも装備していないiPhoneを選びました。
iPhoneに備わっている技術、概念は昔からあるものです。
「これを使うと、日常がハッピーになれるよ。どうやって使えば良いか教えるね」という部分が画期的でした。
ガラケーに付きものだった分厚い取扱説明書を無くし、端末を直感的に操作できるようにしました。
App storeという、ネット上にアプリをダウンロードできるお店を作りました。
また以前から、音楽をネット上でダウンロードできるiTines storeもありますよね。
手のひらの中で、日常生活がハッピーなれるコンテンツを展開したのです。
これは、消費者の意見を聞いたというより、提案をした形です。
※
【消費者を育てるような商品展開】
ユーザーが求めるものを提供するのではなく、むしろ供給側がユーザーに色々な提案をして、ユーザーを育てるという方が市場拡大には良いのかもしれませんね。
日本の携帯電話業界でも、そういうものはありました。
NTTドコモの「iモード」です。
大昔、携帯電話は、音声による通話しか出来ませんでした。
そんな時、メールの送受信や、簡易的なホームページを閲覧できるサービス「iモード」が登場したのです。
まだ、携帯電話は今みたいに高機能ではなかったし、高速通信網も無かった時代。
iモードは、その時代に最適だったと思います。
仮にあの当時、いきなりスマートフォンと高速通信網があったとしても、ユーザーのスキルがまだ未熟でしたから、使いこなせなかったでしょう。
そもそも、それを使って生活をハッピーに出来る提案者がいません。
iモードは、我々に「モバイル」というものの基礎を教えてくれた画期的な「教科書」だったと思います。
あれがあったから、普通の生活にモバイルというものが溶け込んだ社会が出来たのです。
ちなみに私自身、モバイルというものを体験したのは、iモードより先に登場した「10円メール」です。
●10円メール - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/10%E5%86%86%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%AB
音声通話しか出来なかった携帯電話に、上記の「ポケットボード」という安価な端末をつなぎ、メールの送受信をしていました。
会社でもまだ、インターネットが出来る環境は無かったですし、勿論メールの送受信も出来ませんでした。
でも、他社との連絡のやりとりなどは、メールで行った方が便利だったので、自腹で使っていました(大してお金も掛かっていませんでしたし)。
昔から、タッチパネルを使った情報端末として「PDA」というジャンルがありました。
昔からの神ナナ読者ならご存知のとおり、私はソニーの「クリエ」をメインに使っていました。
今で言う、「iPod touch」みたいなものです。
●「クリエ」TH PEG-TH55・TH55DK / CLIE<クリエ>
http://www.sony.jp/products/Consumer/PEG/PEG-TH55/
スケジュール管理もできるし、動画・音楽も再生できるし、カメラやボイスレコーダーにもなり、wifi環境でインターネットも出来る。
当然、パソコンとも連携可能。
あの当時のスケジュールデータやメモは今でも引き継いでおり、アウトルック経由でiPhoneに入っています。
便利ではありましたが、まだマニアックな領域でした。
こんなに高機能な端末なのに、残念ながらソニーは消費者に、「これを使うと、日常生活がハッピーになれるよ」という提案は出来なかったのです。
だから、このジャンルは消えてしまいました。
しかしiPhoneの登場により、そのエッセンスは普通の人達にも使ってもらえるようになりました。
ファミコンのゲーム「ドラゴンクエスト1」は、日本でRPGという概念を知る教科書的なものでした。
当時、私のようなマニアはテーブルトークRPGをやったり、パソコンでRPGを体験していました。
しかし、敷居が高く、とても一般向けじゃない。
ドラクエ1は、一人で戦うし、マップもアイテム、ストーリーも最小限。
それ故、RPGを体験するにはちょうど良かったのです。
ドラクエでRPGの楽しさを知った人は多かったでしょう。
その後、シリーズが進むにつれ、パーティー制、ジョブチェンジなどの要素を加えていくことで、我々ユーザーは複雑なシステムを使いこなせるようになりました。
※
【iモード立上者・夏野 剛さん】
ソフトバンクの孫正義社長が、「いわゆるiモードというのはインターネットじゃないんですよ」 という発言をしました。
iモードを立ち上げたメンバーの夏野剛さんは、それに反論しました。
「そこまで言うのだったら一度真剣に議論してもらいたいです。あくまでニュートラルに」 と。
これは夏野さんの方が正論でしょう。
あの当時、iモードが「ちょうど良かった」のです。
●夏野剛 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%8F%E9%87%8E%E5%89%9B
夏野 剛(なつの たけし、1965年3月17日 - )は、日本の実業家。
元NTTドコモの執行役員・マルチメディアサービス部長で、松永真理らと共にiモードを立ち上げたメンバーの一人として知られる。現在はドワンゴなど、数社の取締役。慶應義塾大学政策・メディア研究科 特別招聘教授。
そんな夏野さんのインタビュー記事がありました。
タイトルは「会議は5分で結論を出す」です。
何か判断を求められた時、5分で答えを出すと決めているそうです。
それで浮かばなければ、情報量が足りないか、見識が無いかです。
その時は決断をしません。
会議でも同じ。
5分から10分で結論を導きます。
1時間の会議ですと、結論の出た後の残り50分は雑談だそうです。
家族の事など、他愛ない話しです。
このとりとめの無い会話からアイディアがいっぱい生まれてくるからです。
会話の中に手てきた内容から、「だったらこれがいいんじゃない?」「じゃあ、こうしよう」と思いつくものです。
会議は聞くものではなく、互いに意見をするもの。
意見には、その人の経験や知識が詰まっており、貴重なものです。
消費者に意見を聞くより、自分達プロが日常で思った事を言い合い、それを煮詰めていくほうが良いのかもしれません。
専門知識もあり、それを商品化できる環境にあり、消費者へ提案も出来ます。
来年、消費者をハッピーにさせてくれる提案型の商品が出てくるのか楽しみですね。
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